ハンスマーケット2
騒ぎのする店の方に足を運んだ私は、人混みの隙間から様子をうかがう。
店を囲むようにしている人々の声に耳を傾けると、二人の値下げ屋の男が店にある品物の評価を下げているようだ。
その男達の雰囲気がどうもきな臭い、こういうのは見てて息が詰まる。
値下げ屋という人々の立場がどういうものか詳しくは知らないけれど、この商売の世界では彼らに目をつけられるとなかなかに厄介なのだとか。
一部の商人を除いて、特に流れ者の商人は品物を売るのに国からの鑑定と正式な申請などわざわざすることはない、だが本来ならば時間がかかるその申請をしなければならないのだ。
このことに関しては別段なにかを問われるわけでもなく、多くの商人は現状店を設けて商売をしていたりする。
よって曖昧なこの件には敏腕な商人でもあまり文句は言えず、結局はお客さまの“目”に委ねる場合が多い。
「こんにちはモーリスさん。モーリスさんですよね? 神父のお孫さんの」
「は、はい。そうですアミュレットさん。こんにちは」
「あははは。私の方が年下だし、商売人としての経歴も短いですし、アミュレットでいいですよ」
値下げ屋と周りにいた商人達が去ったあとで、私は値下げの被害にあった店の人に声をかけた。
彼は顔見知りで神父の孫でありながら、商人という仕事に魅了されたちょっと気弱な性格のモーリスさん。まぁ家庭の事情とかまでは知らないけれど、彼は今商人として奮闘中らしい。
「ちょっと見せてください」
「はい構いませんよ。と言ってもそれは今から値下げすることになった品物ですが……」
交渉力とかはまだ未熟な方だけれど、時間をかけてしっかり見させてもらうわ。