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青の騎士団③

《レイ視点》 

 

 リンの魔法についてフィルと話していると、左腕に柔らかな重みがかかった。

 

「寝ちゃったね」

 

 フィルが声を抑えて言った言葉に横を見ると、リンが小さく寝息をたてて俺の腕に寄りかかっている。呼吸が深くなったのを確認し、そのまま起こさないようにそっと支えながらその頭を膝に乗せる。落ちないようにと頭にそっと触れると、その艶やかな黒髪がはらりと揺れた。

 

 

「それにしても『光』持ちとはね。上に報告したら(魔術団)にとられちゃうんじゃない?」

「どこにいるか決めるのはリンだ」

 今の王は暴君ではない。膨大な魔力持ちは貴重な存在だが、無理を強いることはしないだろう……今のところは。

 魔力が高いとはいえ、リンは戦いを好む性格ではないだろう。使い方によって、同じ属性の魔法でも魔力に差が出るようだ。

 魔法を生活のために使うことを嬉しそうにするリンだから、こんな場所(青の騎士団)ではあるが、穏やかに過ごして欲しいと思う。

 

「僕たちも当分忙しいしデニスさんも出てもらってるからね。ひとりで大丈夫かな?この子は」

 

 一昨日の夜、魔の森の結界が破られていると報告が入った。幸い侵入を許すほどの大きさではなかったが、その前から新種らしき魔物の目撃が報告されていた。結界を破るということは上級の魔物かもしれない。

 すぐに、魔の森研究の第一人者であるデニスと騎士数名で調査に向かわせた。それと同時に結界の修復と見回りも強化しなければならず、その対策と調整に追われている。

「報告が届いたら場合によっては僕たちも出ることになるからねぇ。アリスさんと仲良くなったみたいだし、気にかけてもらうように頼んでおくね」

「ああ、食事は必ずとらせるように、メアリにも伝えておいてくれ」

 

 目の覚める様子のないリンをそっと抱き上げる。フィルが開けたドアをぬけ、そのままリンの部屋に向かって廊下を歩いていく。通りがかった部下達が腕に眠るリンを見て驚きの表情をしているのを横目に見ながら、リンの部屋へ向かって歩く。

「これだけ牽制かけとけば、リンにちょっかいをかける奴もいないでしょ」

 フィルのからかいを含んだ言葉を無表情で流す。

「今回の件が落ち着いたらもう少し頑張らないと、この子きっと気づかないよ」

 何に、という言葉を省いたフィルに

「わかっている」

と返すと、「あ、認めるんだ」と呟いてフィルは少し笑った。

 

 

 

《フィル視点》

 

 一目惚れ、なのだろう。

 長年一緒にいるけれど、こんな優しい目で女性を見るレイは初めて見る。

 

 その実力から若くして副騎士団長の地位にあり、その見目の良さもあって身分問わず若い女性に秋波を送られるも無表情で受け流す。そんなレイが、だ。

 今日もリンが食堂に来ていないと聞くや否や、すぐに部屋を飛び出していった。この建物内は基本安全だし、何かあればすぐに連絡が入るだろう。不用意に外に出るような子ではなさそうだから、大方時間を忘れて研究室にいるんじゃないかと思ったんだけど。

 

 大きな黒い瞳に小さい作りの顔は年齢より幼く見え、この国の者とは明らかに違う。

 思っていることがすべて表情にでてしまうからか、人に警戒させない雰囲気を持っている。魔力を自覚したばかりなのに、大したことを何でもないようにやってしまうのも、素直というか無防備というか。


 

 でも彼女、お前のことそういう意味では意識してなさそうだよ。顔に見とれてることはあるけど、ただ綺麗なものを見たってだけでそこに欲は感じない。まだ事務的なことか保護者的な立場でしか接してないしね。

 

 彼女の部屋のベッドに大切な宝物を扱うような慎重さで寝かせて、名残を惜しむようにその頭をそっと一撫でして部屋を出て鍵を閉める。

 執務室に戻るレイの後を歩きながら、上司でもあり大切な友人でもあるその背中にそっとエールを送った。

 

 

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