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その後もわがままな子供としつけに明け暮れる保護者のようなやり取りをエンドレスしていると、ついにイアの理性の糸が切れてしまったようで、急に荒々しく立ち上がり口を開く。
「いいから早く買って来てよ! イアはシャンメリーが飲みたくてたまらないんだよ!」
ここまでシャンメリーを求める人間を、俺は初めて目の当たりにした気がする。
「そ、そう言われましても……」
「今のイアはシャンメリー中毒と言っても過言ではない!」
「シャンメリーに中毒性あったのか」
シャンメリーってアルコールないよな、と呟く。
しかしここはどうするべきだろうか。
保護者としては断固無視し続けるべきなんだろうが……。
俺はふと、イアの方に目をやる。
「………………」
ぷーっと。
涙目のまま風船のように頬を膨らませているイアのこの姿は一体どこまでが本気でやっているのだろうか。もう逆にあざとささえ感じるというかこれわざとやっていたら将来かなりの悪女に成長するのではないかと危惧もするがまあ保護者としてはこれも無視するべきなんだろうけど、いや、けど、しかし。
「畜生可愛いな! バイト行くときに見てきてやるよ!」
負けた。
いや、敗けた。
「え、本当に!?」
瞬間、掛かっていた雲が流れて顔を見せた太陽のような輝かしい笑顔を見せるイアの様が俺に決定的なダメージを与えた。
クリティカルヒットだ。
駄目保護者にも程があるぜ。
そんな訳でまんまとイアのお願いを聞き入れてしまった初夏の昼下がりであった。
……いや、正直言って売ってないと思うけど。