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聖女は秘密の皇帝に抱かれる  作者: アルケミスト


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 とにかく、浴場に着けばこの状態から解放されるだろうと内心安堵したのに、いきなりそのまま両腕で抱えられ、抱かれた体勢のまま湯の中に入れられてしまった。


「……ふっ」


 息苦しくなる前に布から顔は出してもらえたが、濡れてしまった布が身体に拘束具のようになって纏わりつく。


 動けないことに焦れて、ツェリルは自分を抱えているドゥラコンに頼んだ。


「これを、脱がしてください」


「どうして?」


「どうしてって、これじゃ動けないっ」


 見てわかるだろうと訴えると、ドゥラコンはツェリルの顔をまじまじと見てから何とか膝まで布をはだけてくれる。


 しかし、こんな中途半端な状態ではどうしようもない。


「ドゥラコン殿っ」


「わかった、わかった」


 正当な要求をしているのに、こんなふうに宥めるように言われてしまうと、自分の方が我が儘を言っている気分になった。


 復雑な思いの中、軽く唇を合わせられ、器用な指に布を脱がしてもらう。


 湯に濡れてしまったものを剥がすのには少々力がいったようだが、布を取ってもらうとツェリルの口から安堵の息が自然と洩れた。


 自分をこんな目に遭わせたドゥラコンに、どんな文句を言ってやろうか。


 不安や混乱を怒りに無理矢理変えてしまい、ツェリルはドゥラコンを睨みつける。


「ん?」


 濡れた髪を掻き上げながら、ドゥラコンはツェリルを促した。


 その表情がとても艶っぽく、ツェリルは動揺する気持ちを誤魔化すのに必死になった。


(私、何をするんだったっけ?)


 一瞬、自分がここにいる意味を考えるが、答えを出す前にもう一度背後から顎を取られ、ドゥラコンが唇を重ねてくる。


 自然と綻ぶ唇の間から入ってきた舌に誘われ、躊躇いながら舌を絡ませたツェリルは、胸元の服の合わせ目から侵入してきた手に胸を揉まれた。


「んぅっ、あんっ」


 湯に濡れて服が肌に張りついているせいか、身体中をじかに触れられているような感覚になる。


 しかし、微妙なところでもどかしくて、つい大きな手を自分の手で胸に強く押しつけてしまった。


 指の間に挟まれた乳首がぐにっと押し潰され、鈍い痛みがさらなる刺激になって、ツェリルは身体を震わせた。


「ツェリル」


「……あっ、んふっ」


「一人で気持ち良くなるな」


 苦笑と共に洩れた声が耳に届く。


「足を開け」


「あし?」


「直接、触って欲しくないのか?」


(直接……?)


 このじれったい刺激を何とかしてくれるのだろうか。


 そんなことを考える方がおかしいのに、ツェリルはまるで喑示に掛けられたかのようにゆっくりと足を開いた。


 すぐに間に入ってきた大きな手が脚服を引きずり下ろし、敏感な表面を何度か擦られた後にくにっと襞を押し広げられる。


「んあっ」


 湯が中に入ってきて、熱い。


「……ツェリル」


 ドゥラコンの膝からずり落ちないよう、片手はしっかりとツェリルの腰に回っていて、もう片方の手は足の間に入り込んでいる。


「湯の中じゃ、濡れているのかどうかわからないな」


「あっ、やあっ」


 襞を押し分けるように指が入り込んできた瞬間、ツェリルはそれを阻止するために両膝でその手を挟み込んだ。


 これ以上そこを弄られると、もっと自分が混乱してしまう。


 そんな姿をドゥラコンに見られたくない。


(私は、こんなことをするためにここに来たんじゃっ)


 霞がかった思考が、一瞬よみがえろうとする。


 だが、そうなる前にドゥラコンの手が強引に動き、一気に指の根元まで中へと押し入ってきた。


 襞を掻き分けて押し入ってきた指の形が、驚くほどわかる。


 それを締めつけている自分の中も。


 痛みは感じず、圧迫感だけが酷くて、ツェリルは何とか身体の中から指を引き抜こうとドゥラコンの手を掴んだ。


 しかし、なぜかその手の動きはさらに誘うかのように大きな手を下肢に押さえつけた。


 何をしているのだと自分でも呆れてしまうが、それでも……。


「熱いか?」


「あ……つ……」


「肌が、赤く染まっている」


「あっ」


 不意に大きな水音を立てて身体が湯から出されたかと思うと、そのまま大理石の床に優しく下ろされる。


 そのまま一気に服を脱がされ、たちまち生まれたままの姿になって仰臥した。


 真上から、ドゥラコンが顔を覗きこんでいる。


 濡れた髪に、滴が垂れる顎……だが、ドゥラコンの服は乱れていないままだ。


 裸身の心許なさに、ツェリルは無意識に胸元を腕で隠す。


 自分の乳房の形など今まで気にすることもなかったが、こんなにも真っ直ぐな視線で見られてしまうと、猛烈に恥ずかしくなったのだ。


 見下ろしてくるドゥラコンの目の中には、明らかな欲情の色がある。


 こんな目で見つめられて平常心でいられるわけがない。


(ふ……く)


 浴場で服を着たまま湯に入るのは異様だ。


 だが、この男はどうしても服を脱ぐことはない。


 湯に濡れて温かいはずの服も、素肌にはとても冷たく感じて、ツェリルは無性に悲しくなった。


 どうして肌を合わせてくれないのだろうと思うと同時に、ツェリルはあっと思い出した。


「痣、は?」


「思い出したのか」

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