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聖女は秘密の皇帝に抱かれる  作者: アルケミスト


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 これ以上の言葉を継いでも余分なことでしかないかもしれない……そんな危惧を抱き始めた時、


「!」


 突然伸びてきたネツの手がツェリルの肩を抱き寄せすっぽりと抱きしめられる形になってしまった。


「ネ、ネツ殿?」


 何度も経験した嫌な予感が頭の中を過る。


「ドゥラコンやナメルにばかり奉仕をしては、俺だって拗ねるというものだ」


「す、拗ねる?」


 こんな大きな身体のネツがそう言ってもかなりの違和感がある。


「抱かせろとまでは言わないが、もう少しお前の尻を可愛がらせろ」


「きゃあっ」


 言うなり、大きな手が尻を掴んだ。


 そればかりではない、腰を掴んでいる手がすっと上まで滑ってきて顎を取られ、真上を向くほど顔を上げられてそのまま唇を奪われてしまった。


(く、くちづけまで……っ)


 尻を揉まれるだけならばまだしも……それさえもかなり嫌だが、くちづけまでされて、ツェリルは反射的に身を捩った。


 頭のどこかではこの行為を受け入れなければならないと思っているのに、気持ちがどうしても拒絶する。


「んんっ」


 両頬を指で掴まれてしまい、しかたなく開いた口の中に厚い舌が侵入してきた。


 まるで食べられてしまうのではないかと思うほどの荒々しい動きで口腔内の唾液が啜られ、舌を絡められて、ツェリルは徐々に足から力が抜けてしまう。


 しかし、尻を掴む手一つで、ネツは軽々とツェリルの体を支えていた。


 いや、力が抜けてしまったせいか、大きなそれは我が物顔にツェリルの尻たぶを揉み、時折股から腿へと悪戯に指が動く。


「ふぅっ」


 抗議の声を上げようにも、くちづけで口が塞がれていてくぐもった音しか洩れない。


(く、るし……っ)


 唾液ばかりではなく、息まで奪うほどの激しいそれは、一見物静かネツからは想像もできない行為だ。


 だが、見開いた視線の先にある熱っぽい男の目を見て、ツェリルは自分がいかに子供だったかを思い知っていた。


 覚悟を決めたつもりだった。


 身体の中心にも、碓かな熱がこもっている。


 今の自分の顔はきっと、感じている人間のものだとも思う。


 それでも、気持ちがついていかないそれは、ツェリルにとっては受け入れられないものだ。


「……んあっ」


 何とかネツの唇から逃れ、荒い息を吐きながらツェリルは逞しい肩に爪を立てる。


 ビクともしない身体が憎らしい半面、ネツならと頭のどこかで納得していた。


 ネツは片手でツェリルの身体を抱えてきた。


 そのまま机の上へと下ろされる。


 そして、いきなり仰向けに押し倒されると同時に無造作に脚服を腿まで引き下ろされ、片手で両足を拘束されてぐっと押し上げられた。


「!」


 下肢が露になった状態に、ツェリルは身体を強張らせる。


 この体勢ではネツの布は見えないが、熱い視線が尻に注がれているのを強烈に感じた。


「ひぃっ?」


 不意に尻に感じた湿った感触。


 つっと焦らすように動くそれがネツの舌だと思い立った瞬間、ツェリルは決死の勢いで足をばたつかせ、緩んだ拘束から片足を引き抜くとそのまま前方へと蹴り出した。


「……っ」


 鈍い感触を感じた後、すぐに歩日は起き上がる。


 肩を押さえるネツを見て、どうやらそこに当たったのだとわかった。


 下股を乱した格好はあまりにも情けなく、まだ尻にはネツの舌の感触が残っている。


 しかし、今日こそは絶対にと強く心に誓った思いは、粉々に砕けはしなかった。


 ツェリルは自身の服の乱れを直すこともせず立ち上がり、そのまま男の軍服に伸ばす。


 正装ではなく、訓練用の簡易なものであることが幸いした。


「!」


 一連のツェリルの行動になすがままのネツのやや後方に移動したツェリルは、次の瞬間大きく目を瞠った。


 そこには、先日遠目で確認したように、赤いものが確かにあった。


 だが、近くで見るとそれが痣ではなかったことがわかる。


「……傷?」


「そうだ」


 意に反したものだろうに、ネツは淡々と頷いた。


「これ……」


「幼い頃に負った傷だ」


「傷……」


 その傷は剣や槍で傷つけられたものではなく、何か……多分木の枝か何かで抉られたようなものに見えた。


 ただ近くで見ると明らかな傷跡だが、少し遠くから見てみると不思議とバラッハ帝国の形も似ている。


(私が水鏡で見たのは、あれは確かに……)


 ツェリルはそれをバラッハ帝国の紋章の形と同じ痣だと思っていた。


 しかし、こうしてネツの傷跡を見てしまうと、それが正しかったのかどうか怪しくも思えた。


 水鏡は、見る者によってどう捉えるかが変わるものだ。


 だとしたら、痣だと思い込んでいた可能性もある。


 ネツは乱れた裾を整え、今にも倒れそうなツェリルの身体を椅子に座らせてくれる。


 服を直してくれる際にもう一度尻を撫でられたが、文句を言う余裕もなかった。


「お前は、俺を次期皇帝だと思うのか?」


 そして、唐突に頭の中にある事実を突きつけられてしまい、ツェリルは息をのんだ。


「お前が探していたのは、腰に痣がある男だろう?」


「で、でも……」


「あ、なた、だけでなく、ナメル殿も……」


「ああ、あいつのも見たのか」


 こくんと頷けば、ネツはようやく口元に苦笑を浮かべる。


「あいつは、自分から見せたんだろう」


「どうしてわかるのですかっ?」


 ツェリルの質間には答えてくれなかったが、きっと幼友達だからこそナメルの性格もよく把握しているのだろう。


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