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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

BL短編集

友達はいらない

作者: 藍上央理

<プロフィール>

商業では粟生慧で執筆しています。

おもに電子書籍ではBL中心です。

商業の内容はほぼエロです。

「あけおめ~」

 新学期早々、俺の机に乗り出すようにして、木庭きばが話しかけてきた。

「あけおめ」

 言われた言葉をそのまま返してやる。

「年賀状何通来た? 俺の年賀状届いた?」

 木庭がにやにやしながら、机に頬杖を突いて聞いてきた。

「来た」

 木庭の年賀状だけ来た。それも裏が白紙。

「でさでさ、あぶってみた?」

 何のことかわからない。あぶる? 俺が不思議そうな顔をすると、木庭が途端に眉をへの字に下げた。

「ええー、あぶらなかったの? 小学生の時やったじゃん」

「年賀状を白紙で出してたのか?」

「違う違う! ほら、ミカンの汁でなんか書いてさー、年賀状出したりしなかった?」

 俺の記憶の中でそういうことをしたことがなかった。俺が怪訝な顔をしているのを見ると、木庭はため息を吐いた。

「だから、小埜谷おのやの年賀状も、裏に秘密のメッセージが書いてあるの!」

 それを聞いて、俺は木庭を面倒くさいヤツだと思った。それが顔に出ていたのか、木庭が唇をとがらせて不満を漏らす。

「普通さぁ、変な年賀状来たらメールとか、電話で聞いたりしない?」

「いや」

「おかしいと思わなかったの?」

「白紙だなと思った」

「変だろ! 変だと思わないの!?」

 俺は困ってしまう。変だとかおかしいとか思う前に、俺に年賀状なんて出すヤツは木庭しかいない。クラスの連中が俺を遠巻きにしている中で、木庭だけが俺にかまってくる。

 俺が何でクラスの人間から避けられてるか知ってるだろ? 俺は声を出さずに心で呟く。

 あいつ、男が好きなんだって。

 中学の時に一大決心して告白したら、クラス中にばらされていじめられた。必死で県外に進学したら、高校に知り合いがいてあっという間に噂が広まった。

 木庭だって知らないはずがないのに、クラスが一緒になって数日で俺につきまとうようになって、一方的にアドレスとか住所とか教えてきた。

 差別しない人間ですとか言いたいのか。

「元から変なんじゃないのか?」

 俺は口元を歪めて言った。

 それを聞いて、木庭が肩を竦める。

「しょうがないなぁ……」

 まだ、時刻は朝礼前。今日はこの後、全校集会があって、新年の挨拶から始まり小テストで終わりだ。それまでつかの間の自由時間。クラスは久しぶりの顔ぶれと肩寄せ合って話に夢中になっている。俺たちに視線を向けるようなこともない。

 だから、きっと、木庭が俺の耳元に口を寄せて、「好きって書いたのに!」と囁いたのも、誰にも聞こえなかったに違いない。

ご感想お待ちしております。

なお商業収録作品は除外しております。

「キミイロ、オレイロ」

「悪徳は美徳」

「不確かな愛を抱いて」

「甘い蕾を貫いて」

「山神様といっしょ!」

関連作品のみ。

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