約束なんて知らない
突発的に思いついて勢いだけで書きあげたので設定は穴だらけ。
スルースキルを最大限に発動させてください(笑)
「いや~!絶対に嫌!そんな約束知らないから~!!」
頭から布団をかぶり、絶賛拒絶中です。
え?何にって?
部屋の真ん中に置いてあるテーブルの上にある白いマンジy……
もとい、異世界人からの申し出にです。
彼(一応性別があるらしい。本人は猫の姿を借りていると言っているが私にはただの白いマンジュウにしか見えない)が言うには10年ほど前、私は彼と約束をしたらしい。
え?なんの約束かって?
うーん、ぶっちゃけお約束事ですよ。
『いつか迎えに来るから待っててね』
という。
しかし、私はそんな約束をした覚えはない!
10年ほど前の出来事で日常生活に影響を及ぼしたのは、ほんの数か月ほど姉が拾ってきた怪我した白い子猫の面倒を見たことくらいだ。
それ以外は朝起きて、母の変わりに朝食を作り、学校に行って、友達と少し遊んで、洗濯物を片付けて、夕飯のお手伝いをして、お風呂入って、宿題やって、姉の我儘を我慢して受け止めて、寝る。
その繰り返しだった。
あの白い子猫がいた数か月は子猫が私の中心だった。
何をやるにもまず子猫を優先させていたくらいだ。
『だから、その子猫が俺だって言っているだろうか!』
目の前の白いマンジュウ…もとい、アレク・サンド・ライト(彼の名前らしい)が毛を逆立てながら怒鳴る。
あ、威嚇していると本物の猫みたい…
……じゃなくて!
「面影全然ないじゃん!あの子はもっとかわいかったし、瞳の色も薄紫だった!あんたの瞳、緑じゃん!」
『しゃーねーだろうが!今回はこいつしか体が空いてなかったんだから。あいつはとっくに死んでたし……』
「へ?」
『俺達は異世界に自分の体で来れないんだよ。その世界の動物を媒体にしないと行動できないの!10年前は死にかけていたあいつに無理やり入ったからな……今回はあいつに似ていた体に入っているんだ!』
「なんで人じゃなくて動物なの?」
『人間の体を借りようとすると俺達と本来の持ち主の魂が反発して持ち主の人間の寿命を大幅に縮めてしまうんだ。原因は現在研究中。だけど動物だとあっさりと乗り移れるんだ……ってこんな説明はどうでもいい!維美!俺の国に来てくれ』
一応説明してくれた白マンジュウ……もとい、アレク。
説明はしてくれたけど、私は行くとは一言も言っていない。
頑なに布団から出てこない私にアレクは盛大なため息を吐いた。
『ちっ、本当はこんなやり方したくないけど……マカ、そこにいるんだろ?』
『はい、ここに』
突然何もない所から黒い猫が現れた。
うん、今回のはちゃんと猫に見える。
『維美を強制的にあっちに連れて行く』
『え?本気ですか?』
『(俺的には)一刻を争うんだ。手を貸せ』
『うーん、まあいいか。維美様の力は無限にあるみたいですから大丈夫でしょう』
なにやらこそこそと話している二人(?)から視線を少し離した途端、周りの景色が変わった。
先ほどまで私の部屋だったのに……
今はだだっ広い場所にいる。
数段高くなっている場所から見目麗しい男女が私を見下ろしている。
慌てて周りを見回すと私の隣に白髪の男性と黒髪の男性が立っていた。
「ただいま、戻りました」
黒髪の青年が膝を折り、深々と頭を下げると上段にいる男性が小さく頷いた。
「御苦労。して、マカ」
「はい」
黒髪の青年が返事をしたということはこの人が『マカ』なのだろう。
ということは……もう一人の白髪の青年は……
いや、今は詮索するのはやめよう。
なんかとてつもなく嫌な予感がするんだよ……
今すぐ逃げ出したいくらいに……
「その者が異界の巫女で間違いないのだな」
「はい、維美様のお力は陛下方も感じていらっしゃるでしょう。維美様がこの国に降り立った瞬間に大陸の隅々まで陛下の力が沁み渡っております」
「ふむ、歴代の巫女以上の力を感じる……これでこの国…世界も安泰だな」
私の事を完全に無視して話が進んでいる。
だが、なぜか声が出ない。
出そうと思ってもなぜか発せられないのだ。
その後、私は簡素ながらも広い部屋に連れて行かれ、体を洗われ、着替えさせられた。
「維美、入るぞ」
ノックと共に入ってきたのは白髪の青年。
警戒心を最大限に引き出し睨みつけると白髪の青年は苦笑しながらソファに座る様に促した。
「声が出せなくて困っているんだろ?」
白髪の青年の言葉にコクコクと頷く。
「心配しなくても1~2日で声が出せるようになる。強制的に別次元の世界に移動した影響だ」
白髪の青年はアレクと名乗った。
あの白マンジュウの本来の姿だという。
顔立ちが整っていて二次元のイケメンだ。
素直に言えば現実離れした美しい顔立ちをしている。
瞳は光の加減で青から緑に変わって見える。
アレクはこの世界の王族の一人だったという。
王位継承権をとっくの昔に放棄して、臣下の立場に下っているという。
私には関係ないが……
「維美、自分は関係ないと思っているかもしれないけど……無関係ではいられないぞ」
「?」
「お前は陛下の力をこの世界全体に広げた異界の巫女で、神官長である俺のパートナーだからな。証もついているしな」
「????」
「その耳と尻尾と胸元の痣」
アレクが私の頭を撫でるとくすぐったい。
耳の裏を撫でられているような……
ん!?
なんで頭を撫でているのに耳の裏を撫でられた感じがするんだ!?
「それに、こんなきれいな尻尾は初めて見る」
先ほどからお尻のあたりがモゾモゾするなぁと思ってみてみたら……
尻尾が生えていた。
私の髪と同じ栗毛色の尻尾が……
猫のような長い尻尾が……
さっきまでなかったよね!?
普通の人間だったよね?
なんで?
なんで、猫耳と尻尾が生えているんだ~!?
夢か!?
これは夢だな!
夢に違いない!
寝て、次に起きた時は自分の部屋に……
「維美、現実逃避しているところ悪いけど、これは夢じゃないよ。現実」
アレクの手が尻尾を握る。
アレクの手が動くたびに変な気分になる。
触られれば触られれるほど気持ちよくなってきて、触って欲しくないという思いと、もっと触って欲しいという思いがせめぎ合うのだ。
「さて、もっと触っていたいけどそれは今度の楽しみにしておこう」
「?」
突然尻尾から手を離したアレクを見上げると彼はにっこりと微笑んで
「その耳と尻尾を取る方法の手続きをしようか」
ん?
これ取れるの?
「ああ、その耳と尻尾は”乙女”の証拠だからね。それさえ……」
「!?」
アレクから遠ざかろうとしたら腕を取られ逃げられない。
「逃げようとしても無駄だよ」
満面の笑みを浮かべるアレク。
背中に嫌な汗が流れる。
「維美の初めてはぜーんぶ、俺が貰うって『約束』したからね」
そんな約束知らない!と全力で首を横に振るがアレクは神々しい笑顔を浮かべる。
「ちゃんと『約束』の印があるから俺から逃げれないよ。その痣は王族のファーストキスを捧げた相手であり、なおかつ生涯の伴侶だと認められると現れるモノなんだよ」
私の胸元にある小さな猫型の痣に触れる。
アレクに触れられると電撃が走ったように体中が痺れた。
「ふふ、感じたんだね。相性がいい証拠だ。あとでた~っぷり可愛がってあげる。でも、その前にいろいろと手続しなきゃね」
神々しいのにどこか黒いオーラを感じるアレクの笑顔。
そして、なぜか逃げられない私。
その後……私はアレクの伴侶として生涯をこの世界で暮らすことになる。
まあ、時間を掛けて絆されたわけである。
元の世界に『石野維美』としては二度と戻れないと言われたのも要因の一つだけどね。
***
-維美がアレクを受け入れた数日後のある日のアレクとマカの会話-
「アレク様」
「ん?どうした。マカ」
「いくら維美様を繋ぎ止める為とはいえ、維美様だけにしか見えない(触れない)魔法を使うなど……バレたらどうされるつもりだったのですか」
「大丈夫!維美の性格からしてあの猫耳と尻尾を見られるのは恥ずかしすぎて部屋から出ないことは予測済みだったからね。部屋付の者だけにアレが見える様にしていたから実際ばれなかっただろ?」
「…アレク様のその無駄な魔力を仕事に使っていただけると陛下も助かるのでは……」
「いやだね。なんで幼い頃に無理やり異世界に放り出して殺そうとした人の為に力使わなきゃいけないんだよ。維美の為ならいくらでも使うけど♪」
「分かりました(よし、維美様にすべて話して協力していただこう)」
その数日後
異界の巫女に殴られ頭から血を流しながらも嬉しそうに仕事をしている上司(神官長)を遠巻きにする部下(神官)達の姿が見れたとか見えないとか……
本文内に入れられなかったので小話(前日&後日談)
マカ「異界の巫女が見つかりました」
アレク「ふ~ん」
マカ「以前、アレク様がお世話になった方です」
アレク「は?」
マカ「アレク様のファーストキスの相手で、アレク様が勝手に迎えに行くと約束した方です(言葉が通じてないから約束とは言えないけどな)」
アレク「なんだと!?今すぐ迎えに行く!」
国王「おーい、アレク…って何やっているんだ?」
アレク「異界の巫女を連れてくる」
国王「その前にこの…」
アレク「見合いは全て断ってください。俺の伴侶は『異界の巫女』だけです」
国王「……は?」
アレク「では行ってきます」
マカ「え?アレク様お待ちください!」
アレクとマカの姿が消えると後に残された国王は深いため息をつく。
国王「まあいいか。異界の巫女は王族の力を増幅することはあっても滅ぼすことはないからな。しかし、本当にあの子が異界の巫女になるとは……王妃の予言も侮れないな。もっとも王妃の玩具にならなければいいのだが……」
国王の懸念はその後現実となる。
王妃VSアレク(王弟)の逸話は数百年先まで語り継がれるのであった。
維美「やっぱり約束なんてしてないじゃないー!アレクのウソツキー!」
マカからすべてを聞いた維美が異界に来てからずっと優しくしてくれていた王妃に泣きつき、王妃VSアレクの争いが起きたのは当然の事だと城の者達全員が思った事だった。




