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読書と制服と

 本も好きだったし図書館にもよく通っていたけど、目当ての棚はいつも決まっていたから正直どう分類されているか詳しくは知らない。

 いや、読んだ本の中に図書館を舞台にした詳しい仕事内容が書いてあるお話もあったけど、注目してたのは登場人物達のことだったしね。

 ということで分類法とかはわからないし、とりあえずどんな本があるのか読んでみる。

 

 なるほど、魔の森の街道は結界に守られてて、その維持と増えた魔物の討伐が青の騎士団の仕事なんだね。

 魔の森の魔物の種類は確認されてるだけで100種類ほど。常に全種類いるわけではなく、討伐により絶滅したものもあるし、そうするとまた新しいのがあらわれてと、進化?し続けている。

 魔物によって効果的な魔法の属性も違うらしく魔法に関しての本も多数ある。

 魔の森、魔物、魔法と大まかに3種類に分けていこうかな。

 

 

 

「リン、そろそろ昼にしようかの」

 量が多いからパラパラ流し読みだけど、3分の1ほど仕分けたところで声がかかった。

 集中してて気づかなかったけど、もう2時間以上過ぎていたらしい。知らないことばかりで意外と夢中で読んでたみたい。

 あら、これって片付けがなかなか進まないヤツですね。

「ちゃんと食事と休憩はとらせるように言われておるからの。ほれ、行くぞ」

 そう言って部屋を出ていくデニスさんをあわてて追いかけ、朝ぶりの食堂へ行く。

 

 食堂は朝は寮に住む騎士ばかりだったが、お昼は事務方の人達もいるため朝よりも賑わっている。


「デニスさん、お久しぶりです」

「今日はこちらにいらしたんですね」

 おお、デニスさん人気者!ってぐらい次々と人が挨拶に来る。

 デニスさんはそれに手を軽く挙げて応えながら、カウンターにたどりついた。

 

「おや、食堂に来るなんてめずらしい。そろそろ届けに行こうかと思ってましたよ」

 メアリさんがデニスさんに話しかける。あら、いつもは配達(デリバリー)してもらってたんだね。

「お嬢ちゃんを頼まれとるからの。後でぐちぐち言われるのはごめんじゃ」

 そう言って食事ののったトレーを受けとる。

「リン、どうだい。あの部屋はなかなか大変だろ」

 私にもトレーを渡しながらメアリさんがこそっと聞いてくるので、はははっ……と曖昧に微笑みを返した。

 

 

 誰かが席をとってくれたらしく、混んでいる食堂だったけどすぐに座れた。ありがとうございます。

 お昼のメインは、見た目も味もチキンソテーのような肉料理。おいしいのは幸せだね。

 

「リン、部屋の本はどれも読めとるのか?」

「はい、魔の森のこととか魔法のこととか色々わかって勉強になりました」

 そういう私にデニスさんは嬉しそうにうなずきながら

「あれはわしが長年かけて集めたものもあってな、近隣の国の本もずいぶんある。それを読むのはなかなか骨が折れるんじゃが、スムーズに読めるとなると随分助かるのう」

 今までは言語別に読める人に訳してもらっていたらしい。

 私、その仕事ならお役に立てますよ!がんばります!

 正直デニスさんから直接仕事のお手伝いを期待されてほっとした。なんか無理矢理私を押し付けられてそうだもんね。

 

 

 昼食が終わり、また作業を再開した。といってもまた本を流し読みして分けるだけなんだけど。今度ゆっくり読んでみたい本もあるけど、本来の業務ではないからこの作業に時間をかけるとよくないよね。

 ということでスピードアップして、どうにか私の就業時間内に仕分けだけは終わらせることができた。

 

 

 午後6時ぴったりにデニスさんに挨拶して部屋を出る。デニスさんはもう少しすることがあるらしい。帰れ帰れと部屋を出されたので、ドアを閉めて廊下に目を向けるとそこにはフィルさんの姿が。

「おつかれさまです、フィルさん」

 あっ、朝私を放り込みましたよね、という視線を送ったけどサラリと流され

「制服、準備できたみたいだから取りに行くよ」

とさっさと歩き出す。

 

 

 団の備品を管理している部屋に着くと、待っていたのは女性だった。前の私と同じぐらいの歳かな?

「アリスよ。よろしくね」

 オレンジの明るい髪をお団子にして、優しげなんだけどできる女性!って雰囲気だ。

 

 じゃあまずは着てみてね、と部屋の隅の布で覆われた簡易な試着室に入れられた。服を脱ぎ、渡された服を広げてみる。丸襟のブラウスにボレロ型の濃紺のノーカラーのジャケット、濃紺の膝下のスカートに黒いタイツ。まるできちんとした女子校の制服のようだ。学生時代はずっとセーラー服だったから、なんだか新鮮! 

 試着室を出ると、アリスさんがすぐに袖やスカートのウエスト部分をまち針でとめてサイズを調整し始めた。

 

「リン、よく似合ってるよ」

 そう言うフィルさんの着ている団服と同じ色の服を着ていると思うと、身が引き締まる思いがする。なんか本当に騎士団の一員になれた気がして嬉しいな。

 

 試着室に戻り、服を着替え直してまち針のついたままの制服をアリスさんに渡す。出来上がりは後日かな?と思っていたら、

「ちょっと待っててね」

と言うや否や、裁縫道具の並んだ机に座ったとたんすごい早さで切ったり縫ったりし始めた。早送りみたいなスピードなのに縫い目がミシンみたいに一定で正確だ。

「彼女は縫製のスキル【A】持ちなんだよ」

 おお、【A】といえば将来安泰なやつですね。

「元は王都の仕立屋で働いてたんだけどね。うちの団員と結婚したときに引き抜いてここに来てもらったんだ」

「違うわよ。言いくるめられていつの間にかここで働くことになっちゃってたのよ」

 笑いながらあっという間に直し終わった制服をきれいにたたんで私に差し出すアリスさん。ありがとうございます。

「ブラウスは明日替えのものを用意しとくわ。上着は重要な会議や式典なんかに参列するときに着ればいいわよ。普段はスカート以外はみんな自由に着てるわ」

 そう言うアリスさんは黒いカーディガンを羽織っている。確かに今日出会った騎士団の女の人達は、きちんと着ている人もいたけど、セーターやジャケットとかの人たちも多かったかも。

「それよりリンちゃん。あなたの着てるドレス、デザインも素敵だし、この布も最上級の布よね。……どこの国の素材かしら。」

 そう言って私の服を隅から隅まで撫で回すように見て触るアリスさん。

 

 ……神様お手製とは言えないよね。。。

 

 今度他のドレスも見せてね!と約束させられて、フィルさんと共に部屋を後にした。

 

 

 

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