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初出勤の朝

 朝が来た。

 

 さすがに緊張してなかなか寝付けなかった。あれ?私って繊細?

 でもなんといっても初出勤日だもの。十数年前入社した頃を思い出す。人の名前や仕事を覚えたりするだけで、何もできてないのにいっぱいいっぱいだったな。そのうち新入社員を教育する立場になって、こっちの方がもっと大変なんだって思ったけど。

 職場環境は全く違うけど、なんといっても2度目だからね。前よりはスムーズに働けるようにがんばりたい。

 

 昨夜はレイさん達も忙しく(私のせいだね。申し訳ない)、夕食は部屋に運ばれてきて一人で食べたけど、今朝は食堂で食べることになっている。

 

 騎士団の制服はまだ準備できていないということで、虹色ドレスの中から、昨日の藍色より少し鮮やかな青いワンピースを着る。これが地味な順だからね。

 袖は肩から白い生地に切り替わっていて肘から先がふんわりとしている。襟元も同じ白い生地で丸くなっていて、青いボタンと大きめのリボンがついていたので、リボンははずして昨日のペンダントが見えるように表に出した。ウエストはキュッと青のリボンで後ろ側を締められていて、裾に向かってヒラヒラが段々になって広がっている。

 

 働くにしてはどうかなって感じだけど、これ以外に着る服もないんです!と誰かに言い訳してみる。まあ本音を言えばすごくかわいい服だから気分は上がるけどね。神様、感謝はしてるんですよ、本当に。

 

 準備が整ってしばらくたった頃、部屋がノックされてドアを開ける。フィルさんだけかと思っていたら、レイさんも一緒に来ていた。

「おはよう、リン」

「おはよう、リン。どうしてもレイが一緒に朝御飯食べたいんだって聞かないからさ」

「おはようございます。レイさん、フィルさん」

 

 3人で連れだって向かった食堂は、なんと私の部屋の真下だった。においも音もしなかったけど、あっ客間だから静音の結界が張られてるんですか。階段までの廊下にちょっと距離があるけど、かなり便利な場所だ。

 レイさんを先頭に私たちが食堂に入ると、大勢の人達の賑やかな声が一瞬にして止んでたくさんの視線がこちらに飛んだ。その中をレイさん達の後について歩いていくとだんだんと元の賑やかさに戻っていく。

「おはようございます。副隊長」

「おはようございます。フィルさん」

 という声と共に、

「おはよう、リン」

「今日からよろしくな」

という声をかけてくれる人達もいる。「おはようございます」「よろしくお願いします」とペコペコしながらカウンターまでどうにかたどり着いた。

 

「おはよう、レイ。その子が噂のお姫様だね」

 お姫様?

 それよりカウンターの向こう側から聞こえた声は明るく威勢の良い女性の声。

 この世界に来てはじめての女の人!

 少し白髪の混じったグレーの髪を後ろでまとめた少し恰幅の良いその人は、人の良さそうな笑顔を私にも向けてくれる。

「リン。この人はこの食堂の(ぬし)のメアリだ」

「はじめまして、リンです。メアリさん、一昨日のスープも昨日の食事もすごくおいしかったです。ありがとうございました。よろしくお願いします」

「メアリだよ。口にあったなら嬉しいよ。こちらこそよろしくね、リン。レイ、食堂の主はうちの旦那だよ」

 そう言ったメアリさんが振り向いた先には、フライパンで何かを焼く白髪で痩せ型の初老の男の人。ペコリとお辞儀をすると、料理する手は止めずにニコッと笑顔を返してくれた。

「あそこにいるのは料理長のジルだ。二人は長年ここで働いてくれている」

 厨房には他にも3人の男の人が切ったり混ぜたり運んだりと忙しそうにしていた。

「朝食はパンとスープはおかわり自由だ。たくさん食べて大きくなるんだよ」

 やさしい笑顔でそう言ってくれるメアリさんだけど……何歳に思われてるかわからないけど、16歳なので多分大きくなれません。。。

 

 サラダとハムエッグののったトレーを受け取り、パンとスープを自分で注いで先に準備して席をとってくれていた二人の元に行く。

「いただきます」

 手を合わせて挨拶し、サラダを口に運ぶ。うーん、相変わらずカラフルな野菜だけどだんだん慣れてきたかも。ドレッシングも美味しいな。スープは具だくさんでお肉も入ってる。シチューって感じ?朝からどっしりしてるけど、騎士の皆さんは体力勝負だもんね。パンは焼きたてでホカホカしてる。これパンも全部ここで作ってるのかな?ジルさん、メアリさん、すごくおいしいです!!

 と脳内で考えながらも手も口も休まず食べていると、ふと気がつく二人の視線。

 あれ?二人とも私の倍ぐらいあったのに、いつの間にか食べ終わってる!

「リンは美味そうに食べるな」

「幸せそうな顔して食べるよね」

 そんなに見られると食べにくいと思いながら食べていると、それが伝わったのか分からないけど、フィルさんが食後のお茶を飲みながら騎士団の建物の説明をしはじめてくれた。

 

 私の部屋は2階の一番端の部屋。この階には客間の他、事務方の人が働く部屋と会議室がいくつかあるらしい。私の働く研究室も2階で、私の部屋とは逆の端にあるそうだ。

 3階には団長室をはじめとする幹部の人達の執務室。

 1階は一般の人も出入りする受け付けがある事務室や、緊急の時にはこの辺りに住む人の避難所にもなる大広間、そして食堂などがある。

 昨日行った訓練場は別館で、その他広い演習場もあるそう。

 

 なるほど、私が行くのは研究室と食堂だから迷わずいけそうだね。

 

 朝食も済み3階へと上がるレイさんとは別れ、いよいよ仕事場に初出勤だ。

 フィルさんの案内で私の部屋とは逆側にある研究室へと足を進めたのだった。

 

 

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