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あ、異世界ってゲームと同じなの!?  作者: さグや/娘々
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1話「時界神の女神たちと舞う」

「人ってさ、吃驚する時って二つのパターンがあるの知ってるかな?」

「知らないよ。というか、知りたくないし。いや、喋らないで欲しい。」


毒舌な話し方をするのは、私の妹である水上結。

質問をしているのもその姉、水上舞。

あまりにも聞く耳持たない妹の言葉にがっくりしているのも見たくないようで。


「それで、なんでこうなったのでしょうね。姉様。」


妹の投げかける疑問に答えるには、5分前の事。

姉妹共に歳は離れていないのだがスタイルに歴然と差がついていることで喧嘩の最中。


「そもそも、どうして妹のクセして胸がでかいのさ!?」

「はぁ!?そっちこそ、身長が私より大きいクセにひねくれないで欲しいわよ!?」

「何よぅ、文句を言うのならその胸の栄養を私にくれない!?」

「だから、出来るわけないでしょうが!!馬鹿なの?いや、大馬鹿なのよね。」


無駄な言い争いをしながら学生の格好をして通学路を歩いていた。

サラリーマンや小学生、カップルの人まで和むように眺めていた。

姉妹二人は、いつも小さい頃から喧嘩をするごとに周囲から面白がられていた。

仲良しなところが喧嘩をするのだろうと思っているのだがあの時だけは違った。


『……がい……誰…か…。』


「姉様、なんか聞こえない?」

「ん?あら奇遇ね、私も何か聞こえたわね。」


姉妹そろって何か聞こえたことに気づいて周囲を見回すも何処から聞こえているのか分からず。


『…誰か……お願い…。』


また、遠くから目覚めてって言うかのように聞こえる女性の声。

姉妹二人は、声の正体よりも現実の世界でもない音が突然に耳に入って来た。


「姉様、飛行機の音…酷くなってない?」

「なんか、焦げた臭いもするし…地面に血も……血っ!?」


そこで気が付いた姉の舞は、周囲を見渡してはっきりと今起きている現象に目をはっきりと開く。

妹の結にも自分の身に何が起きたのか理解できずに突っ立っていることしか出来なかった。


「ねぇ、お願い!!そこのお二人さん、助けて!!」


誰かが姉妹二人に大きな声で助けを呼んでいた。

一人の甲冑を着ている女の子が倒れている少女の胸部から出血をしている光景を見て固まっている姉妹。

自分たちに何かできるのだろうかと頭の中で考えている姉妹は、何も言えずにお互いの腕を掴む始末。


「ねぇってば!!そこのお二人さん!!あたしの妹が死んじゃうから、助けてよ!!」

「お…お姉ちゃん…わたし…だいじょ…うぶ……だかりゃ…。」


その子が喋ると口から鮮明な赤い血が溢れているのを見ている妹の結は、学生鞄の中からタオルと水筒を取り出してそのタオルに水筒の中の水で濡らして止血をすることにした。


「姉様!!私の鞄の中から医療キットあるから取ってくれない!?」

「あ、う、うん…はい、これ?」


テキパキと妹である結の医療知識をフルに使って治療を施している時に、また飛行機のような音が聞こえて来た。


「え、ねぇねぇ!?あの翼の付いている蜥蜴みたいなのってなぁにぃ!?ファンタジにしちゃすげくない!?」

「あれは、ワイバーンよ!!頭を下げてないと喰われちゃうわよ?」

「ひ、ひぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」


姉の舞は、弱腰のようにワイバーンの食らいつく攻撃を紙一重で避けるように横に飛びのいた。

だが、ワイバーンの攻撃は止まらないまま姉の胸に向かって噛みつこうと飛び込んでくる。

その度に舞は、ワイバーンの攻撃パターンを読み解くように段々と躱し方が上手くなってくる。


「姉様、そのままワイバーンの攻撃を引き付けてて!!」

「うん、無理!!こっちは、それどころじゃないなんだってば!!ひゃわっ!?」

「とか言いつつ、躱し方がアクロバティックになっていることに驚きなんですが。」

「姉様は、言葉よりも身体が動く人なんで。あ、妹ちゃん右腕を上げてくれませんかね?」

「…う、うん。」


舞の避け方が少しずつジャンプの高さやワイバーンの疲弊を誘うように距離を取る行動で避け方のスキルが段々と様になっていく。

その光景を見ている周りの人たちの視線を集めていくのと闘っているらしきモンスターのような奴らもなぜか舞の方に参戦している始末で着実に詰まれていく姉の退路。


「あの子、殺されるな。」

「いや、引き付けてくれている間に怪我を負っている奴らをメイジ達に回復をさせて貰おう!!」

「まぁ、そうだよね。早く、こっちだよ!!」


日本語の言葉を話しているからにして姉の思考がある事に到達したのだった。


「これってさ、戦況がどうなっているのかわからないけど……あんたたちも、撤退しなさい!!ここは、私に任せて良いわよ。」


妹たちにメイジの居る場所へ指を差しながらモンスターやらワイバーンやらの一斉攻撃をやすやすと避けながらモンスターの陣地となる荒野へと移動をしていた。

他の闘っているモンスターたちがこっちに目を向けると段々と群がって行く光景を眺めている人間たちはほっと安心したように自身の陣営に戻って行く。


「お、おい…誰か!!最大火力で攻撃を放てるメイジは居ないのか!?」

「はいはい…美味しいところは、我らにお任せあーれ!!」


業火となる浄化の攻撃が荒野の方へと向かって行く。

その放ってくる攻撃が着弾するまで5秒の時間があった。

その直撃する前に姉様に向けて妹の結から大きな声が上がった。


「姉様ぁぁぁぁぁぁぁ、そのまま引き付けておいてねぇぇぇぇぇ!!!!」

「おい、それでも私の妹かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


最大火力の攻撃を直撃したモンスターたちと姉様。

妹の結は、両手を合わせて天に向けて願った。


「天国に逝っても、私を恨まないでね♪」


笑顔で言ってのける結の毒舌は、さすがにその場にいた皆をドン引きさせたのだった。

だが、妹はまだ知らなかった。


「あんのバカ結め……ぶっころす!!」


むくりと起き上がる姉の頑丈さと怒りの放つオーラにモンスターたちが怯えてさすがに逃げて行った。

さしずめ、メドゥーサ以上の超絶な怒りを現わしているかのように遠くからでも戦っていた人間たちにも寒気が起きた。

姉様こと舞が、人間たちの住まう街に辿り着いて妹の結の頭部にこぶを作らせてから話をし始めたのが最初の発言であった。


「人ってさ、吃驚する時って二つのパターンがあるの知ってるかな?」

「……。」


その一つは、妹の“逝ね発言”であること。

さすがに、げんこつ一つで済んだのは奇跡的な寛容があったからである。

もう一つは、この異世界に突然に争い事の現場に居合わせたこと。

姉の類稀ぬありとあらゆる攻撃を避ける行動と魔法らしき攻撃を受けても焦げて済むこと。

頑丈さが取柄でも言いたいのかなと結が思っていたことは愚痴として秘密にした。


「そ、それで…助かったことはありがとうございます。」

「妹様は、お怪我はありませんでしたか?」


旗本に描かれている王城と洋風剣が二つクロスしているのを見ている姉妹。

先ほどに妹が治療で助けた少女とそのお姉ちゃんらしき人がゆったりと学生服を着た姉妹に近づく。


「お助け下さり有難う御座います。我が名を明かします。メリトアール・ルミナスと申します。」

「…わたし…メリトアール…アルテミス……宜しく。」


重傷を負っていた少女が、医療スタッフと共に姿を現すと姉が首を傾げた。


「メリトアール……うーん……ん?………あぁ!?時界神の双子姉妹と言われている女神様!?」

「お…姉様?どうしたの?大きな声出して…キモイんだけど。へぶっ!?」

「バカ妹!!このお二方は、クノロス神の愛娘よ!!慎みなさいよ!!」

「……これだから、ゲーム脳の女は。はぶぅっ!?に、二回も殴った!?いったいじゃない!!」


クノロス神と云うにも古くの伝承では、時計と雷の紋章がある唯一の住処は昔から存在しなかった。

だが、メリトアールという名を持っている女性の人物と婚約を果たし子を双子姉妹しか生まれなかった。

クノロスの願いだった男子の子が欲っしたのだが、愛娘の一人どちらかをクノロスの血を受け継がせようとした。

残念なことにクノロスの伝承は延命できず後継者が出来たことは聞かされなかったのだ。

歴史上少ない情報ばかりだったため姉の舞は、クノロスの詳しい話が効けると思っていたのだろう。


「…父上をご存知とは…生きている時に会わせたかった。さて、お二人はどこから来たのでしょうか?」


第一王女の言葉に重みがある感じが水上姉妹にどう答えるべきか迷い考えてしまった。

もし、何かこの世界で不届き者であることを勘違いさせてしまっては人間の恥であり愚者として追い出されるかもしれないと目を泳がせてしまっている。


「目の焦点が可笑しくなっているようだけど、何か話せない理由があるのでしょうか?」

「い、いいえ…違います。東の国から旅をしているので来たばかりでして。」

「此処は、一番東の国なのですが?」

「あ、いいえ…東の国としても小国と言われている場所から来たのですよ!?」

「東の国の小国…ふむ、もしかして…渡来人と言う者たちでしょうか?」

「あ、多分…それです!!渡来人ですよ…ほら、服の作りが違うでしょう?」

「……ほほぅ、それなら納得。では、渡来人なのであれば何かご馳走をしてあげましょう。」

「…お姉ちゃん……まず…お風呂に入って貰おう?」


アルテミスの言葉に頷いてルミナスは、笑顔で浴場のある場所へ案内をすることにした。

アルテミスの傷を癒すためにもお風呂に入らせた方が良いかなと思ったルミナスは、水上姉妹を居城の中にある浴場へと連れて行きながら使用人に客人用の着替えを用意して貰うことになった。


「渡来人と言うのであれば、絡繰と言うのをご存知でしょう。その話を聞かせてくれませんか!?」

「…お姉ちゃん…はしゃぎすぎ。」

「あ、あはははは…まぁ、私で良かったら話しますよ?」

「姉様、機械オタクだしゲームオタクだから…変な事教えないであげないでよね?」


結の厳しい言葉に心を矢で射抜かれたように傷を負う舞。

そんな光景を見て面白く笑うルミナスとアルテミス。

こんな異世界に飛ばされている水上姉妹の行く末はどうなるのだろうかと思いもしない。

只今だけは、一時的な平和な生活を味わいたいと思っている舞はスマホのメモ帳に日記として書いた。

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