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十年という月日はけして短くなく、その間の自分が生きてきた目標をあっさりと捨て去るのはやはり勇気がいったが、その代わりにドゥラコンが手に入るなら構わないと思えた。
いや、聖女としての自分を振り捨ててでも、目の前のこの男が欲しい。
ツェリルは胸に執着する男の頭を抱きかかえる。
愛おしいそんな感情が胸の中に溢れ、自分から頭を胸に押しつけた。
そんなツェリルの行動を褒めてくれるかのように、ドゥラコンが乳房に噛みついてくる。
痛みの中にあるのは確かな悦楽だった。
「……ツェリル」
「……ぁ……」
乳房や下肢を弄られて、ツェリルはすっか体が蕩けている。
もう、拒むなんて考えられなかった。
ドゥラコンは用心深くツェリルの顔を見ながら、最後まで穿いていた脚服にようやく手をかける。
すっと下ろされた腰には、鮮やかなバラッハ帝国の紋章が浮かび上がっていた。
「!」
ツェリルの視線を追ったドゥラコンも、自身の身体を見下ろす。
そして、それを感慨深く撫でながら言った。
「幼い頃から、これが重くてしかたがなかった」
「……ドゥラコン……」
「いずれこの国を自分が背負うことになるかもしれないと考えたくなくて、ナメルやネツと放蕩息子をしてきたが……」
綺麗な緑の瞳の中に、ツェリルの姿が映る。
「次期皇帝を探すというお前を追い返したくて、わざと身体を要求した。
お前にとっては酷い行為だった……無茶をしてすまなかった」
「違うっ、あれは私がっ」
過去の性交を悔いているドゥラコンに、ツェリルは何度も首を横に振る。
あれはツェリルの意志でもあったのだ。
ドゥラコンだけが責任を感じることなど絶対にない。
ツェリルの思いが伝わったのか、ドゥラコンの唇が何度も目もとや頬に触れた。
「お前に会って、お前が心からバラッハ帝国のために尽くそうとする姿を見て、自分がどんなに甘い考えをしていたのかわかった。
ツェリル、俺はお前に会って生まれ変わったんだ」
過ぎた言葉に、胸が苦しくなった。
ドゥラコンが皇太子という立場にどれだけ悩んできたか、側にいなかったツェリルには計り知れない。
それでも、出会ってから今まで、ツェリルの見てきたドゥラコンは……。
「……あなたははじめから、立派な皇太子だった」
「ツェリル……」
「あなたを、支えさせてください」
どれだけできるかわからないが、それがツェリルの素直な気持ちだった。
ドゥラコンは答えなかったが、一度だけ目を閉じて顔を上げた後、小さな声で何かを呟く。
聞き取れなくてツェリルがじっと視線を向けていると、ドゥラコンは触れるだけのくちづけをしてきた。
それからは、さらに熱が増したかのようにドゥラコンの愛撫は激しくなった。
乳房や下肢だけでなく、ツェリルの全身に舌を這わせ、くちづけを落としてくる。




