第一章 1-(1)
という訳で去ったと思わせておいて実は去っていなかった、ちょっと前に怪物に喰われかけてた高校生、というか俺の名前は伊波元春だ。と、まあ軽い口振りで言ってみるが詐欺も良い所だ。このようなことを学校の先生がやったら即座に生徒が親へチクって親がPTAにチクってその教師は呼び出しでも食らうんだろう、と特に面白くも何とも無い例えがさらに俺の立場を下げていることに気付いたのでこの辺で言い訳のような何かは止めておくことにしよう。
最初。
映画や小説、漫画に限らず物語において最初は肝心なものである。いや、それらに限らないか。広い範囲に言える。だから高校デビューみたいな言葉もあるんだろうし、やはり何かに限らず最初が肝心だという事は言わずとも分かることだろう。
だがしかし、この物語の最初がそれに準じたものであったかと問われれば俺はきっと、いや、十中八九黙り込んでしまうだろう。
掴みとしては、これ如何に。
御託はこの辺でお暇するとしてそろそろ本題へ。
どうして俺が喰われてしないか、という本題へ。
ではここで問題だ。逆に聞こう。
俺は何故、こうして生きているのでしょうか?
シンキングタイムはほんの少しだけだ。別に、そこまで考え込む問題でもないし、そもそもこんな問題を真剣に取り組む暇な奴なんか俺は一人しか知らない。……まあ、俺自身なのだが。
だからこそ、こんな毒にも薬にもならない問題を出している訳だが。
因みにこの問題を正解した暁には自作の須羽ミツ夫の絵を贈呈しよう。
いいか、オークションに出すなよ!
某アイドルグループの握手券抜いた後のCDのようにオークションに出すなよ!
という訳でどこからか定義していなかったのだがシンキングタイムはここまでだ。定義付けるとしたら――って、どうでもいいか。早速回答の時間にしよう。
正解は「誰かに助けられたから」だ。
残念ながら俺の隠された力が直前になって覚醒した訳でもなく。
どうしようも無く目を瞑ったら実は夢でしたという訳でもなく。
ただ、助けられただけ。
助けてもらっただけ、なのだ。