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聖女は秘密の皇帝に抱かれる  作者: アルケミスト


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 ナメルの腰の紋章と、ネツの腰の赤いもの。


 その二つが頭の中に目まぐるしく回り、ツェリルは一睡もできなかった。


 ネツは置いておいても、ナメルの痣は間近で見たのだ、本物に間違いない。


 すると、探している次期皇帝は大司教であるナメルなのだろうか。


(……でも……)


 そう決めてしまうには、ネツのことも気になる。


 いや、それだけではない、いまだ肌を見せてくれないドゥラコンのことだって除外できない。


「……ばあばさまに相談……駄目だ」


 迷っている今、ヤッフェの助言が欲しかった。


 彼女ならば、ツェリルの混乱を一言で解決してくれる気がする。


 しかし、せっかくツェリルを信頼してくれて今回のことを任せてくれたのに、今になって泣きつくなんて情けなさ過ぎた。


 やはり、正面からぶつかるしかない。


 そう決めたツェリルは、浴場から戻ってきたドゥラコンの腕を掴んだ。


「積極的だな」


 一瞬だけ、ドゥラコンは真剣な眼差しで腕を掴むツェリルの手を見下ろしたが、すぐにからかうような口調でそう言う。


 まるでわざとそうしているかのように感じて、ツェリルは真っ直ぐにドゥラコンの目を見返した。


「肌を見せてくれ」


「だから、それは前にも言ったように……」


「肌を合わせればいいのか?

 そうすれば、その肌を見せてくれるのか?」


 恥ずかしいとか、理不尽だとか、今はそんな瑣末なことを言っている場合ではない。


 ナメルとネツの肌のことをはっきりさせるためにも、ドゥラコンのことも早急に確かめなければならなかった。


 ツェリルの決意を確認するかのように、ドゥラコンがじっとツェリルの顔を見ている。


 それに、目を逸らさないままでいると、ふっと息を吐く気配がした。


「馬鹿だな、お前は」


「ば、馬鹿?」


「俺のことなど、そんなに構わなくてもいいのに」


「私だって構いたくないっ」


 そうは思っても、どうしても気になってしかたがないのだ、ドゥラコンのことが。


「そんなに欲しがられては拒否できないな」


「きゃあっ」


 軽々と身体を持ち上げられ、ツェリルは一度だけその感触を感じたドゥラコンの寝台に少し乱暴に投げ出された。


 突然の行動に驚いたが、これも覚悟したはずだ。


 ツェリルは仰向けに寝かされた状態のまま、寝台の側に立つドゥラコンを見る。


 この体勢でドゥラコンを見るのは二回目だ。


 前は酷く緊張して、ただ身体を強張らせるしかなかったが、今回は……。


 ツェリルはそのまま自分の服の紐を解いた。


「おい」


「覚悟は、できている」


「……そんなに青い顔をしているのにか?」


(……顔?)


 そんなに変な顔をしているのかと、ツェリルは紐から手を離して自身の頰に触れた。


 もちろん、指先だけで何かわかることもなかったが、それでも何度も頬を擦るように触れていると、その上から大きな手に包まれた。


「嘘でも、俺を欲しがったらどうだ?」


「……っつ」


 どう表現すればいいのだろうか。


 目的は違うのに、ドゥラコンを好きだと見せればいいのだろうか。


「俺を欲しがれ、ツェリル」


「ドゥ、ラコ……どの」


「ほら」


 ドゥラコンが覆い被さってきて、ツェリルの頰や目もとに唇を寄せてきた。


 それは意外なほどに優しく、ツェリルの中の緊張感を薄れさせてくれる。


 ドゥラコンだってツェリルのことを何とも思っていないくせに、こんな時ばかり優しい声音で名前を呼ぶなんて卑怯だ。


 それでも、おかげでずいぶんと気持ちは軽くなり、ツェリルはドゥラコンの背中に手を回した。


 ゆっくりと逞しい背を撫で、そのまま手を男の腰にやる。


 その部分に目が行かないせいか、ドゥラコンは拒むことはせずにそのまま受け入れてくれた。


(ここに、あるのか……ないの、か)


 自分はどちらを求めているのだろう。


 ナメルとネツのものを見てしまった後だけに、ツェリルはそれを想像する。


 しかし、当然のことながら答えなど出るはずもない、実際、ツェリルはまだドゥラコンの裸身を見ていないのだ。


 本人から拒絶される前に、ツェリルは背中に回した手を胸元に移動して服を脱がせようとする。


 しかし、いくつか鈕を外したところで、ツェリルは身体を震わせてしまった。


 寝台に寝かされたときに大きく乱れた裾を割り、ドゥラコンがいきなり脚服の中へと手を入れてきたのだ。


 じかに尻を鷲掴みにされ、ツェリルはとっさに身体を捩る。


 すると、さらに奥まで伸ばされた指が、薄い下生えを絡めて引っ張った。


「い、痛いっ」


「ああ、すまん」


 まったく悪気がなさそうに謝罪するが、ドゥラコンは脚服の中から手を出そうとしない。


 そればかりか、下生えの奥の恥ずかしい場所をすっと指で撫でられた。


「!」


「まだ、濡れてないな」


「な、何?」


「まあ、まだ一度しか抱いていないからか」


「ド、ドゥラコン殿?」


 ドゥラコンの唇が耳元へと移動し、囁きかけてくる。


「それとも、ナメルかネツに抱かれたか?」


「何を言うんですかっ!」


 言って良いことと悪いことがある。


 ドゥラコンの言葉はまるでツェリルが誰にでも抱かれる淫乱な女だと言っているのも同じに聞こえた。


 もちろんツェリルにそんなつもりは毛頭ない。


 自分の中の疑惑をどうしても晴らしたくて、その方法がこれしかないから意を決してドゥラコンを誘っているのだ。


 こんなことをしなくてもドゥラコンが服を、それも上衣だけでも脱いでくれたら、ここまでしなくてもいいのに……そんなことを思うと悔しくて、さっきまでとは違い、強くドゥラコンの服を引っ張った。

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