一日目2
ジャビスウォーレンのオークションでは。
聖金貨、金貨、聖銀貨の三種類しか硬貨を使わない。
聖金貨がもっとも高い硬貨で、一枚で金貨十枚の価値がある。聖銀貨は二枚で金貨一枚の価値。国によっては多少異なるが、大体の基準は同じ。
競りで参加者が金貨二枚と聖銀貨一枚を宣言する場合は【二の一】と唱える。これに聖金貨を一枚加えると金貨の単位の前に【部】を加え【一部二の一】と唱え、聖銀貨のみの場合は【半一】と唱える必要がある。
自分の参加番号の札を挙げて値段を告げた場合、取り下げは不可能なので注意されたし。
◇
「二部八の一!」
『…………他にいませんね。では、【エクレアーノ王女の恋文】十三番落札です』
午後の部になり会場の熱気は絶えず、参加者の眼差しが一段と鋭くなった。
私が今までで欲しいと思った品は四つ。
様々な儀式に使われるソラベ族の埋葬具。箱も無傷。
レハラ姫の短剣。鑑定書付き。
ダラン国の正当な国王カシアン王のシンボル、アガ神仰の装飾品。
フライボーンバレッツの牙。魔界に住むドラゴン達の次にレアなドラゴンの牙だ。魔界……ん? どこかで卵を見た気がする? どこだっけ?
まぁどれもすぐに値がつり上がって手が出せなかったけど。
「お嬢様。先ほどの品の一つに競売人の方が言っていた“青リンゴではない”という意味はなんですか?」
「あぁ……製作者の弟子による贋作のことよ。専門用語で青リンゴって言うの」
「なるほど」
曲がりなりにも商人。私でも何とか知っていることだったわ。よかった。
『続いての品は……』
「……お嬢様」
「ん? あの年季の入ったパイプ競り落とすの?」
「いえ、そろそろ“確認”と“手配”の状況を見に行って参ります。少し席を外しますがよろしいでしょうか?」
「そっか、うん。お願いね。こっちは任せて」
「では……」
ソフィアは私が昨日お願いしたことを確認しに向かう。
頼んだわよソフィア。よし、私も怪しい者探し再開ね。