食事は大事
「ほら、だから言ったでしょ。慌てなくても大丈夫だって」
手を引いて連れてこられた場所は副団長室で、そこにはニヤニヤしながらレイさんに声をかけるフィルさんがいた。
レイさんはそれに反応せず、そのまま私を連れて応接セットに座らせる。そしてこの前のように横に座るレイさん。
目の前には配達されたらしい夕食が並んでいる。
フィルさんも私たちの正面のソファに座ると、
「リンの分も運んでもらってるから、一緒に食べるよ。お説教は食べてからだね」
と、顔と口調は甘いのに内容は甘くないことを言われたけど、きっとお仕事の邪魔しちゃっただろうしね。慎んでお聞きします。
生活のことや仕事のことなど、といっても昨日と今日の出来事だけだけど話をしながら食事をした。
食べなくてもいいと思ってたのが嘘のように、しっかりお腹に入る。不思議。でもやっぱりちゃんと食べた方が元気が出そうだね。
このままシャワーを浴びてベッドに潜り込みたい。
「午後6時までって言ったよね。3時間もオーバーしてるのに気づかないなんて、熱心というかなんというか」
そんなに経ってたなんて全然気づかなかったな。食堂が閉まる時間になっても私が来ないのを心配して、配達ついでにメアリさんがレイさん達に話したらしい。
「すいません。ご心配をおかけして」
「まったくだよ。ま、リンに会いに行く口実ができてちょうどよかったけどね。ね、レイ?」
レイさんを見ると無表情に食後のお茶を口に運んでいる。レイさん?
「ところでリン、昨日の夜に客間から一瞬何か光ったって外の見張り番から報告が来てるんだけどね。まあ、リンが何かしてたのかなと思って放っておいたんだけど。……何かしたよね?」
あら、カーテンしっかり閉めてたのに。でも下着を洗ってたとはなんだか恥ずかしくて言いにくい。
「えーと、してたんですけど…………あ、今やってみますね」
言いにくいけど、やってみせることはできるよね。というかもう一つ試してみたかったし、ここならいいよね。
昨日は衣類限定だったけど、今は衣類とからだ全体がきれいになるようイメージする。。あ、お詫びになるかわからないけど、レイさんとフィルさんにもかけてみよう。
「『清潔』」
すると、自分はもちろんレイさんとフィルさんからも強い光が一瞬放たれて思わず目を閉じる。
「これって……」
フィルさんの声に目を開けると、二人の驚いた顔が私を見つめていた。
「複合魔法なのにすごい精度だね」
「しかも『光』も使っている。さすがリンだな」
あら、魔法と関係なく御二人がさっきよりもっとキラキラと輝いている。タイプの違うイケメンの威力が増して眼福だね!
と思いながら眺めていたら急激に眠気が襲ってきた。最近すごく早く寝てたしね。仕事して限界近かった体力な上に、お腹も満たされたせいだね。
早く部屋に帰らなきゃ…………と思ったのを最後に、意識が落ちていった。