私の居場所
誤字報告、ありがとうございました。
フィルさんに連れていかれたのは団長室だった。
そこにいたのは団長さん、マークさん、レイさん、そしてデニスさん。
「まずは今回のリンの協力に感謝する」
そう言って頭を下げた団長さんに続いて、他の皆さんも頭を下げる。
「い、いえ、お役に立ててよかったです」
ひええーお偉いさん達にそんなことされてどうすればいいの、とアワアワしてしまう。
すると、そんな私を見た団長さんはニヤリと笑って
「いや、本当にすごかったな。あんなデカいのが出るとは思わなかったが」
「わしも長年生きてるが、お目にかかったことがないほどの魔法じゃった」
「ここからも強い魔力を感じるばかりか、大きな光がよく見えてましたからね。皆に説明するのに苦労しましたよ」
「でももう少し加減を覚えないと。それで自分が危なくなったら元も子もないからね」
褒められてる?叱られてる?またもやアワアワした私の頭を隣に座るレイさんがなだめるように優しく撫でてくれた。あら、これは嬉しいような恥ずかしいような。
「だがな、リン」
団長さんが真剣な口調で話し始めた途端、先程までの空気が消えて他の皆さんの顔も引き締まった。
「あれで城から問い合わせが来てる。魔術団だけじゃなく治癒術団からもな。あの『光』魔法はなんだ、と」
「リン、あらためて聞きます。あれだけの『光』魔法を使えるなら、以前話したよりももっとあなたに有利な待遇で城に迎えられるでしょう。それも踏まえて考えて欲しいのですが、あなたはどうしたいですか」
マークさんに聞かれてふと思った。
あれ?もしかして私がここにいることは迷惑になる?
よく覚えてないけど、どうやらとんでもないこと仕出かしたみたいな感じだよね、これ。
出ていった方がいい?
お城には行きたくないな。
魔法と言語スキルで自立した生活を目指す?でも街にすらまだ行ったことないからやっていけるか不安だよ。
ああ、でもそうなったらお尋ね者的になっちゃうから、王都から離れた場所に行かないとね。
もっと外のこと聞いておけばよかったな。
せっかくここでの生活も慣れてきたし、仲良くなったのに。
ひとりぼっちになるのは寂しいーーーー
「リン」
低く澄んだ声が、優しく私の名を呼んだ。その声に目を上げると碧の瞳がまっすぐ私を見つめている。
「ここにいろ」
そしてそっと私を抱き寄せると
「どこにも行くな」
そう言って強く抱き締めた。
「えーと、おふたりさん、ていうかレイ。自重しなくてもいいけど時と場所を選んでやりなよ」
フィルさんの声に時と場所を自覚する。腕がゆるんだ隙に慌ててその中から抜け出した。
何だかドキドキしたぞ。何これ何これ。あれ?何考えてたっけ?
「ーーー効果はあったみたいだけどね。また的はずれなこと考えてたみたいだからちょうどよかったよ」
的はずれ?
「すみません。伝え方が悪かったですね。私たちはリンを追い出したいわけではありません。ただ、そういう選択肢もあるということです」
マークさんに謝られたけど、それなら私の答えはひとつだ。
「ここにいたいです」
私を見守る5人にそう言うと、皆さんは優しくうなずいてくれた。
「よし、だったら今後の対策のために今回のことを詳しく話してくれ」
そこからは事情聴取が行われた。主には何故どうやって『聖なる水』を作ったのか、だ。これにはデニスさんが異常に興味を示した。
「しかし、これはリンの魔力量があってこそじゃな」
「普通の人は『光』属性を持っていてもできないでしょう」
「でも『水』と合わせるという考えなら人数さえいれば出来るかもしれんのう」
「まあ、思い付きだけでできるリンが普通じゃないのは確かだよね」
「できるかできないかは別だが、今回の魔法に関しての情報は魔術団と治癒術団には提供しておこう。協力すれば出来るかもしれん」
貸しを作っておけるしな、と団長さんが少し悪い笑みを浮かべる。おぉ、どこかの親分さんみたいですよ。
「後は、リンが青の騎士団所属だということをはっきりさせるだけだが……レイ、いいんだな」
そう言って何故かレイさんに確認する団長さん。その問いにレイさんははっきりとうなずく。
「はい。それでリンがここにいられるなら」
「よし、それなら準備が整い次第動くことになる。その時はレイとフィルで行ってくれ」
「「はい」」
そんな謎の言葉を最後に今回のミーティング(?)は終わったのだった。