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俺、勇者!!

作者: コロナ

―――世の中には、真実を真実と認めてくれないことがあるのです―――




Q:勇者とは何ですか?

A:魔王を倒した人と、その家系・・・らしいです。


Q:では、魔王とは何ですか?

A:人々を苦しめる異世界の生物・・・かな?


Q:で、あなたがその勇者、と?

A:え、ええ。そういうことになります。




「はっはっはっは!なかなか面白い事をいうねぇ君ぃ!

 でもこれはれっきとした面接なのだよ。

 もう少し常識をわきまえてからまた来てくれ」


・・・これで17社目。

俺の志望就職先は全滅し、第二希望も危うい。

俺は真面目に答えているつもりだし、嘘などついていない。つけない。


そう。俺は勇者だ。名前は藤井 智紀(ともき)

勇者といっても、勇者の子供の子供の子供の子供の子供の子供の子供の子供、

いわゆる雲孫(うんそん)である。


昔は勇者というだけで国王にもなれたらしいが、何せ今は平和な世の中だ。

魔王もいなければ、スライム(というのがいたらしい)すら存在しない。

勇者代々継いできた「勇者の(つるぎ)」も、数年前に祖父が捕まったときに没収された。


祖父が捕まった理由。それが・・・


  銃刀法違反


辛い!辛いよこの世の中!死んでしまえ銃刀法。



だが、力は受け継がれた。良いところも悪いところも。

良い力なんて使えない。だって平和なんだもの。

問題は悪い力だ・・・

その力は「嘘をつけない力」・・・


  いらないよ!




話を元に戻そう。

俺は今、就職活動をしている。

だが34歳という年齢と、「悪い力」様のおかげで、めでたく断られるのだ。


勇者がチヤホヤされていた時に国王になっておけば良かったものの・・・

何が「私は自分の力で国を作り上げます」だよ!

その3日後に死んでんじゃねーよ!ヴァーカ!


・・・で、そんな回想中に18社目も駄目だった訳で。負け組のボスだよ俺。


だが、

「ただいまー」

いつもの家に帰ると、そこから先は勝ち組の領域だ。なぜなら・・・

「おかえりー。ご飯出来てるよ。」

俺には早百合(さゆり)という妻がいる!


・・・・・・どーせ痛いですよーだ。


・・・ま、まあ、それはさておき、俺は風呂に入り、晩飯を食い、テレビをみる。

そういえば今日は火曜日か。そろそろ「ワクワク!ちゅーずでー」の時間だな。

「ワクワク!ちゅーずでー」とは、俺が大好きな国民的バラエティ番組だ。

毎回30%以上もの視聴率を叩き出している。


だが、今日はそれを放送されることは無かった。

放送直前に臨時ニュースが流れ込んだのだ。


「東京都新宿区で、いきなり巨大ネズミの大群が襲ってきました!」

と言うアナウンサーの後ろで、通常の3倍はあろうネズミが群れをなして突進している。


  吹いた。なぜネズミ。「チュー」ズデーだけに、か?


・・・いや、ここで吹いている場合ではない。

これは地球の危機なのだ。

その時、一生に一度しかないと思われる勇者としての勘が働いた。

魔王だ!魔王の仕業に決まってる!

そう思った瞬間、俺は家を飛び出した。

重要な妻の一言も聞かずに・・・


「ちょっ・・・!何処行くの!なにももたずに!」


約10分後、俺はテレビで放送されていた現場付近に着いた。

人影は無く、巨大ネズミがうろうろしている。

1匹が俺に気づいた途端、10匹ほどが襲い掛かってきた。

「久々(初めて)のバトルだぜ!・・・あっ!俺武器なんか持ってねーじゃん!」

初めてのバトルで勇者らしからぬ愚行(逃げる)をしてしまった。

しかも、来た道と反対方向に・・・


  ゆうしゃは みちに まよった!


どの位の時間が経っただろうか。

夕日は沈み、辺りは真っ暗。おまけに山の中だ。

月明かりで何とか前が見えるものの、何処まで行っても木しか見えない。

一体どうすればいいのだろうか。日が明けるまで待つか?いや、今は冬だ。凍え死ぬ。

そう思いながら歩いていると、一気に視界が開けた。

そして目の前には―――


「ま、魔王!?」


展開が速すぎる。頭がクラクラしてきた。

「おう、我が魔王や。我を魔王と知ってるっちゅ―事は、お前が勇者か。・・・手ぶらの」

魔王って関西弁だったのか。でも、「我」と関西弁は全く合わない。

ていうか「手ぶらの」って失礼な。


「ぶっちゃけ、手ぶら勇者なんか余裕で倒せるけど、我はそんな気おきへんねん。」

ところどころ失礼な事を言うやつだ。言い返してやろう。

「で、やる気無し魔王は何がしたいんだ?」

「何もやりたくない」

「は?」

何だ?魔王ってやつは鬱なのか?

「つまり、もう一回寝たいって訳や。」


つまり、魔王が言いたいのは、こうだ。

約1000年前に初代勇者に倒された魔王は、死なず、眠りに着いただけである。

魔王は、寿命以外では死なないらしい。

で、最近目覚めたらしいのだが、まだ眠いらしい。

(そこだけ言葉を濁していたが、まあどうでもいい。)

そこで、俺に「全自動おやすみマシーン」なる機械の起動を手伝ってほしいのだという。

おかしな話だが、手伝わないと殺されるので、仕方なくOKした。


「このボタンを押せばいいんだな?」

「ああ、するとこの布団に入っている我が眠れるんや」

「じゃあ早そ「待てい!」・・・なんだよ?」

「この機械はな、太陽光で動くんや。朝まで待たなあかんやろ」

「・・・」


  何で魔王がエコロジーに貢献してんだよ!!!


「まあそんな怒った顔せんと、今日はとっとと家へ帰れ。懐中電灯貸したるから」

仕方が無い。とりあえず帰って寝るか。

そして家へ帰り、眠りに着いた。




次の日、窓の外を見ると、そこは一面の銀世界だった。

冬だから雪も降るだろう。

子供たちがバケツに張った氷を割ったりして遊んでいる。

冬だから氷も張るだろう。

支度を終えて、早百合に事情を説明し、ドアをあけると、魔王のいる山にワープした。

冬だからワープもするだろ・・・

なんでだよ!!


どうやら山の頂上のようだ。見下ろすと、魔王がいた。

「早よ来んかい!太陽の眩しいうちに寝たいんや!」

「今行くから少し待ってろ!」

そして、俺は山を下り始めた。


  不幸と笑いの神様は、ここで共演する。


つまずき、転ぶ。

漫画でよくある、転びながら雪だるまになっていくアレを、見事に再現しながら。

20回転ほどしたところで、意識を失った。



気がつくと、魔王の姿は無く、魔王の跡が、雪にくっきりとついていた。

そして、「全自動おやすみマシーン」は、見事に破壊されていた。

俺の雪玉が魔王を直撃し、ついでに「全自動おやすみマシーン」を破壊したらしい。

魔王は倒されると、魔界に帰るみたいだ。

巨大ネズミの姿も見えないし、魔王を倒した事は間違いない。


  俺、勇者みたいじゃん!・・・勇者だけど。


これを皆が知れば、俺が勇者だということが皆に分かってもらえる!

そして、国王(日本では天皇か)までにはないにしろ、就職は出来る!

俺、やったぜ!



TRRRR・・・

TRRRR・・・ガチャ


Q:はい、こちら警視庁本部ですが。

A:私が倒しました!


Q:倒した?・・・ああ、巨大ネズミの話ですか!すばらしい事です!職業は何を?

A:勇者です。


Q:・・・えーと、いくつか質問してよろしいでしょうか。

A:・・・は、はい。


Q:勇者とは何ですか?

A:魔王を倒した人と、その家系・・・らしいです。


Q:では、魔王とは何ですか?

A:人々を苦しめる異世界の生物・・・かな?


Q:で、あなたがその勇者、と?

A:え、ええ。そういうことになります。


ガチャ・・・

ツー・・・

ツー・・・

ツー・・・




―――世の中には、真実を真実と認めてくれないことがあるのです―――

初めまして、コロナです。

文章力の無い自分が、どれだけの小説を書けるか。

そして、どのくらい面白いのか。

皆様の厳しい?目で見ていただけたらと思います。

(12/13)「冬だから・・・でも・・・。」を「冬だから・・・も・・・。」に修正。

ご指摘有難うございます。

対句っぽくしたかったので、全て修正させていただきました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とにかく面白い! 気に入りました! [気になる点] ちょっと展開が早すぎる気がします。 じっくりといろいろな場面を描いて見てはどうでしょうか? [一言] とても面白かったです。 他のも読ま…
[一言] こんにちはー(*・▽・*) この前教えてもらったので 見に来てみました☆= 結構おもしろかったよ(≧ー≦) これからも 楽しい作品 まってま−すw
[一言] 単純に「勇者」と「魔王」のコメディはちょっと面白いですね。銃刀法違反がナイスです。 ところで「冬だから雪でも降るだろう」とその対句(?)二つは、「冬だから雪も降るだろう」ですよね。
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