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街の中にはいるけれど

 気がつくと、森の中や広い野原に一人きりということはなかった。

 地面には石畳が敷き詰められ目の前には噴水がある、広場のような場所にあるベンチに座っていた。

 自然の中に放り出されても生きていける気がしないからその点ではよかったけど、ここはどこ?私は誰?を体験するとは思わなかったよ。私は誰?はないけれど。

 

 私は田中鈴子。34歳。日本人。独身。会社員。

 

 のはずだけど、これってあの神様の趣味だよねーっていう生まれて一度も自分が着ようと思ったこともないピンクのフリフリのワンピースを着ている。

 年齢的にはアウトな服だけど、自分の手をみると肌の張りと艶が違う。そういえば神様がちょっとだけ若返らせてくれるって言ってたような。

 

 それにしても有無を言わさずの異世界行き。神様って人の話を聞かないのかしら。自分が死んだショックもわかないうちに別のショックを与えられたみたいだ。

 まあ来ちゃったものはどうしようもないけど。


 

 こんなとりとめもないことを考えてるのは現実逃避じゃないよ。

 とりあえずもう少し現状を把握しなければ。

 

 

 ここは広場のようになっていて、私が座っているのと同じ石のベンチがいくつか置いてある。


 目の前には噴水。


 さらにその奥には強固な建物です!て感じの立派な建物がある。そこの門の横には門番らしき人が二人立っていて、出入りする人をチェックしているようだ。

 お城とかではなくお役所とかそういう類いのものなのかな?


 その建物の敷地の左右には3メートルぐらいありそうな石の壁がずっと広がっている。ここがこの街の端だとしたら、これはこの街を囲む壁なのだろうか。

 こんな壁があるんだから、日本と違って危険なこともある世界なのかもしれない。

 

 そして私の後ろには家や商店のような建物がずっと奥まで広がっているみたいだ。

 まだここから一歩も動いてないから見える範囲で考えるとだけど。

 ちょっと中世の外国的な感じだよね。人の顔も日本人的な人はいないし。

 

 人の往来は結構あってこちらを見る人の視線も感じるんだけど、私の半径3メートル以内には誰も近寄ってくれないし、私も話しかける勇気もスキルもない。 

 人の声や荷馬車(!)の行き交う音は聞こえるけど、それが明確な言葉として頭に入ってこない。自分が思っている以上に緊張しているのかな。

 

 

 お金も持たされてなさそうだし、ここがどんな国かもわからないし、神様、もう少し説明が欲しかったです。

 

 

 だんだんと陽が傾き始め、人の往来も減ってきた。

 今日どうするかの当てもないが、気候的にも寒くないし、なんだかこの場所は安全そうだからここで野宿でもいい気がしてきた。気を張り続けたから疲れて、考えることを放棄したとも言うけど。

 

 ふと噴水の向こうの建物に目を向けると、門のところには相変わらず門番の人が立っている。なんだかそれ以外にも人が増えてるみたいだけど、何かあるのかな?

 何とはなしに更に上を見上げると、一番上の階にある窓から誰かがこちらを見ているような気がした。

 私は怪しいものじゃないですよ……っと少し愛想笑いを浮かべながら思ったのを最後に、なぜだか急速に意識が遠退いていく。

 

 

 

 完全に意識が途切れる直前、とても温かい何かに包まれた気がした。

 

 

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