日常1
この世界の通貨に関しては自由に解釈してくださると幸いです。
【大都市フローディア】
【フェリス通り・別名 商人通り】
【店名 シメフクロウ】
『ガチャ』
「ただいまぁ」
タリスマンの家を出てから約一年。とても古く狭い店ではあるけれど、商人としてお店を出すことができました。
権力や名声を求めずに純粋に、と言えば少し嘘になるけれど。そりゃ……そりゃね、少しはいい評判は欲しいものだわ。
これから新人として精進し、いずれは伝説の女商人フェノクロスのような大商人になってみせる。そう思ってはいるのだけれど、ねぇ。
「おかえりアミュレット。お客さんなんだけどさ」
「来てないわよね、鳴いてないものね猫。店番ありがとうクロエ」
店番を頼んだエルフ族の少女クロエは数少ない私の友達で、エルフの里を離れてこの街の技術屋として修行中の見習い。
商人は各々がアイテムや武具を専門に扱ったり、私のように手広く好みや気まぐれで色々と売ったり買ったりする者もいる。
技術屋は鍜治や町にある建造物の修理などを専門にし、言わばなんでも屋のような仕事。私も興味があり、クロエから教わり勉強させてもらったりしているの。
猫とはエダーキャットと呼ばれる特殊な種類の猫で、見た目は普通の猫と変わらないけれど、とても賢くてエダーキャット同士で念話をする能力を持つ。ウチでは飼っているわけではないのだけれど、たまに店にやってくる数匹を連絡係にその能力を借りて、お店にお客さんが来ればクロエから私に報せが来るようにしていたのだ。
「思っていたより遅かったね、寄り道?」
「えぇ、甘唐辛子が安く売っていたから高騰する前に買っておいたのよ。いい買い物が出来た、やっぱりこの街に住んだのは正解だったわ」