人の話を聞かないタイプ
本日2話目です
「それでどうしてあなたをここに呼んだかというとね」
神様はにっこりと微笑む。そんな表情をすると、ドレスのような服とあいまって物語のお姫様のようだ。年齢不詳だけど……。
でも神様はすぐにその顔をしかめて、
「あなたがこのまま輪廻の輪に入ると次に生まれ変わるのは246年後なのよ。しかも人間になれるとは限らないの。どう、嫌でしょ?嫌よね!」
どうだろう?……きっとその時に今の私の記憶はないだろうし、それでもいいような気もするけど。
でも返事はできないし神様は返事を求めてはいないみたいで、そのまま話を続けた。
「ワタシもずっとみつめてきたあなたを……なんていうのかしら?なんだか我が子のように感じてるのよ。
だからね、元の世界では無理だけど、今なら別の世界にヒトとして転生させてあげられるの。別の世界って異世界よ。あなたこういうの好きよね!!」
神様は本当に私のことをみていたんだね。
そう、私の唯一の趣味は本を読むこと、しかもその中でも異世界ものは大好物。大量にある本のほとんどはそういうもの系。
現実は厳しいから、夢は本の中でみることにしていたのだ。
しかし異世界ものにも色々あるよね。戦闘ものもあるしめちゃくちゃ苦労するものもあるし。
どうしても思考がマイナスになってしまうのは、実際に自分が行って何ができるか真剣に考えたことがあるからだ。
結論:読むものであって行くものではない
だって特に秀でた特技があってこの世界を変えてやる!なんてことも全然ないし、肉や魚を最初から捌いてすごい料理を完成させられる気も全然しない。
だけど、やっぱり私に返事を求めていない神様は続けて言った。
「というわけで、あなたには異世界に行ってもらいます。からだと記憶はそのままの方が『異世界』を楽しめそうだから。あ、でもちょっとだけ若返らせてあげるわ。それとアッチの世界に合わせた能力をつけてあげるわね。こうしてあーしてーーーーーーーーこれもあげちゃおう!」
神様は私の頭やからだをペタペタと触りながらなにやらつぶやいている。
私はというと、なんだか触られたところがほんのり温かくなって、マッサージされているようにとてもいい気持ちでもうどうにでもしてって気分だ。
「できた!これであっちの世界に行っても大丈夫よ。ワタシは今までと一緒で見守るしかできないけど、あなたのことはいつも見ているわ」
ぼんやりしているうちに私の準備を完成させたらしい神様は、美しい顔に慈愛の表情を浮かべるとさらに神々しいまでの(本当に神様だけど)美人顔になった。そして、そっと私の額に口づけた。
その瞬間、私の意識が急速に薄れていく。
最後に聞いた神様の声は……
「あなたには素敵な恋もして欲しいの。きっと素敵な出会いもあるわよ」