私にできること②
朝が来た。
気になることは多かったけど、今日がんばるために何も考えず寝た。寝れた。だから気力も体力も満タンだ。
ますます人の少なくなった食堂で朝食を済ませると、すぐに研究室に行く。
役に立つかはわからない。でもデニスさんがいない間にやれることは終わったし、ここは研究室だから研究していいよね?ね?
まずは知ること、と昨日とは違う本やデニスさんの調べたものを読むことにした。
そもそも魔物は闇+1属性を持って生まれる。基本は火・水・土・風。
闇があるからこその魔物だが、闇自体を主にするのは上級の魔物となる。
こちら側がそれよりも大きい魔力を持っていれば倒すことも可能だが、魔物の持つ闇はまだきちんと解明されていないため、新種の魔物が現れるごとに対処していくという感じらしい。
結界とは魔力で作る壁のようなもので、魔の森の街道の結界は青の騎士たちの魔力を結界石に込めることによって作られている。きちんと管理して、適宜結界を補強していっているため、魔物は侵入できないようになっている。だから結界を壊すほどの変異体はかなり魔力持ちということだね。
街道は町や村につながっているので、商人をはじめとして人の行き来も多い。今回の変異体騒ぎで通行止めにしているらしいけど、長引けば沢山の人たちが困ることになるよね。
青の騎士は魔力が高い人ばかりだから、今回のモーグスの変異体も倒せちゃうと思うけど。
実際デニスさんの書いたものには、これまで出た魔物とその対処法が事細かに記されていた。基本魔力で圧倒してって感じだね。おお、レイさんは魔力も武力も群を抜いているらしく、ここ数年の資料を読む中で大活躍していた。イケメンな上に仕事もできるとは無敵だね!
そんなことを考えたり調べたりしていると、アリスさんが昼食のお誘いに来てくれた。
食堂に来ている事務方の人達は普段通りの数だけど、やっぱり騎士の人は少ない。
「うちの人もすごく忙しいみたい。そういう仕事って分かっているけど、やっぱり心配よね」
と憂いを帯びた表情のアリスさん。
そうだね、家族はみんな心配だよね。私も弟の一人が警察官になったとき、夢がかなってよかったねって思うのと同時に心配な気持ちにもなったもの。
よし、やっぱり私にできそうなことはやってみなきゃと決意を新たに研究室に戻る。
そもそも『聖水』ってなんだろう?
異世界ものの本だと、どこかの神聖な森の中の泉の水だったり、教会の偉い人や聖女なヒロインが祈りを込めた水だったり……森は魔の森しか知らないし教会と聖女はこの世界に存在するのかもわからないけど。
確かレイさんがこの前『清潔』の魔法をみて、「光を使ってる」って言ってた。フィルさんは「複合魔法」って言ってたし、『光』の出し方はよくわからないけど、『水』に何か思いを込めたらできないかな?
えーと、大きな優しい光のシャワーで深い闇をまるごと潤して悪いものを洗い流すイメージで
『聖なる水』
その瞬間、自分の頭上に光の雲ができ、キラキラと輝く水が雨のように降り注いだ。
わぁ!きれい!!……じゃなくて、あれ?イメージしてたのと違うし、ここ部屋の中!と慌てて『消えて!』と思ったら、何事もなかったように消えた。というか自分も床も濡れていないーーーーまぼろし!?
だけどなんだろう、身体も心もさっきよりスッキリした気がする。これってどんな効果の魔法?
思いの外あっさりできちゃったけど、本来意図するものができたかはわからない。でもこれ以上は考えつかないし、もしかしたら何か役に立つかもしれないよね!
とりあえずレイさん達に見てもらおうと、部屋を出たのだった。