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(恐らく)少女の姿は見えないが、今は多分両腕組んで頷いてでもいるのだろう。
いい加減その正体を現してくれよ。俺の目の前にさ。
「ていうか早く俺の足元の棒手裏剣をどうにかしてくれ。気味が悪いったらありゃしない」
「ん? ああ」
意外にもあっさりと承諾された。
アスファルトから引き抜くのはちょっとばかり苦労するのではないか――という台詞を頭の中で準備したその瞬間。
足元にあったそれは――消えた。
そう、消えたのだ。まさに消失したのだ。
瞬きをした瞬間に消えていた訳では無い。
確かに、俺は瞬きせずに足元のそれを凝視していた。
まるで、何年も掛けて土の中で分解されていくプラスチックが一瞬で分解されたように、だ。先程とは違う意味でぞっと、背筋が凍ったぜ。
「……いひひ。驚いた? 凄いでしょ、凄いでしょ」
「ああ、そりゃ驚いたさ。手品としちゃ最高の出来だ」
「そりゃどうも。でも惜しいかな、それは手品では無く――魔法、なんだよね」
魔法。
最近、俺はこのワードをよく口にする。その下に少女だの幼女だのと続く場合がほとんどではあるが。
故に思わず過剰に反応してしまい、俺は振り向いた。
するとそこには
「あ、見られた」
不意を突かれた、と言わんばかりの表情をした声通りの幼い容姿の――少女であった。
あれと、イアと同じくらいの年齢の見た目の少女もとい幼女であった。
イアとは違い、夜でも目立つ金髪にあどけなさが残る面持ちだったが凛々しい目が特徴的だった。身に纏っているのは幼女に相応しい白スカートに上は白シャツ。そして再び頭に戻るがそこには頭の大きさに明らかに適していない大きな黒いとんがり帽子があった。
つらつらと羅列したが一言で言わせてもらうとこれはこれで可愛い――という事だ。
この可愛さはイアに匹敵すると言える。
「おいお前。いや幼女」
「幼女言うな。レムだよ」
思わずイアと同じような対応をこのレムにしてしまったがまあしゃーないということで。
レム、ね。イアと同じ二文字か。
ふぅん。