10話――鬼灯の天使
「さて、鬼灯んとこ行くか。」
俺達は今、最高神の城を出て門の前にいるところだ。
「ですね。」
「世界の創り方、とやらを教わりに?」
「そうだな。」
「いやー、しかし今日はいい日だ! 可愛い天使が起こしてくれるし、可愛い女神様が起こしてくれるし!」
「いや、鬼灯は起こしたわけじゃないと思うぞ?」
「細かいところは気にしない!」
「まあいいけどよ……」
「そういやさー、あのリラさん、あの人……いや、天使か、まあ、どっちでもいいけど、ドSだね! 絶対!」
「まあ……そうだろうな。」
そんな感じはするにはするな。最高神が尻に敷かれてる感じがでまくりだった。
……でも、何で最高神はリラさんに頭が上がらないんだ? 具現化とやらを使えば余裕だろ?
「最高神もあれは案外面白がってる部分あると思うね、最高神サマの高尚な考えは分からないけど、長く生きてたらああいうじゃれ合いが楽しいんじゃないかな?」
「……会話自体は面白い部分もあると思うが、あのパンチはじゃれ合いのレベルじゃなかったぞ?」
「うーん……まあ、最高神も僕と同じように何でも楽しもうとしてるんじゃないかな?」
「そうだろうな、あいつは何でも楽しむ、っていうある種の境地に達しているような達していないような……まあ、俺の結論としては正直どうでもいい。」
「それもそうだ!」
「っと、いたいた。……本当にずっと寝てやがる……」
「女の子の寝顔って可愛いよねー」
「おーい! 起きろー!」
澄也は無視して鬼灯を起こす。
「ふぇえ? ……ああ、直矢君か、おはよ!」
「おう、おはよう。」
「あ、エディちゃんに……そういえば名前聞いてなかったね、何て名前?」
「あ、そうだね、僕は澄也っていうんだ、君は……鬼灯ちゃん、だよね?」
「そうそう、何で知ってるの?」
「直矢たちがそう呼んでたからだよ。よろしくね!」
「うん! よろしく! ……あれ、そういえば今何時?」
「俺は分からんな……エディ、分かるか?」
「フフフ……仕事で支給された時計があるのですよ! えーと……7時ですね。」
「ええ?! うわ、やば……糠月に怒られる! ちょっと、一回家に帰るね! ……あ、そうだ! 家来れば? 家って言っても、統治部屋だから、参考にはなると思うんだけど。」
「おお! 鬼灯ちゃん家、いいね! 行こう! 早速行こう!」
「……その前に、糠月って誰だ?」
「ん? 僕の天使だよ。もう一人、夏我智っていうのがいるんだ。糠月、いい人なんだけど、ちょっと過保護なところがあってさ、何も言わずにずっと帰らなかったら……あわわ……」
頭を抱える鬼灯、こいつ、案外駄目なやつだった……というか、天使に叱られるカミサマが多い、ってか、俺が見たカミサマは今のところ全員怒られてる……どういうことだ……?
「ま、まあ、あれだ、俺にカミサマのなんたるかを教えてたとか、そんな感じでいいだろ。」
「そうしよう! ナイス言い訳!」
そうか……?
「よし! じゃあ、鬼灯ちゃん家に早速行こう!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
鬼灯と話しながら真っ直ぐ歩き、市場を抜けた。ちなみに澄也はエディと話している。結構エディの笑い声が聞こえるので、得意の洒落で楽しませているんだろう。」
「結構遠いんだな。カミサマは偉いとか聞くから、市場の中にあるもんだと思ってた。」
「そうなんだけど、最高神サマに頼んでわざわざ少し遠くにしてもらったんだ。なんだか市場の中って落ち着かなくてさ……」
様の言い方がサマに変わったな……まあ、別に気にすることじゃないか。
「そんな事も頼めるのか、結構最高神柔軟なんだな。……いや、それは分かりきってることか。柔軟ってか、最早溶けてるくらいユルッユルだな。」
「そうだねー、楽しい人だけどね。」
「そういや、最高神のことを人って言うのか?」
「あー、そういえばそうだねー、これは、うーん……やっぱり最高神サマのことを身近に感じてるからなのかな?」
「そんな身近に感じるもんなのか?」
「うん、何か僕、結構最高神サマに気に入られてるみたいで、しょっちゅう会うんだよね。で、結構仲良くなってさ。」
「なるほどなー、確かに面白い奴だよな。」
「だね。僕の見たとこ、澄也君も同じタイプだと思うんだ。でしょ?」
「そうだな、あいつもお調子者だからな。」
「でもいいよねー、ああいう人。僕も下界にいたときにこういう人と知り合いたかったなー。何かさー、進学校に行かされちゃってさ、勉強自体は問題じゃないんだけど、クラスがつまんなくてさ、皆休み時間でも勉強ばっかしてんだもん。普通の学校行った方がよっぽど良かったよ。ま、今楽しいからいいんだけどね。」
……つまらない状況で神の力が欲しいか聞かれたら迷わず「はい」と答えてしまうんじゃないだろうか?
鬼灯がスカウトされた時は条件が違かったのか……?
まあ、こんな事考えても仕方ないか。
「そういえば、さっき話してた、夏我智とか、糠月ってどんな奴なんだ?」
「夏我智はねー……まず見た目は、スキンヘッド、って言うのかな? で、直矢君よりがっちりしてるね。キンニクすごいんだよー、あれ、この前なんてね、具現化無しで僕の世界で糠月と僕を担いで走ってさ、速くて面白かったんだ。」
スキンヘッドの天使……
「あれ、そういえば具現化ってカミサマだけが使えるんじゃねえのか?」
「そうなんだけど、大体のカミサマは天使に具現化使用の許可を出すんだ。どのくらい制限かけるかは人それぞれだけどね。ちなみに僕は全く制限かけてないよ!」
じゃあ、エディのあの天使パワーも具現化だったってわけか。
「なるほど、確かに天使が具現化使えないと色々不便そうだもんな。」
「そうそう、カミサマの仕事を分担できないしね。」
「そうか……じゃあ、糠月ってのはどんななんだ?」
「えーと……背が高くて、少し痩せてるかな? 優しいけど、過保護なんだよねー……」
「ほう……そういえば、カミサマの仕事って何なんだ?」
「えーと、基本的には世界を発展させることかな? どんどん強くしなきゃ駄目なんだって。だから、人達が強くなってきたらもっと強いモンスターを出すんだって。」
「なるほど……何で強くするんだ?」
「僕もよく分からないんだけど、魔神って言うのに対抗するためなんだって。」
「魔神?」
「えーとね、確か、純血の魔神一人、もしくは魔神の血を引く人が何人かがいると、具現化が使えなくなるんだって。その他にも、世界を渡る能力とか、魔力や傷の自然回復が異常に早かったりとか、具現化の影響を全く受けつけなかったりとか、具現化が使えなくなる人数の倍いる世界が、二つ存在すると、世界を無理に合体させられたりとか……要するに、具現化が使えなくなっちゃた時の軍隊作り、だね。」
「なるほど。仕事ってそれだけなのか?」
「ううん、そうじゃないよ、最高神サマの指令もあるからね。これも、結構世界を強くするのに関係してたりするんだけどね。」
「指令ってどんなだ?」
「えーとね……大体は異世界転移かな? それで、能力与えれば一騎当千の人ができちゃう、ってわけ。」
「なるほどな。最高神はそれを見てニヤニヤする、ってわけか。」
「そういうこと!」
「ホント、いい趣味してないよな、あいつ。」
「それはそうだねー……でもまあ、色々楽しみすぎちゃって飽きちゃってるんでしょ?」
「だな。」
「そろそろ着くよー」
「分かりましたー!」
「分かったよー」
「分かった。」
「あの角を曲がったとこだよー」
角を曲がると、大きな平屋があった。
「……大きいな。」
「そうだねー、ここはもう郊外だから、土地はいくらでもあるから、作りやすいんだろうね。」
「最高神に作ってもらったんだろ? 具現化とやらを使えば土地を増やすことぐらい余裕じゃねえの?」
「そうなんだけど、そうすると色々歪んでいろんな人に迷惑がかかるから、あまり派手には使わないんだよ。」
「なるほど、あのユルユル頭もそこらへんはちゃんとしてるんだな……」
「ユルユル頭……? あ、糠月だ。ごめーん! この人たちに色々教えてたら遅くなっちゃったー!」
「おお、夏我智! 帰ってきたぞ!」
長身の男が駆けて来た。確かに人が良さそうだ。おそらくこいつが糠月だろう。
「ん? だから大丈夫だっつったろ?」
言いながらスキンヘッドの筋骨隆々な逞しい男が出てきた。
こいつを見て天使だと思うやつはどの世界を探しても一人もいないだろうな……ヤクザだと思うやつは大勢いいるだろうが。
「万が一ということもあるじゃないか。何も無くて良かった……」
「もう、糠月は過保護すぎだよ……僕だってちゃんとしたカミサマなんだから、そうそうそんな事はないって。それにここは何処の世界を探してもそうそうないような治安の良さだよ? 逆に起きたらすごいって。」
「そうか……? それにしても、何も言わずに帰ってこないと心配するだろう? これからちゃんと連絡するんだぞ?」
「連絡って……?」
「この前、通信機渡しただろう?」
「ああ、あれね!」
「今日は何で連絡しなかったんだ?」
「家に忘れた!」
「じゃあ、次からちゃんと持っていくんだぞ?」
「はーい!」
「返事はいいんだけどな……」
「てか、お前ら誰よ?」
スキンヘッドが絡んで……じゃなくて、話しかけてきた。こいつ、柄物のシャツとかきたら完璧にヤクザだわ。
「あ、この人たちはね、えーと……後輩?」
「そんなもんだろ。」
「なるほどな。新しいカミサマってわけか。俺は夏我智っつうんだ。よろしくな。」
スキンヘッドが握手を求めてきた。
でかくて、厳つい手だ……身のこなしからも分かったが、どうやらこいつはかなりの腕前みたいだな……
「こちらこそ、よろしく頼む。」
握手をしながら言う。
「あ、私からも、糠月だ。よろしく。」
糠月も握手を求めてきたので、握手する。
「よろしく頼む。」
「あ、これって僕たちも挨拶した方がいいパターン? えーと、よろしく!」
「おう、よろしくな。」
「ああ、よろしく。」
「僕も……したほうがいいですかね?」
「いいんじゃない? 知ってるでしょ?」
「そうですね、まあ、改めてよろしくです。」
「おう。」
「うん、よろしく。」




