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自殺ショー  作者: 灰色の猫
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三日目


「それじゃあ、明日は記録日なので夜更かししないように」


 先生が一日の終わりをこう締めた。明日は記録日か。月に一度のこの日が、だんだんと早く感じる。


「よっしゃ〜、キョウヘイ! どこか遊びに行こうぜ!」


「ケンジごめん、却下」


「ガーン、もうちょっと考えてくれたって」


「効果音は自分でいうもんじゃないよ」



 記録日とは、国によって定められた日の事で、その名の通り、記録する日。記録するのは自分の身体と記憶。トンネル型の機械に入り、全身をスキャンする。この時に身長体重はもちろん、各臓器のサイズも測られる。蘇生される際に、限りなく誤差のない身体を造るために。記憶、というのはこめかみに埋め込まれたチップを渡し、それをデータとして保存する。そして蘇生される際にデータをインプットさせ、記憶もそのままな身体が出来上がり、蘇生完了となる。これらをするために特定の病院まで行く事になる。記録日は県や自治体によっても、混雑を回避するためにバラバラだ。そしてこれは義務。



 永遠に近い命を手に入れたかわりに、記憶までも国に管理されている。



 その後、リカのお誘いも回避して、就寝した。もし今日、リカとセックスをしたら、その記憶はチップに記録され、国に管理される。そしたら、僕は一生童貞には戻れなくなる。なんて下らない事を考えながら夢をみた。


 リカの夢だった。とにかく気持ちが高まるのだけは覚えていて、僕は少し早めに起きてしまった。パンツが汚れたからだ。この話を彼女にしたら、喜ぶのだろうか。それとも怒るのだろうか。寒気を感じながら、パンツを洗いまた眠った。




「キョウヘイ! しりとりしようぜ、しりとり!」


「たかだか記録日の移動だけで、テンション上げるなよ、ケンジ」


 僕らはクラスごとに大型車両に乗って、記録を担当している病院に向かっている。




「オハヨウゴザイマス。ヨウコソ、オマチシテオリマシタ」


 出迎えた機械人間は、相変わらず人間そのものだった。ただ、独特の訛りはやっぱり違和を感じた。


「ソレデハミナサンノチップヲカイシュウイタシマス」


 白衣を纏った女性型の人間は無駄に出るとこが出てて、嫌でも目がいってしまう。


「ちょっと、あたしで興奮しないで機械なら良いの?」


 眉間に皺を寄せたリカが詰め寄ってきた。いいえ、ちゃんと興奮しますから。安心してください。



 記録自体はクラス全員合わせても、三十分もかからない。


「キョウハゴキョウリョクアリガトウゴザイマシタ」


 蘇生の際に使用される新しい身体は、今見送ってくれた機械人間となんら変わりはない。彼女らには記憶がないだけ。決められた仕事をこなすための最低限の情報しかない。僕が仮に死んで蘇生された場合、彼女達とまったく違うと言えるのだろうか。無駄に強調された胸やお尻をケンジと語り合いながら、今日の記録を終えた。

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