1話―――間抜けな天使
重いような軽いような、なんだか自分でも分からないです。
「神の権限をあげようか?」
朝起きたらいきなり言われた。なんか、綺麗な姉ちゃんが言ってきた。
「は?」
何を言ってるんだ?こいつ。
ん?待てよ……
こいつどこから入ってきたんだ?
ていうかおい、ちょっと待て、羽生えてねえか?
夢?
「あ、ごめんなさい、いきなり言っても訳分からないですね、仕事なんですよ。えっとですね……」
「ちょい待ち、あんた誰? どこから入ってきた? 何で羽生えてるんだよ? アクセサリーか?」
「え? あ? うー、すいません、いきなり沢山質問されても……」
あー、しまったな、すぐに質問攻めするのは、俺の悪い癖だ。
「ああ、悪い。あんた誰?」
「僕はですね、天使のエディです! 天使、天の使い、神様の使いですよ! すごくないですか?!」
「ああ、すごい、すごい。」
「何ですか?! その、変な人を見る目は!」
「だって、いきなり家に押しかけてきて、自分は天使だ! なんていう奴は『変な人』だろ?」
「う…… でもですね、僕は天使なんですよ! アイアムエンジェル!」
「英語で言おうが、変な人だろ、羽のアクセサリーまで付けて。」
「あ! アクセサリーとか言いましたね? これは正真正銘、僕の体の一部なんですよ! 引っ張ったら痛いんですよ! 引っ張ってみます?」
「どれ。」
引っ張ってみっか。
手触りは、実際に羽を触ってみたことは無いが、落ちてる羽なら小さい頃拾ったことがある。
それの手触りと、艶々した絹のような手触りをたして二で割ったような、集めたような、ふわふわした、実体の無いような感覚、骨も何も無い、変な感じだった。
「ひ、や、あ、くすぐったいですよ! 引っ張るんだったら早くして下さいよ! あ、ちょっ、そこは、ひあっ!」
ならグイッと。
「あたたた、痛いですよ! 何するんですか、くすぐったくて、痛かったじゃないですか!」
「あんたが、引っ張れって、言ったんだろ?」
「あ、そうでした、でも、あまりにも引っ張りすぎですよ! 痛かったです!」
プクーっと頬を膨らませて、怒る……なんて名前だったけか? ……姉ちゃん。
「悪い、悪い。」
「全然反省してない声ですよ?」
「痛いのは、あんたも同意の上だろ? 大体、引っ張れって言って、引っ張られていたいたあ、どうゆうことだよ? 俺が攻められる筋合いは無いぜ?」
「うー……」
「まあ、じゃあ、その羽は本物だってことにしといてやるよ。で、どこから入ってきたんだ?」
「さっきも言った通り、私は天使なのですよ! 天の使い、神様の使いなのです! 住居侵入くらい訳も無いことなのです! アイアムエンジェル!」
「なぜ英語で言う……?」
「なんとなくです!」
「そうですか、さすが天使さん、すごい、すごい。」
「また、感情のこもっていない声!」
「だってすごいと思ってないしさ、感情なんてこもらんって。」
「だって、天使ですよ? すごいと思わないんですか?」
「本物って証拠は?」
「だってさっき引っ張ったじゃないですか!」
「演技かもな。」
「僕がそんなに器用に見えますか?!」
「見えない、でも、そんなにすごい天使様なら、そのくらいの演技、簡単じゃないか?」
「本当に天使なら、演技すること無いじゃないですか! 矛盾です、矛盾!」
「お前……間抜けの割に鋭いな。」
「間抜けって、間抜けって何ですか?! 間抜けって! 間抜けなんかじゃないですよ!」
「あんたがどう思おうが、俺のあんたに対する第一印象は、『間抜けな変な奴』だ。」
「僕は、変でも、間抜けでもないんです! 天使ですよ! 何回言わせるんですか、まったくもー」
まったくもー、なんて言われてもな……
「まあ、じゃあ、自称天使さんの、用件は?」
「自称じゃなくて、本物です!」
「どっちでもいいから、用件は?」
「どっちでもよくないです!」
「はあ、じゃあ、訂正しますよ、自称じゃありません、で、用件は何だよ?」
「そうなんです、スカウトに来たんですよ! 神様になりたくありません?」
「さっきから思ってたんだけど、頭大丈夫?」
「うー…… じゃあ、なんて言ったら信じてくれるんですか?!」
「うーん、じゃあその『天使のすごいパワー』ってのを見せてくれよ。」
「いいですよ? あ、でも、本当は見せちゃだめだから、内緒にしといてくださいね?」
「まあ、自分からは言わんさ。聞かれたら正直に答えるけどな。」
「えー?! 駄目ですよ、ばれたらそれはもう、ひどい目に……」
「ひどい目って?」
「それはですね、僕は前に、お尻を叩かれました…… 痛かったです…… その前は、神城全部のトイレ掃除でした…… 臭くて大変でした……」
何? そのコミカルな罰。
「でも、俺は嘘はつかない。」
「なんでですか?」
「俺のポリシーに反するから。 真実を全て言わないで、相手が勘違いするのはいいけどな。」
「そうなんですか、偉いんですね、でも、信じてくれないと困るので、見せますよ、何をして欲しいですか? 大体のことはできますよ。」
「じゃあ、そうだな……」
何にしよう……
自分のことは自分でやれ、しなくてどうなっても、俺は知らん!っていう、頑固爺の教育が身に染み付いてるからな、いきなり、なんでもしてやる、って言われても、して欲しいことが思い浮かばない……
「どうしました?」
「……思い浮かばないので、なんか適当にやってくれ。」
「じゃあ、マジックでもしますか? どんなのをして欲しいかはあなたが言ってください、僕がどんなのをやるか決めても、種があるとかいわれても困りますし。」
そこまでは言わねえけどな……
「じゃあ、とりあえず、衣装を変えたらどうだ? その背中を無駄に出して、寒そうな格好をやめたらどうだ?」
「天使には、暑いとか、寒いなんてことはないのです! 自分の周りを、天使の力であっためてるんですよ! でも、マジックするんだったら、スーツみたいなのがいいですよね、はい!」
「おお!」
自称天使が、一瞬光ったかと思うと、なんか、マジシャンが着ているような、スーツに変わった。
「すごいでしょ? じゃあ、手から木でも生やしましょうか?」
本当に、手から木が生えてきた、どんどん大きくなって、腕と同じ長さになるか?というところでやっと成長が止まった。
「これで信じます?」
「まあ、認識を改めてやるよ。天使かどうかは知らねえが、とりあえず、なんかすごいって事は分かったよ。」
「僕は天使です! それで、本題なんですけど、神様になりたいですか?」
「まあ、仮にお前が天使なんだとして、俺をスカウトしに来たのだとしたら、嫌だね、俺は神になんかなりたかねえよ。」
「おお! 何でですか?」
「だってよ、何でも思い通りっていうのは、一見良さそうに見えるけど、実際はつまらないと思う。例えば、忙しい日々のたまの休み、これは嬉しいだろう、満喫すると思う。だが、毎日休みだったらどうだ? 変わり映えしないだろう? 生活に張り合いがない、ただ堕落していく一方だ。俺は今、神様とやらから見たら、ただの一人間、というちっぽけな存在だろう、そんなちっぽけな存在の一生なんて、全く気にしないだろう。だが、俺から見ると、かえのない、一回だけの人生だ、もしかしたら、魂というのがあるかもしれない、生まれ変わるのかもしれない、だけど、一般的なの説によると、記憶は記憶は引き継がれないらしい。人体の仕組み、という観点だと、記憶、と言うのは、この脳みそに記憶されるらしい、俺は、魂だとか、生まれ変わるだとかのことは分からないけど『人生は一度』そう考えている。だから、楽しむ。そんな張り合いのない生活は嫌だ、と思うから、俺は神になんかなりたくない、って訳だ。」
「おおー! 嫌だ、って言う人を連れて来い、って言われたんですよ!」
「なに?! じゃあ、こっちの意思は無視で、あの質問は神様スカウトの抜き打ちテストって事か?」
「そういうことらしいです。まあ、張り合いがなければ、張り合いのある生活に変えればいいってことで、行きましょう!」
「ちょ! 待てよ! そしたら俺がいなくなるだろ? そしたら変だろ? どうすんだよ?」
「あなたのコピーを置きます。記憶も、性格も、そっくりです。もちろん、私とあった記憶は消しますけどね。ほんの少しの誤差はありますけど、本人じゃなきゃ分からないくらいの誤差ですから、大丈夫です。」
「・・・」
なんだか複雑な気分だな……
自分のコピーっつっても、自分じゃない奴が、俺になりすますんだ、本人は元から自分が本物だと思い込んでるんだろうがやっぱり変な気分だな……
「作業は済ませました! さあ、行きましょう!」
「おい、待て」
「なんです?」
「どうせ抵抗しても無駄なんだと思うからべつにしないけどよ、理不尽じゃねえか?」
「カミサマなんて皆理不尽ですよ、この世界のカミサマは自分の都合で世界を捻じ曲げたり、人の命を奪ったりしないだけ、ましなほうですよ、もっとひどい世界なんかそこらじゅうにあります。さあ、行きましょう。」
ずっとニコニコしていたのに、今は悲しそうな表情でこう言った。嘘をついているようには見えない。
「しょうがねえな、腹括るか! でもよ、最後に一ついいか?」
「何ですか?」
「お前の名前なんだっけ?」
「エディです!」
これからはこんな感じでエディと、直矢(主人公)の掛け合いが続いていくと思います。
エディのことは、知ってる人なら知っている筈。




