悪役令嬢のメイドAですが、お嬢様の婚約破棄を阻止するのも私の仕事です
新作です。
「エルシーさん、現状を報告してください」
私、アメリア・オーシャンの静かな声に、後輩メイドBのエルシーさんが青ざめた顔で答える。
「はいです! ロザリアお嬢様の寝室にて異常検知! ベッドはもぬけの殻! バルコニーの窓が開放状態! 机に『探さないで』という書き置きがありましたです!」
エルシーは肩で息をしながら、今にも泣き出しそうに、私を見つめた。
「想定内です。昨夜、『クロード殿下が婚約者を探す』という噂を聞いて、鼻息を荒くしていましたから」
私は手帳にチェックを入れ、淡々と指示を飛ばす。
「エルシーさんは、他のメイドたちに動揺を悟らせないように朝食の準備を。私がお嬢様を回収します」
廊下を回れば52秒。
だが、窓からなら3秒。
私は窓枠に足をかけ、躊躇なく三階から庭へと飛び降りた。
――『メイドA』。
ここ、サザランド公爵家では、家事全般を担当する有象無象の使用人とは訳が違う。
主人が撒き散らす火の粉を鎮火し、家名の失墜を防ぐ、『危機管理』のスペシャリストなのだ。
◇
屋敷の裏手に広がる森の中。
獣道を大きなトランクを引きずりながら歩く人影があった。
流れるような青髪の縦ロールに、フリルのついた不必要なまでに豪華な青いドレス。
我が主、公爵令嬢ロザリア・フォン・サザランド様である。
「……ったく、重いわね! このポンコツ鞄! やっぱり『クロード殿下への愛のポエム(全十巻)』が嵩張っているのかしら……」
お嬢様がトランクをヒールの先で蹴り飛ばし、悪態をついていた。
その背後に音もなく接近した私は、手帳を開きながら声をかける。
「おはようございます、お嬢様。本日のドレスは『隠密行動』というTPOに著しく不適合ですね」
「ひいっ……!?」
お嬢様が猫のように飛び上がり、振り返る。
私と目が合った瞬間、吊り気味の美しい瞳が、「げっ、アメリア」と如実に物語っている。
だが、すぐに気を取り直したのか、お嬢様は扇子を開いて口元を隠した。
「あら、アメリアじゃない。こんな朝早くからご苦労なことね。でも、残念ながら貴女の出る幕はなくてよ」
「と言いますと?」
「わたくしは今、愛の巡礼……そう、クロード殿下の元へ向かうところなの! 止めようとしたって無駄よ! わたくしの愛は運命さえ超えるもの!」
高らかに宣言する、お嬢様。
私は無表情のまま事実を突きつける。
「殿下への巡礼ですか? いえ、それはただの『家出』と言います。それと案内役の吟遊詩人リュカ氏のことでお話が」
「ふふん、リュカは使える男よ。『僕のコネで殿下に会わせてあげるさ』って! きっと、わたくしの殿下への愛に感動してくれたのよ!」
鼻息荒いお嬢様の目の前に、私は一枚の羊皮紙を差し出す。
「お言葉ですが、彼が感動したのは、お嬢様の『財布の中身』です」
「……え?」
「これはリュカ氏の信用調査書です。借金まみれの詐欺師で、昨夜の酒場で『はっはっは! チョロい金ヅルを捕まえたぞ。これで借金チャラだ』と言っています」
「か、金ヅル……?」
お嬢様の動きがピタリと止まると、扇子がバキリとへし折れる音が森に響いた。
「あんのド三流詩人がぁぁぁ! わたくしの純愛をダシにするなんて、万死に値するわぁぁぁっ!!」
「目が覚めたようで何よりです」
「……やっと殿下にお会いできると思ったのに! 畜生ぉぉぉ!」
お嬢様は地団駄を踏んで喚き散らす。
口は悪いし、性格もキツい。
だが、行動原理の全てが、ここ、アルトリア王国の第一王子『クロード殿下』で構成されているのが、この主の厄介なところであり、愛すべきところでもある。
「理解されたなら帰りますよ。七時からドレスの仮縫い、十時からはマナー講師との面談です」
「ふん、言われなくても帰るわよ! ……でも、足が痛いから歩けないわ」
お嬢様はチラリと私を見て、両手を広げる。
「……アメリア、お、おぶりなさい! わたくしを運べる光栄に浴びさせてあげるわ!」
「ああ、はいはい。光栄で涙が出そうですよ」
私は小さく溜息をつき、お嬢様を背負う。
耳元で、お嬢様がぼそりと呟く。
「クロード様に会いたかったな……」
「すぐに会えますよ。そのためにも、今は家に帰って淑女の修行です」
文句ばかり言いながらも、私の背中で安心したように力を抜くお嬢様。
全く手のかかる主だ。
何せ、私の青春は、この一途すぎるお嬢様の後始末に費やされているのだから。
(ああ……早く引退して、南の島で悠々自適ライフを過ごしたいな)
◇
屋敷に戻ったのは、午前八時過ぎ。
お嬢様の着替えをエルシーさんに任せた後、私は執務室で冷めたコーヒーを啜っていた。
今日も朝の日常は守りきった……そう安堵したのも束の間、廊下越しに、お嬢様の部屋から絶叫が響き渡る。
「アメリア! 早く来なさい!!」
今度は何事かと、私は溜息をつきながらマグカップを置く。
家出の罰として、今日のおやつを『乾パン』にするつもりだったが、その通達をする暇もなさそうだ。
部屋に入ると、クローゼットの中身が全て床にぶちまけられ、その中心で、お嬢様が一枚のカードを握りしめて震えていた。
「アメリア、これを見なさい! たった今、王宮から届いたものよ!」
お嬢様が差し出してきたのは、金色の箔押しがされた招待状だ。
『季節外れの仮面舞踏会 〜隣国よりクロード殿下をお迎えして〜』
「今夜よ! 今夜、クロード殿下が王宮にいらっしゃるのよ!」
「はあ、それが何か?」
「決まってるじゃない! 家出に失敗しても、わたくしの愛は揺るがないの! 直接会いに行って、この想いを伝えるのよ!」
私は頭痛を覚えた。
今しがた家出に失敗したばかりだというのに、このメンタルの回復速度はどうだ。
この一途すぎる想いだけは評価に値するとも言えなくもないが。
「お嬢様、謹んで申し上げますが、今は謹慎処分中でございます。夜遊びなど、旦那様が許しません」
「ふふん、お父様なら領地視察で不在よ! 今の間に殿下にお会いして結婚の約束を取りつければ、こっちのものだわ!」
懲りない人だ。
お嬢様は床に落ちていたピンク色のフリル全開のドレスを拾い上げ、ポーズを決める。
「見てなさいよ。今夜こそ、わたくしの魅力でクロード様をメロメロにして、サザランド家の将来を盤石にして差し上げるわ! おーほっほっ!」
お嬢様の言う「メロメロ」が過去の統計データ上、「ドン引き」または「政治問題」に変換される確率は99%だ。
だが、今さら止めても無駄だろう。
窓から飛び降りてでも行こうとするはず。
ならば、私の仕事は一つ。
私は懐中時計を確認し、瞬時に脳内で今夜のシフトを組み直す。
「承知いたしました」
「え、いいのね!?」
「ただし条件があります」
「……条件って、何よ?」
「そのピンクのドレスは却下です。センスが壊滅的ですから、私がコーディネートします」
私は床に散らばったドレスの山から、深紅のベルベット生地の一着を引き抜く。
お嬢様の派手な顔立ちには、パステルカラーよりも原色の方が映える。悪役顔なのだから、それを活かすべきだ。
「それと会場では私の指示に従っていただきます。今夜の任務は、クロード殿下への求愛の突撃ではなく、『家名の保全』ですから」
――夜会。
それは貴族たちの戦場。
そして私、メイドAの主戦場でもある。
「さあ、お嬢様。最高に美しく、そして最高に『無害』な淑女に仕上げて差し上げます」
「何よ、その目は……。わ、分かっているわよ! 指示に従えばいいんでしょ!」
◇
夜の帳が下りる頃、サザランド家の馬車は王宮の前で止まる。
今宵は『仮面舞踏会』。
素性を隠した貴族たちが、一夜の遊戯に興じる社交場だ。
ロザリアお嬢様は深紅のドレスに身を包み、扇子で口元を隠しながら震えていた。
武者震いではない。
極度の緊張によるものだ。
「うぅ……アメリア、気持ち悪いわ……」
「お嬢様、仮にドレスを汚した場合、クリーニング代はお小遣いからの天引きとします」
「鬼! 悪魔!」
私はお嬢様の背中をさすりながら、今朝の出来事を思い出す。
出発の一時間前。
支度を終えたお嬢様が部屋を出た後、私はいつものように『日課』を行っていた。
それは、お嬢様の書き物机の横にある、豪奢なゴミ箱の中身を確認することだ。
中には、くしゃくしゃに丸められた羊皮紙が、無造作に捨てられている。
私はそれを毎朝拾い上げ、丁寧に広げる。
『怖い……夜会なんて怖い。
また「悪役令嬢」って笑われるのかな?
でも、殿下に会いたい。
もし会えたら「素敵な夜ですね」って言いたい。
「ダンスを踊ってください」って言いたい。
私の手を取って優しく微笑んでほしい。
他の誰かじゃダメなの。クロード様、貴方じゃなきゃダメなの。
頑張れロザリア。負けるなロザリア。
私はサザランド家の娘なんだから、胸を張るのよ!
(以下、うさぎが泣きながらガッツポーズしている下手くそなイラスト)』
インクが滲んでいる。
書いている途中で怖くて泣いたのだろう。
「これがあるから辞められないんですよね」
私は小さく呟き、その紙を綺麗に畳んで、懐の『厳重保管ファイル(鍵付き)』にしまった。
我が主、ロザリア・フォン・サザランド。
外面は悪役令嬢で有名だが、実のところ、中身は人一倍臆病で、誰よりもクロード殿下を愛している不器用な少女。
緊張が限界を超えると、防衛本能として、口から「罵詈雑言」が飛び出してしまう不具合さえなければ、とっくに結婚できているはずなのだが。
◇
私はハッとして気を取り直す。
会場の扉が開かれ、煌びやかなシャンデリアの光が降り注ぐ。
その瞬間、お嬢様のスイッチが切り替わる。
背筋がピンと伸び、顎が上がり、周囲を見下すような『氷の薔薇』の表情に変わった。
「行くわよ、アメリア。わたくしの引き立て役として、せいぜい恥をかかないようになさい」
「仰せのままに。お嬢様の輝きで、他の方々の目が潰れないか心配です」
私が恭しく答えると、お嬢様は「ふん」と鼻を鳴らし、ホールへと足を踏み入れる。
ホールに足を踏み入れた瞬間、顔見知りの伯爵令息――マルセル・フォン・ローゼン様が、待っていたかのように歩み寄ってきた。
「やあ、ロザリア嬢。今夜も美しいね」
「ん? ああ、誰かと思えば、そこらの雑草かしら。わたくしの視界に入らないでくださる? 目が腐ってしまうわ」
お嬢様は扇子をひらりと振り、彼を追い払う仕草を見せた。
ローゼン伯爵令息の顔が、みるみる引きつる。
私はすかさず一歩前へ出て、柔らかな笑みを浮かべる。
「ごきげんよう、伯爵令息様。主人は『貴方様のように輝かしい方が視界に入ると眩しすぎて直視できません』と申しております」
「えっ……? あ、なるほど! 相変わらずロザリア嬢は照れ屋だな!」
令息は上機嫌で去っていった。
お嬢様は「ふんっ!」とそっぽを向いているが、耳が少し赤い。
本音は、『クロード殿下以外の人に話しかけられてテンパってしまった』なのだ。
素直にそう言えばいいが、それができないから私も苦労している。
続いて、今夜のターゲットである第一王子、クロード・フォン・アルトリア殿下が姿を現した。
金髪碧眼、絵に描いたような王子様だ。
お嬢様の目が釘付けになる。
この時のために、お嬢様は家出をし、詐欺に遭い、ドレスを選んだのだ。
「ア、アアアメリア……! ク、クククロード殿下よ! 久しぶりだから心臓が飛び出しそうだわ!」
「お嬢様、まずは深呼吸を。落ち着いてから挨拶に行きましょう。練習通りにすれば何も問題はありません」
私たちは殿下の元へ進む。
殿下はお嬢様に気付くと、優雅にグラスを掲げた。
「久しぶりだな、ロザリア。今夜は楽しんでいるか?」
チャンスだ。
ここでお嬢様が『ええ、クロード殿下。貴方様にお会いできて光栄ですわ』と言えば、全て丸く収まる。
だが、お嬢様の顔は真っ赤に染まり、唇がわなわなと震えて、長年の想いが限界突破する。
「何、ジロジロ見てんのよ、この不審者が! その無駄に整ったツラをへし折って、豚の餌にしてやろうか! 跪きなさい!」
会場が凍りついた。
殿下の笑顔が固まる。
護衛の騎士たちが一斉に腰の剣に手をかけた。
完全なる問題発生である。
私は瞬時にカーテシーを行い、殿下の前に滑り込む。
「クロード殿下、ご無礼をお許しください。我が主人は、殿下のあまりの美貌に衝撃を受け、『貴方様の麗しいお顔を拝見していると、自分の存在がちっぽけな豚のように感じられます。思わず、その場にひれ伏してしまいそうです!』と、最上級の賛辞を述べております」
――静寂。
殿下がパチクリと瞬きをし、やがて笑い始める。
「ふはははっ! なるほど、そういうことか! 『ツラをへし折る』が『美貌への衝撃』。『跪け』が『ひれ伏してしまいそう』とは、相変わらず詩的な表現をするな、ロザリア」
殿下は微笑み、お嬢様の手を取った。
「やはり面白いな、ロザリア。君のような情熱的なレディはそうはいない。一曲踊ってくれるか?」
奇跡的に通じた。いや、殿下の感性も少しずれているのかもしれない。
まあ、結果オーライだ。
お嬢様はあまりの喜びに顔を真っ赤にして、口をパクパクと開閉させている。
「な、何よ! わたくしの手を取るなんて百年早いわ! でも……まあ、そこまで必死に頼むなら踏んであげなくもないわ!」
「殿下、お嬢様は『この時をずっとお待ちしておりました! 殿下の一歩一歩を喜んで受け止めたいのですわ!』とのことです」
「……なるほど。少しは手加減してくれよ?」
殿下はお嬢様をエスコートし、ダンスホールへと連れ出した。
私は壁際に下がり、安堵の息をつく。
寿命が三年は縮んだ気がする。
だが、平和な時間は長くは続かない。
フロアの端から刺すような視線を感じる。
派手なドレスを着た数人の令嬢たちが、ヒソヒソと話しながらお嬢様を睨んでいた。
公爵家の悪役令嬢が、第一王子と踊っているのが気に入らないらしい。
「面倒なことになりそうですね……」
案の定、曲が終わると同時に、令嬢たちが殿下とお嬢様を取り囲んだ。
「あら、ロザリア様でなくて? 相変わらずエキセントリックな言葉遣いですこと」
「クロード殿下、お気をつけあそばせ。この方は『氷の薔薇』どころか、『狂犬』と呼ばれているのですのよ?」
「先ほども殿下に暴言を吐いていましたわよね? 不敬罪で捕らえるべきですわ」
令嬢たちが口々に捲し立てる。
お嬢様の肩が小さく震え始めた。
不味い、怖がっている。
そして何より、大好きな殿下の前で侮辱されたことにお嬢様は耐えられない。
「うるさいぞ、ハエ女どもがぁぁぁっ!」
「なっ……!? ハ、ハエですって!?」
「そうよ! ブンブンうるさいんだよ! わたくしの殿下に近付かないで! 全員殺虫剤で消毒してやろうか!?」
ああ……やってしまった。
お嬢様は自分を守るためではなく、殿下を守るために吠えたのだが、言葉選びが悪すぎた。
令嬢たちが「きゃあ!」と大げさに騒ぎ、被害者を演じ始める。
さらに殿下が困ったように眉を寄せた。
このままでは、お嬢様が悪者にされて終わる。
『業務発生:主人の名誉挽回、及び敵対勢力の排除』
私は懐から『業務効率化ツール』と呼んでいる、鉄板入りの黒手袋を取り出し、戦闘モードに入りそうになったが、思いとどまる。
ここは王宮。
力の制圧は最終手段だ。
まずは話術で制圧するのが基本だ。
私はスルスルと人混みを抜け、お嬢様の隣に立つ。
そして騒ぎ立てる令嬢たちに向かい、氷の微笑を向ける。
「皆様、少々誤解があるようですので、私から一言申し上げます」
「何よ、たかがメイドの分際で生意気な!」
「主人は、こう申しております。『皆様のような高貴な方々が、ハエのように群れて噂話に興じる姿は見るに忍びない。どうか清らかな水で心を洗い、本来の美しいお姿に戻っていただきたい』と。実に慈悲深いお言葉ではありませんか?」
私は一息つかずに続ける。
「ところで、そちらの男爵令嬢様。先月、裏カジノでの借金を、父親に肩代わりさせた件は解決しましたか? それと、そちらの侯爵令嬢様、婚約者がいながら庭師の青年と『熱い個人授業』をされているという、お噂、とてもロマンチックですね」
私は懐から一通の分厚い封筒を取り出し、静かにひらつかせた。
「ちなみに、ここには皆様の『課外活動』の記録が書かれております。裏カジノの借金返済計画書や、庭師との情熱的な恋文の写しなど……旦那様方の目に触れる前に、こちらで処分しておきましょうか?」
私の言葉に、令嬢たちの顔色がみるみる変化していく。
次第に顔面蒼白になった令嬢たち。
私が握っているのは鉄拳だけではない。
公爵家の情報網が集めた、社交界の『爆弾』だ。
「ななな……っ!」
「主人は全てご存知の上で、あえて『ハエ』という抽象的な表現で皆様の過ちを諌められたのです。これ以上、主人の慈悲を無駄になさらない方がよろしいかと存じますが?」
私はニッコリと微笑んだ。
令嬢たちは「お、覚えてらっしゃい!」とありきたりな捨て台詞を残し、蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
静寂が戻る。
お嬢様がポカンと口を開けて私を見ている。
しばらくすると、殿下が感心したように拍手をした。
「すごいな、主も主なら従者も従者だ。サザランド家には、言葉の魔術師しかいないのか?」
「恐縮です、殿下」
私は優雅に一礼する。
お嬢様が震える手で私の袖を引いた。
「アメリア……わたくし、また……」
「胸を張ってください。お嬢様は何も間違ったことは言っていません(通訳済みですので)。堂々としていればいいのです」
私は小声で、しかしはっきりと伝えると、お嬢様は瞳を潤ませ、コクりと頷いた。
そして殿下に向き直り、精一杯の虚勢を張る。
「雑音が消えて清々したわ! 殿下、続きを踊りますわよ。足を踏まれたいのでしょう?」
「殿下、『ご迷惑でなければ、もう少しだけお時間をいただき、再びご一緒に踊れたら幸いです』と、仰っております」
殿下は思わず笑みをこぼした。
「ああ、ぜひ頼む。ロザリアのステップなら、いくら踏まれても構わない」
再び音楽が流れ出す。
不器用なステップで踊る二人を見守りながら、私は壁際でこっそりと懐中時計を見る。
午後九時。
お嬢様の一途な想いは、予想外の方向で伝わりつつあるようだ。
だが、私の仕事は終わらない。
帰宅後には、お嬢様の『感動と反省のポエム』を回収し、明日のデートに向けたファッションチェックと、暴言翻訳リストの更新が待っているのだから。
悪役令嬢のメイドA。
それは、主人の不器用な恋路を影から導き、時に助ける存在。
それが私、アメリア・オーシャンである。
お読みいただき、ありがとうございました!
※こちら、連載版を投稿予定です。
正式な投稿日は、活動報告でお知らせいたします。
「面白かった」「続きが気になる!」「もっと見たい!」という方は、ぜひブックマークと、【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】の評価を、よろしくお願いしますm(__)m
また、↓も投稿しておりますので、そちらもお願いします。
悪役令嬢の取り巻きAですが、断罪イベントの段取りを完璧にこなしたら、なぜか俺様王子に引き抜かれました
【短編:日間総合2位】
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