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「フラン様、お聞きしたいことがあります」
散々泣いて、ティッシュで拭きすぎたせいで痛む鼻を気にしながらそう聞いた。
「なに?」
「と、とりあえずその撫でるのは止めませんか?」
「せっかくまた会えたのに、駄目なの?じゃあこうするね」
そう言うと撫でる手は止めてくれたものの、私を抱きしめて肩に顔をのせる。よっ、余計恥ずかしくなった!
「で、聞きたいことってなに?」
「……ひっ」
耳!耳元で喋るから変な声出ちゃった!恥ずかしさのあまり真っ赤になった顔を見られたくなくて、私の肩から顔を避けたフラン様の肩に次は私が顔を埋めた。
「あれでしょ、何で姿が違うのに僕が君をイルミナだって分かったのかでしょ?」
「他にもありますけど、それもあります!私は前世と同様に平凡な顔ですけど、フラン様は髪とか瞳の色以外は前と変わらないですよね」
とにかくそれが不思議で、肩から顔を上げてまじまじとフラン様の顔を見る。相変わらず睫毛は嫌味なくらいにフサフサだし、毛穴なんて無くて肌はツルツルだ。あれ、腹が立ってきた。
「確かにイルミナも凛子も顔は平凡だけど、でも性格は全く変わってないからすぐに分かったよ。雨の日に傘を一本しか持ってないのに友達に貸したり、馬鹿だよね」
何でそれを知ってるんだろう。それに、もしかして貶されてる?ってそうだよ!フラン様は私を嫌いなんだから。きっと前世の知り合いに会えて嬉しかったから優しくしてくれたんだろう。これ以上近くにいるのは不快だよね……。
とりあえず離れようと思ったけど、フラン様が私を抱きしめたまま離してくれそうにない。
「あ、あの。そろそろ離してくれませんか?」
「急にどうしたの?」
「どうかしているのはフラン様です!私のこと、その、お嫌いでしたよね?」
そう言うとフラン様は抱きしめるのをやめてからじっと私を見た。その表情はちょっと怒っているようにみえる。
「何でそう思うわけ?君のことが嫌いなら僕は君を探したりしない」
「……探す?偶然転生先が同じで、偶然お互い前世の記憶があって出会ったわけではないのですか?そもそも転生って、フラン様死んでしまったのですか?!もちろん、老衰ですよね?」
病気だとか誰かに殺されてしまっただとか、嫌な想像をしてしまい蒼ざめる。フラン様のお家は色々と問題があったそうだし、前世では幸せになってから亡くなられたのかな。できれば私が幸せにしたかったけど、死んじゃったしね。
そう思っていると、フラン様は呆れた表情を浮かべながら口を開いた。
「質問多すぎ。とにかく僕は君が好きで、君も僕が好き。それで良いじゃん」
なんだか色々誤魔化された気もするけど、初めてフラン様に好きだって言われた!
そもそも今生きていること、またこうやってフラン様に会えたこと、そして両思いなことはまさに奇跡だから。
「フラン様、大好きですっ」
いつ死んでも後悔しないように、私もそう思いを告げた。