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やりすぎた……かも?

 後から聞いた話によると、変異体が倒されるとすぐに、モーグズ達は一斉に逃げの態勢に入り地面に潜ろうとした。しかし、それに気づいた騎士さん達の攻撃は凄まじく、一匹残らず倒してしまった……らしい。

 

 その時の私はというとフィルさんに支えられながら、息も絶え絶えになっていた。気分が悪いし身体に力が入らないし、苦しすぎて逆に気を失えない。

「魔力切れだね」

 そう言ってフィルさんが瓶に入った薬を差し出す。「魔力回復薬だよ。飲まないと死んじゃうから早く飲んで」

 そう言って手を持ち上げることさえできない私に瓶の口を近づけてくれるけど、こういうのってめちゃくちゃ苦いヤツだよね。ただでさえ気分悪いのに吐いたらどうしよう。

 なかなか思いきりがつかなくて悩んでいたら、容赦なくフィルさんが口に薬を流し込んできた。

 ううっ……に……あれ?苦くない?!ほんのりレモンのような香りがして美味しい。

 ゴクリと飲み込むと、胸の奥がじわーっとあたたまってそこからからだ全体にほんの少しだけど力が行き渡る感じがする。この国の薬師さん天才。

「リンの魔力量からいったら微々たる回復だけど、魔法を使わなければこれでどうにか帰るまでは持つでしょ。」

 

「お嬢ちゃん、大した魔法じゃったな」

「デニスさん!」

 ふと気づけば騎士さん達に囲まれていた。皆がこちらを見ている。その顔は困惑、だろうか。その中から私の前に出てきたデニスさん。

「デニスさん、どこにいたんですか?」

「モーグズや変異体の欠片を何か倒す手がかりにならんか集めとったんじゃがな」

 あの中にいたんですね。気づかなかった。

「光魔法とはすごいのう。魔物にも効いたがわしらにも効いたぞ。リンのおかげで疲れが吹っ飛んだわい」

 それはよかったけど、よかったのだろうか?

「あれがなかったらまだまだ時間がかかっとった。感謝こそすれ非難するものはおらんわ。そうじゃろう」

 そう言って騎士さん達を見回す。その様子を見守っていた団長さんが

「そうだな。俺の予想以上だったが助かった。感謝する。リン」

 その言葉に騎士さん達も思うところがあったらしい。

「ありがとな、リン」

「助かったよ。ありがとう」

と表情を明るくして口々に言ってくれた。それを見て、私を支えてくれていたフィルさんは

「リンをお願いします」

とデニスさんに私を預けて立ち上がり、にっこり微笑みながら、

ここの片付け(魔物の死骸の処理)と結界の修復が終わらないと帰れないよ」

と騎士さん達を何故か青くさせて散らしてくれた。フィルさんつよい。

 

「リン」

 いなくなった騎士さん達に代わってレイさんがやって来た。髪は乱れてるし鎧もかなり傷ついているけれど、その足取りはしっかりとしている。

 すると急にデニスさんが

「わしは変異体をもう少し調べてくるかの。ほれ、レイ。後は任せたぞ」

と私のからだをひょいと抱き上げてそのままレイさんに渡すと、結界の向こう側に去っていった。

 

「あの……レイさん……?」

 横抱きにされ、あまりにも近い距離に綺麗なお顔があってドキドキしながら声を掛けると、レイさんは黙って私を抱く腕に力を込める。

 ううっ!ちょっと苦しい。っていうかこれって抱き締められてる?!何かまわりから「「「おおーーっ」」」てどよめきが聞こえますけど。首にレイさんの息がかかってますけどーーー!

 

 一気に混乱した私は、ああこの世界に来てよく意識なくなるなーと全くどうでもいいことを思いながら、意識を飛ばしたのだった。

 

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