青の騎士団⑤
久しぶりの更新ですが、前回の流れをひきずっています。
《レイ視点》
「はぁ、手を繋いだだけ?」
フィルの呆れたような声が副団長室に響く。
リンから預かったフィルへの土産を渡すと、根掘り葉掘り聞かれるままに今日のことを話してしまった。
一人でリンを街に行かせなくてよかった、と思ったのは歩き始めてすぐのことだ。こちらではめずらしい黒髪に、丸い黒い瞳が愛らしいリンはすぐに人目を引いたからだ。
リンに気づかれないように男達の視線を牽制しつつも、店の商品に目を輝かせてくるくる表情を変える姿を見るのは楽しかった。何でも買ってやりたかったがまだその立場ではない。だから自分の稼いだ金で買うことを喜ぶリンを見守るしかなかったが。
手を繋いだのは咄嗟の判断だった。危なっかしいのを心配したのもある。しかしその小さく柔らかな手に、守りたい、愛しいという気持ちがこれまで以上に沸き上がったのだ。自分にこんな感情があったとは知らなかった。
「しかも、食堂の夕食前には部屋に送り届けるってありえなくない?せっかく二人きりだったんだから夕食も外で食べればよかったのにね」
そうするつもりだったが広い王都をあちこち歩き回ったせいか、リンが思った以上に疲れてしまったのだ。
しかし……フィルに話さなかったこともある。
別れ際に「今日のお礼です」と渡されたのは細い紐のついた黒色の石。
「これ、最近王都で流行っている『お守り』らしいんです。この色には全てを包む強さっていう意味があるそうです」
そう言ってもう一つ取り出したその色は碧色の石だった。
「これは癒しとか安全とかの意味だそうです。レイさんの瞳の色みたいですよね」
そう言って少し恥ずかしそうに頬を染めると
「深い意味はなくてですねーーーえっとレイさんとお出かけできて楽しかったのでお揃いの物を持って今日の記念にしたいなっていうかーーー」
急にしどろもどろになったリンが可愛くて、そして自分の色を相手に渡すことが特別なものに思えてーーそこまで考えていないだろうけれどーー思わずリンを抱き締めた。
「えっ?!あのっ!レイさん?」
俺の腕の中で戸惑うリンの耳に唇を寄せる。
「ありがとう、リン」
そしてそのなめらかな頬にそっと口づけた。
腕を緩めると、真っ赤な顔をして頬を押さえるリンの姿があった。
「おっっ、おやすみなさい」
そう告げると驚くほどの早さで自室のドアを開けてその向こうに消えた。
左胸に入れた『お守り』に服の上からそっと触れると、不思議とあたたかな気持ちになる。
「レイ~なんか顔がにやけてるよ」
他に何かあったでしょ?そう言って俺の顔を覗き込むフィルに「何にもない」と顔を引き締めて仕事を再開した。
《青の騎士団員たち》
「大変だ~!!!」
「どうした?魔物か?」
「違う。副団長だ」
「「「「「なに?!」」」」」
「俺、今日非番だったから街にでてたんだけどな、副団長とリンが二人でカフェから出てくるのを見たんだ」
「「「「「おおー」」」」」
「しかも何と手を繋いでたんだぞ」
「「「「「!!!」」」」」
「あれ?でももう夕方過ぎには副団長室にいたよな」
「リンも食堂で夕飯食べてたぞ」
「でも何か挙動不審だったな」
「フォークでスープをすくおうとしたりな」
「何かあったのかなかったのか……」
「「「「「うーん」」」」」
見守る隊の活動は続く。