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精霊の森4


「軟弱者め、なっとらんの」


 再び森を歩く私に彼女は容赦のない言葉を浴びせる。確かに足取りは重いけど、自分は飛んでるくせに。

 ……いや、羽を動かして飛ぶのも案外疲れるものなのかもしれない。

 しかし、まだかなり歩きそうだぞ。やっぱりお言葉に甘えて温泉に入っとくべきだったかな。


「ったく、ナギルも妖精使いが荒いのじゃ」

「あなたを信頼しているからだと思うけど。そういえば改めて自己紹介しない? 私はアミュレットよ。商人をしているの」

「リコットじゃ」

「よろしくねリコット。あなたはアレかしら? ほら、ピクシーだったっけ?」


『ポカッ!』

「ーーいたッ!」


 突然リコットは血相を変えて私の頭を叩いた。


「うつけ者! あのような野蛮で悪戯いたずら好きな奴らと一緒にするでないわ。フェアリーでよい。美しいな!」


 同じ妖精でも色々と事情があるようで……。


「……すみませんでした」



 広い場所にて足を止める、そこで私は目を奪われた。

 美しさ、気高さ、恐ろしさが一遍に詰まった場所だ。


「ここには元々集落があったのじゃ」


 リコットは少し寂しそうな表情を浮かべながらそう呟いた。

 彼女が言うにはその昔、人やエルフがこの森で一緒に住んでいたらしい。

 今は誰もいない“戦場跡”になっている。

 荒れ果てた広場に散らばるガレキ、無造作に落ちている弓や盾、ほとんど原型を留めていない旅籠はたご

 ここで何があったのかはあえて聞かない。

 私は大きな古い石碑を発見した。ほとんど読み取れないけれど石には文字が刻まれている。


「エーキューソ……ウル? どういう意味かしら?」

「遥か昔の遺物じゃ、意味は知らん」


 そなえるように置かれたティアラ、個性的な銅像、色鮮やかな結晶。

 どうやらこの森そのものが聖域のようだ。

 自然に任せ、そのままに、手を加えず、そんな森をナギル達は見守り続けているのだろう。



 想像以上に長い道のりだったが、なんとか日が暮れる前に森を抜けることができた。


重畳ちょうじょうじゃアミュレットよ。わらわはお主のことが気に入ったぞ」

「なんのこと?」

「この森に対してのお主の姿勢、優しさの話じゃ」

「う~ん? ……私なにもしてないと思うのだけれど」

「あまり気にするでない」


 そう言うと彼女は手を差し伸べる。

 私はその小さな手に小指で握手を交わし、リコットと別れた。

 もちろん再び会おうと約束を交わして。

一言メモ【最近リコットのやつ機嫌がいいな。森の外に興味でも持ったのかねぇ】ナギル

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