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青の騎士団④

《フィル視点》

 

「レイ、リンがのびちゃってるよ」

 レイの肩をポンッと叩くと、ようやくリンの様子に気づいたらしい。慌てて腕をゆるめる。目を固く閉じたリンは、目覚める様子はなくて……これは熟睡しているだけかな。

 あんなに広範囲に渡る強い光魔法は見たことがない。魔物の闇を浄化し、人間のからだを癒す。それをこの小さな女の子がやってのけたのだ。

 魔力だけでなく、体力もかなり消耗したのだろう。実際あの光魔法を使う前は怯え震えていたのだから、あれは力の加減ができなくての結果だろうな。

 

 正直リン自体が謎だ。出自もわからずその能力も底が知れない。本人にもわからないことが他人に分かるはずもなく、それでもリンの様子を見て嘘も害もないと判断し、騎士団で保護することにしたのだけれど。

「さすがにあれ(聖なる水)は、宮廷魔術師達も気づいただろうね。今頃大騒ぎしてるかもしれないね」

 このまま何事もなかったようにとはいかないだろうね。

「俺が守る」

 レイが何かを吹っ切るように力強く言う。その深い碧の瞳には迷いはない。

「まあ、今回はリンに守られたけどね。実際ちょっと危なかったでしょ」

 あの変異体の闇は、これまでの魔物とは違い格段に深かった。あれにのみ込まれていたら、さすがのレイもどうなっていたか。

 

 そんなことを話しているうちに後片付けも終わったらしい。

「レイ、フィル、戻るぞ」

 団長がこちらに近づいてきた。

「戻ったら騒がしくなる。お前達はリンについておけ」

「どうされるおつもりですか」

 表情を固くして聞くレイに団長は、

「城には報告する。あちこちうるさく言ってくるだろうがリンは青の騎士団の団員だ。本人次第だがここにいたいなら他所にはやらん。お前にも協力してもらうがな。安心しろ、レイ」

 そう言ってリンを抱くレイにからかいの笑みを浮かべる団長だが、この人は有言実行の人だ。レイもその言葉に安心したのだろう。

「よろしくお願いします」

 素直にそう言うレイの頭を豪快に撫でる。子どもにするようなそれに少し不満げなレイを満足げに見つめた団長は、出発の合図を待つ団員達の方へ踵を返す。その後に続いて、僕たちも歩き始めた。

 

 

 

《青の騎士団員たち》

 


「すごい魔法だったな」

「戦闘の後にこんなに身体が軽いのははじめてだ」

「何か気持ちよかったな。力が湧き上がるっていうか」

「あれ、『光』だよな。治癒術師以外で使えるの初めてみたぞ」

「いや、魔物に使うのも今までないだろ」

「そんなレベルじゃないだろ。俺たちより全然魔力あるんじゃねえか」

「あんな小さな身体なのにな」

「けっこうかわいらしいよな、リンはーーーぅぅっ」

 最後の言葉を言った団員の口を両隣の団員がふさぐ。

 馬を停めている場所まで徒歩で移動している。前を歩く副団長の腕には大事に抱えられているリン。もう誰も代わろうとする者はいない。そんな副団長は歩みを止めぬまま無表情でさえ美しい顔をこちらに向けると、団員達の顔をその碧の瞳に映してまた顔を戻した。

「こ……凍るかと思ったぜ」

「お前、そういうのは不用意に口に出すな」

 先程よりずっと声を押さえて話す団員達。

「しかし、副団長あからさまだな」

「心配しなくてもあの実力にあの顔。無敵だろ」

「でも副団長に女の噂聞いたことないぞ」

「女を口説いたことないんじゃないか」

「「「ないだろうな」」」

「でも(リンは)副団長の気持ちに気づいてなさそうだよな」

「「「……確かに」」」

 まだ数日の食堂だけでの付き合いだが、なんとなくわかる。誰に対しても分け隔てないその態度は好感が持てるが、そういうことに聡いタイプではなさそうだ。

 恋愛初心者と気づかない者。

「……なんか副団長を応援したくなってきた」

「俺もだ。無敵にも弱点はあるんだな」

「「「「「がんばれ、副団長」」」」」

 

 ここに副団長とリンを見守る隊が密かに結成されたのだった。

 

 

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