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躊躇う様子もなく服を脱いでいくドゥラコンを、寝台に座り込んだ状態でツェリルはじっと見つめていた。
腰の痣が見えるという以上に、そこまでドゥラコンに気を許してもらえているという事実が嬉しい。
手で触れた感触以上に浅黒く引きしまったドゥラコンの身体は、とても綺麗だった。
以前は自分のせいで身体を合わせる時でも服を脱いでくれなかったことが、今さらながらもったいないと思う。
高鳴る胸を抑えながら視線を向けた先、上半身と脚服の境目辺りにはまだそれらしい影は見えない。
気が昂り、体温が上昇した時にだけ現れる特別なそれ。
ドゥラコンに抱かれた時はいつも夢中で、意識も散漫になってしまうが、今夜こそ見ることができるだろうか。
じっとそこに集中していると、下半身は脚服を穿いたままのドゥラコンが寝台に乗り上がってきた。
「ずいぶん熱心に見ているな」
「そ、それは」
改めて言われると、何だか自分がとても淫乱に思えた。
恥ずかしくなったツェリルが視線を逸らすと同時に、大きな手が腰を撫で上げる。
「ん……っ」
(な、何?)
触れられただけで身体が熱くなったなんてとても信じられない。
ツェリルは今までとまるで違う自分分の反応に狼狽した。
前の二回も、ドゥラコンの熱いもので身体を貫かれ、だんだん身体の奥が薄れて、最後には何もわからないほど夢中になってしまったが、今はまだ、服の上から触られただけだ。
こんなにも露骨に感覚が変わってしまったなんて、このまま抱かれてしまったらどうなってしまうか不安でたまらなくなる。
「ツェリル?」
身体を隠そうと必死に縮こまろうとしたツェリルに、ドゥラコンは不思議そうに名を呼んできたが、きっと今の自分の顔は変に違いないので見られたくなかった。
「……しかたないな」
(え……)
もしかしたら、頑なな自分に呆れてしまったのだろうか。
ツェリルは慌てて身体を起こそうとしたが、なぜかうつ伏せの状態のまま腰を押さえられる。
「な、何を?」
背後がまったく見えないので不安でたまらず、ツェリルは必死にドゥラコンに訴えかけたが、なぜか何も答えてくれずに、いきなり裾を腰まで捲られてしまった。
「!」
それだけではない、ツェリルが驚いて固まってしまったのをいいことに、ドゥラコンは手早くツェリルの服を脱がしてしまった。
それは止める間もないほどの鮮やかな手つきで、ツェリルは上半身はおろか、下肢も脚服だけが残ったみっともない格好になる。
「……痩せているが、ちゃんと肉はついているな」
そう言いながら、骨ばった指に尻たぶをじかに揉まれた瞬間、ツェリルは反射的に後ろに手を伸ばしてその手を引き剥がそうとした。
しかし、体勢のせいか力が思ったよりも入らず、ツェリルが手首を掴んだ状態のまま、ドゥラコンにまるで感触を確かめるように撫でさすられる。
「ここを、ネツが何度も触れただろう?」
「は、離してっ」
「どうして? 俺だけは触れることを許されているじゃないか」
(か、勝手なことをっ)
傲岸不遜なドゥラコンのもの言いに反発しようにも、大きな手でぐにぐにと尻を揉まれて声が出そうになるのを抑えるので精一杯だ。
時折指先が双丘の奥に侵入してきて、まるで悪戯するように軽く陰唇の表面をくすぐられる。
まだ何もされていない状態なのに濡れているような感覚を覚え、ツェリルはとっさに股の間にあるドゥラコンの手を足で挟んだ。
「おい」
(駄目、駄目、駄目っ)
このままでは恥ずかしくて気が遠くなってしまう。
せめてもう少し、くちづけからゆっくりと進めて欲しいのに、背後で笑う気配がしたかと思うと、いきなり尻に湿った温かい感触がして驚いた。
振り向くのが怖い。
だが、確かめなければもっと怖くなりそうで、ツェリルはおずおずと背後を見る。
「やっ!」
そこでは身を屈めたドゥラコンが、ツェリルの尻を舐めていた。
舌を出した男はツェリルの視線に気づいたらしく、目を細めてまるで見せつけるように、もう一度長い舌を這わせる。
「やめてっ!」
そんなところを舐めるなんて信じられない。
ツェリルは今度こそドゥラコンの拘束から逃れようとがむしゃらに暴れるが、肩を寝台に押さえつけられ、膝裏を足で押さえられた状態では無駄な動きでしかなかった。
その間にもドゥラコンの舌は尻だけでなく、背中をすっと舐め上げ、そのまま首筋に強く吸いつく。
ちくっとした痛みに耐えるツェリルの目じりには涙が浮かんだ。
こんなに恥ずかしいことをされるなんて。
「ツェリル」
「……っ」
その時、熱い息が耳をくすぐった。
「恥ずかしいことなど何もない」
「俺はお前を愛している。
だからこそ、お前の身体のすべてを愛したい。
他の男が触れた場所は、全部俺で塗り替えたいんだ」
思いがけない言葉に、ツェリルはすぐに反応を返せなかった。
こんなふうに愛されるなんてツェリルにとっては羞恥以外の何物でもないが、それほどに強く想われているのだと考えれば嬉しくないはずがない。




