ハンスマーケット1
【フェリス通り中央広場】
この街に住む人達に比べれば私も十分田舎者だ。
この街が都会なのは耕作面積の広さでわかる。慣れない環境でも、そういうところは見てたりするのだ。……実に狭い。
さて今日の私は広場の片隅にある木の下で敷物を広げ、その上に複数のアイテムを並べて道行く冒険者や行商人などを相手に商売である。
ちなみにまだなにも売れていない。
他にもたくさんの商人が路上で商売をしていて、そっちの方が繁盛している。
【ハンスマーケット】
なんでもハンス公という偉い人が立ち上げた一ヶ月に一度の商人達の集いの場で、商売や情報の交換により親交を深めることによって街のさらなる発展が目的。私はあまり貢献できていないなぁ。
市場に出回らない食料品や骨董品などが見れて楽しいのだけど。しかしハンスマーケットって、自分の名前を付けちゃうところがなんとも言えないわね。ちなみに今回でマーケットを開くのはちょうど百回目らしい。
「ふぅ……」
トボトボと歩く野良犬を脇目に、私は読書をしながら手作りの黒糖パイ包みを頬張った。
以前、幽霊図書館にいた影響で本が好きになり、趣味で集めた本が本棚を埋めつくし、今では自室の床にも積んで置いてある始末。もちろん自分用のため非売品である。他にもアイテムやら骨董品やら散らかしちゃってるなぁ、帰ったら少し部屋片付けようかしら。
『ガヤガヤ……』
「ん?」
どこかの店かわからないけど、やけに騒がしいわね。事件?