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「あ……っ?」
いきなり手首を掴まれ、目深に被っていたかぶり物を脱がされる。
間近で見るドゥラコンの顔はやはり整っていたが、驚きに息をのむツェリルと同様、ドゥラコンもかなり驚いたらしくまじまじと顔を覗きこまれてしまった。
「は、離せっ」
しかし、その驚きの表情はすぐに消え、今度はなぜか楽しげに口元が綻んでいる。
「最近の神官は、女のように華奢なのか」
こんなに密着し、顔だってしっかりと見たはずなのに、自分は男と間違われるほどに女っぽくないと言われたようで、ツェリルは大きな衝撃を受ける。
動揺し、ただただドゥラコンの腕の中で身体を硬くするツェリルに、ドゥラコンはさらに意地悪ににやっと笑いながら顔を近づけてくる。
「その唇も、女のように甘いのか?」
「……!」
唇が重なった。
これがくちづけだと最初はわからず、ツェリルは呆然と受け止めてしまった。
だが、やがて唇を割って入ってきた生温かくぬめったものが口腔内を弄り始めた時、ようやくツェリルは我に返って目の前の胸を押し返した。
「んんっ、んぅっ」
よく動く舌はツェリルのそれに絡みつき、唾液ごと舐め取られて息が上がる。
呼吸ができなくて首を左右に振ると、一瞬くちづけは解かれたが、すぐに角度を変えて重なってきた。
神殿にあがって十年、いや、その前の田舎にいた時にも、もちろんこんなふうにくちづけをされたことなどない。
この先も、ずっとその身は神とバラッハ帝国に棒げるのだと信じて、異性との接触は想像もしていなかった。
羞恥というよりも恐怖を感じ、ツェリルは我が物顔に口腔を犯すドゥラコンの舌を何とか押し返そうとする。
しかし、その行為はかえって互いの舌を絡める動きになってしまい、固く目を閉じたツェリル耳に、男の笑う気配がした。
(こ、の……っ!)
その瞬間、ツェリルの羞恥は一気に高まり、とっさにドゥラコンの舌を噛もうとする。
しかし、悔しいことにその気配を感じ取ったのかするりと逃げ出した舌はツェリルの濡れた唇をなぞり、果実を味わうかのように喉元に唇が吸いついてきた。
その間にも軽々と片手で腰は抱き寄せられ、もう一つの手は無遠慮に胸に伸ばされる。
「見掛けよりはあるな」
「!」
他人にそんなところを触られるのはもちろん、失礼なことを言われるのも初めてで、ツェリルは反射的に手を上げていた。
「……」
パシッという音い音が鳴った後、ツェリルは少し離れたドゥラコンの顔を睨みつける。
平手で打ったくらいでは、その男らしい顔に傷をつけることはできなかったようだ。
「皇太子に手を上げるとは、とんだ不敬者だな」
余裕を含んだ声音に、ドゥラコンがわざと自分に引っ叩かれたことがわかった。
必死になっているのが自分だけだと思うと、悔しさがこみ上げてくる。
「誰かれ構わず手を出す皇太子などっ、一発殴ったくらいでは性根も直らないだろう!」
「……ふっ」
「な、何が可笑しいっ?」
「いや、久々に楽しいものを見つけたと思っただけだ」
「はあっ?」
この期に及んで、まだそんな暢気なことを言うのか。
こんな男が次期皇帝かもしれないなんて、この先のバラッハ帝国が心配でたまらない。
そう思ってしまいながら唇を手の甲で拭ったツェリルだが、自分の今の動揺を誤魔化すために思考をずらしていることを認めたくなかった。
「手を離せっ!」
まだ腰に纏わり付いている手が鬱陶しくて叫んだが、ドゥラコンはなかなか離してくれない。
言っても聞かない男には実力行使をするだけだ。
ツェリルは腹にある男の手の甲に爪を立てた。
「……っつ」
さすがに痛かったのか、ドゥラコンはツェリルの身体を解放した。
すぐに距離を取ったツェリルは、最初の目的を遂行するためにもう一度告げる。
「早く、脱いでくれ」
「……」
「早くっ」
ぐずぐずしていては、他の人間が来てしまうかもしれない。
ヤッフェにさえ内緒で神殿を抜け出してきたツェリルにはもう時間はなかった。
しかし、




