神様との出会い
初めての投稿です。
よろしくお願いします。
私は自分が死んだことを認識していた。
だって大型のトラックがものすごいスピードで歩道にいた私にぶつかってきたから。
走馬灯のように人生を振り返る暇もなかったけれど、幸い強い衝撃以外の痛みを感じる間もなかった。
保険や貯金などはいつ何が起きても大丈夫なように日頃から整理してきたつもりだし、仕事は私がいなくてもまわるだろう。まわりに迷惑をかけるのは申し訳ないが、悲しいかな社会ってそういうものだ。
家族はそれぞれ独立して仕事をしたり家庭をもったりと楽しくやっているから、私が死んで悲しむだろうが、きっとお互い助け合って乗りきってくれるだろう。もう戻れないだろうからそう思うしかない。
唯一気がかりなのは部屋にある大量の本。ライトノベルやBL的なものなど、34歳独身女性が読んでいるのを知られるのはちょっと恥ずかしいものもあるから、そこは妹達がうまく処理してくれることを祈ろう。
さて、これからのことだ。
といっても一般的?には三途の川を渡ったり、閻魔様の裁きを受けたりするというのがスタンダードだろう。・・・実際にこれを経験した人はもう死んでいるはずだから、なぜ現世に伝わっているのか不思議だけど。
そしてラノベ的には真っ白な空間とかが多かったように思う。
しかし、私がいるのは真っピンクな空間、だ。
そしてさっきから私の目の前にはピ◯クハウス的なフリフリの服を不思議なくらい上品に着こなした、すごく綺麗な女の人が私を見つめながらおいおい泣いているのだ。
声を掛けようとしたけど、なぜか私の声は出なかった。苦しくも痛くもないけれど、からだも動かないみたいだ。そういう仕様なのだろうか。
訳がわからなかったけど、こんな美人さんの顔を見つめられるのも貴重な経験だよね。
そのまま30分ほど、泣いてる顔も美しいし美しいって飽きないんだなと思いながら、じっと鑑賞会気分で見つめ続けた。
女の人は神様でした。うん、ここはラノベ的。
「ごめんなさいね。ワタシがちょっと目を離した隙にイレギュラーなことがおきちゃって」
本当はまだまだ寿命はあったのよ、と神様は申し訳なさそうにそういうと、私の手を握った。
「ワタシあなたのこと25年間みてきたの。だからあなたがずっと家族のために自分を二の次にしてきたこと知ってるの」
25年前というと私が9歳の頃、我が家に5つ子が生まれたときだ。
「5つ子が産まれるなんて人の世ではめったにないから、ワタシが見守っていたのよ。そしたら期待と不安と寂しさを抱えたあなたが目に入ってね。なんだか気になっちゃって時々見てたのよ。弟や妹の世話をしながら家事や育児を手伝って、働き出したら自分のお給料のほとんどを仕送りして。すごくいい子すぎるんだもの」
そんなにいい子でもないですよ、と言おうとしたけどそういえば声はでなかった。
それに……と神様はため息をつきながら続けた。
「あなた自分の人生ずっと独りで生きていこうとしてたでしょ」
それはまあ34歳にしてお局的な立場だったし、若い頃は遊びに行くお金もなかったから出会いもなかったし、お一人様人生のためこつこつ貯金して将来は介護つき老人ホームに入ろうとは思ってましたよ。
「・・・出会いはあったのにスルーしてたものねぇ」
よく聞き取れない小声でボソッと何か言った神様は、残念な子をみる顔で私を見た。