五日目
「キョウヘイも観に行くの? アイのショー。」
「どうだろ、まだ分かんないや」
ごめんリカ、本当は行くと決めてる。僕はショーに否定的なリカに合わせるように、気の無いポーズをしてみせた。
「リカは、行かないよな?」
「うん、行かない。ずっと前から相談されて止めてはいたけど」
今日は僕の部屋にリカが来ている。主が僕である以上、押し倒される心配も少ない、はず。体育座りでさっきから言葉少なな彼女だから、それどころではなさそうだけど。
「ごめん、キョウヘイ。今日は帰るね」
「どうしたの? 来たばっかりじゃない」
「アイが今も苦しんでいると思うと、なんか私だけ好きな人の傍にいて申し訳なくなって」
「それは違うんじゃないかな」
「どう違うの?」
「僕はアイって子の事はあんまり分からないけど、僕があの子の立場でそういう話をされたらなんだか嫌だな。ただの同情は相手に失礼だよ」
「ど、同情、なんかじゃ」
「よし!」
「どしたの? 珍しく声張り上げて」
「悲しみは共有できないけど、喜びは共有できるはず。今度、三人でどっか遊びに行こうか?」
「……ありがと、キョウヘイ」
『あれ? ここは男子寮なのに女の声がするな?』
「ヤバい、寮館だ。早く隠れないと」
「隠れるったってどこによ」
「とりあえず一緒にここに!」
『ん〜? 声がするのはこの部屋かな〜。ポチっとな』
「早く早く、寮館の指紋なら全部屋の鍵開いちゃうから」
「あ〜、ちょっと近いわよ」
――ガチャ――
『あら、今この部屋に女の子いなかった?』
「い、いいえ! あ、そうだ。さっきアダルトな物観てたから。ほらっ、こ、これ」
画面一杯に繰り広げられる裸体。ちょうど昨日観ていたままだった。
(ちょっと、なんてもん観てんのよ!)
一緒にベットに入っているリカから、思いっきりみぞおちに拳が入った。
「ごふっ!」
『あらあら、若いわね。でもわざわざ見せなくてもいいわよ。適度に抜きなさいよ』
――ガチャ――
「ふ〜、助かったぁ」
「助かったぁ、じゃないわよ! なんなの? この動画」
「い、いや、ケンジから流してもらって」
「あんたら、同じもん観て興奮してるの? いや、なんだか気色わる〜」
「ち、違うんだ。来るべき日のためにちゃんと勉強を」
「そっか、私のためなんだね」
「そ、そうなんだ。全てはリカとの為に」
「んなわけあるか〜。私というものがいながら! こんなババァどもで興奮しやがって!」
――ガチャ――
『あら、なんで女の子が男子寮にいるんでしょ?』
その後、俺達は寮館の若い頃の武勇伝を朝方まで聞かされるハメになってしまった。