うちのクラスはどこかおかしい【お試し版】
「今日は転校生を紹介する」
昨日40歳になり、すでに頭が寂しくなって来ているこのクラスの担任がそう告げる。この時期の転校生は彼らにとって珍しいことのようで、皆一様にざわめいている。
「えー?転校生?」
「男か女かどっちだろ!楽しみ!」
「それよりも先生少しハゲてきてね?」
「おい、今俺のことハゲと言ったやつは後で職員室にこい」
「すみません、先生。しっかりとビブラートに包むべきでしたね」
「音に包んでどうする。ていうか言うな、気にしてるんだぞ」
そのような問答を生徒と教師の間でしていると、ドアの外から少し不安そうな声が聞こえてくる。
「あのー…もう入ってもいいですか?」
「あぁ、すまんな、コイツラに気を取られていた。それじゃあ入って来てくれ。」
その転校生はドアを開いて黒板の前に案内される。入ってきた彼は中肉中背でどこにでもいそうな容姿をしていた。
「よし、じゃあまず自己紹介をしてくれ」
「自分は佐藤太郎といいます。親の仕事の関係でこちらに転校してきました。これからよろしくお願いします」
そうして太郎はペコリとお辞儀をした。
「佐藤、このクラスは変なやつが少しばかりおおいが悪いやつはいない。みんなも佐藤と仲良くしてやれよー」
「「「はーい」」」
「席は後ろの席の空いてるところに座ってくれ」
そう言われて太郎は指定されたとおりの席に座った。
「今日のホームルームはなしにするから、授業まで佐藤に色々教えてやれー?」
そう言うと彼は教室を出ていった。
(このクラスで上手くやれるかな?)
太郎はそう思い、少し不安気な表情を浮かべた。やはり転校した後はまだ友達がいないので誰しも不安になるだろう。
その気持ちを察してか、となりの席に座っている男子生徒が彼に声をかける。
「僕の名前は不和定春。これからよろしくね」
「よろしくな」
不和はとても快活な笑顔で太郎にそう話かける。とても人か良さそうだ。彼は早速太郎に対してはなしかける。
「確か、ボルケイノ吉沢くんは親の仕事の関係で転校して「ボルケイノ吉沢って誰だよ」」
「あ、ごめん。もしかして名前間違えちゃった?」
「一文字もかすってねえよ!」
彼はさっきの自己紹介をじっくりと思い出す。
「!!思い出した!ミートボーラー吉野園くんだ!」
「ちげぇよ!なんでさっきのことを思い出せねえんだよ!そもそもミートボーラーって何だよ!」
「それじゃあこれからポピーって呼んでもいいかな?佐藤=ポピーシード=太郎くん」
「どこからポピーが来た。ていうか変なミドルネームつけるな」
「あっはっは!面白いね、転校生くん!」
太郎の前の席から豪快な笑い声が聞こえる。
「はぁ、疲れた…初日からこれって…」
「ははっ、災難だったね。だけど良いツッコミだったよ!ポピーくん!」
「ポピー言うな」
彼は心底楽しそうに話す。
「…このクラスはコイツみたいのいて大変じゃないか?」
「ひどいよ、ポピー!」
「ポピー言うな」
「そんなこと無いよ?委員長やってるけどここは楽しいクラスさ!変なやつおおいけどね!」
「まだまだいるのか?やべえなこのクラス」
「大丈夫だよ!悪いやつはいないからね!」
彼は大袈裟な身振りをしてそう言うと、ふと思い出したかのように言う。
「あ、名前言ってなかったね!俺の名前は丸田真一!趣味は読書と露出さ!」
「あ、もしかしてやべえやつ追加?」
「転校生のポピーくんにも開放する事の楽しさを教えてあげるよ!さあ、あの青空へ向かって羽ばたこう!!」
「「「いってらっしゃーい(by巻き込まれたくなくて傍観してたクラスメイト)」」」
そう言うと彼はポピーを引きづって外に出ようとする。
「何なんだ、このクラス!ていうか俺はポピーじゃねぇぇぇぇ!」
彼の受難はまだ始まったばかりである。
設定
佐藤太郎
本作の主人公。ツッコミ役。この後裸にさせられた。
不和定春
名前を覚えるのが苦手。時々設定が不安定になる。
丸田真一
このクラスの委員長。露出狂。青空の下での開放感が癖になる。
悪魔王 アキム=ヒルデブラド
魔界の王。その膨大な魔力から放たれる極大殲滅魔法は国を瞬時にチリにするほどの威力を誇る。メンタルがとても弱い。恥ずかしくて本編には出て来れない。