2-(8)
「いや、ここは世間の流れ的にベムと名乗るべきだったかな?」
「今の偽名なのか⁉」
「いやいや、レムは本名だよ伊波元春。……いひひ」
紛らわしいな。
どこのファミレスに居候する自称一六歳の家出少女だよ。
ていうか
「どうして、お前俺の名前を知っている!?」
そうだよ、どうして知っているんだよ。
このレムとは今、初めて会ったばかりだ。初対面な筈だ!
「いやぁ、さっき名前言ったときは反応してこなかったのに二回目の今になって反応してきたかー。……いひひ」
そうだっけ。
言わずとも分かる通り動揺していたからな。
「いいから、早くどうして知っているのか教えてくれよ」
「そりゃーねぇ」
レムは一度大きく欠伸をする。
ねぇ、今欠伸するところなの?
結構重要な局面じゃないの?
イアと同様、お前も小説向きのキャラじゃないな。
そうして、レムは口を開く。
「あのイアが見知らぬ男と同居していると小耳にはさんだからさ」
「………………は?」
「んで、アンタについて少しばかり調べた訳。魔法少女業界じゃ有名なんだぜーアイツ。何せ、最強であり最凶の魔法少女だからな。封印指定も間近だよ。……いひひ」
よく事情が呑み込めていない俺を無視してつらつらと言葉を羅列して俺の混乱をより強くしていくことをレムは自覚しているのだろうか。
疑問で埋め尽くされていく。
けどこの疑問を羅列する前に一度冷静に考えておきたい。
こいつが、嘘を吐いている可能性だってある。
最強……はまあイアも言っていたが勿論冗談だと捉えていたし、こいつもその冗談を馬鹿みたいに信じて俺に言っているのかもしれないし。
封印指定、なんてワードはいかにも怪しさが漂う。
それに、己の眼で見ていない限りそれを本当だとは信じれないし、信じない。
「信じるか信じないかはアンタ次第だね。私は信じた方が吉だよ、と言っておくけどね」