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聖女は秘密の皇帝に抱かれる  作者: アルケミスト


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 本人は気づいていないが、宮殿にいる男たちの中のかなりの人数が、ツェリルに対して好意以上の想いを抱いていると思う。


 今のところツェリルはドゥラコンしか目に入っていないので、当然のことながらそんな男たちがツェリルを手に入れることなどできないだろうし、今となってはドゥラコンもツェリルを自分以外の男の手に委ねるなど考えもしていなかった。


 ドゥラコンは混乱しているツェリルの胸元に腕を回し、後ろから抱え込んだ。


 真上から見下ろすと胸の谷間がくっきりと見える。


 この身体を抱いたのは、もう十日も前のことだ。


 次期皇帝探しを諦めさせるため、かなり強引に事を進めたのは自覚している。


 はじめは抵抗し、最後は泣きながらもしがみついてきたツェリルだったが、これでもう、自分には近づいてこないだろうと漠然と考えていた。


 しかし、ツェリルはドゥラコンの予想以上に不屈の精神力の持ち主だった。


 自分を力で征服した男を前にして僅かな恐怖は残っているらしいが、積極的に付きまとってくる。


 諦めなかったことに驚き、面倒がなくならないと嘯く半面、ドゥラコンは側にいるその姿を見てどこかで嬉しいと思う自分がいることを知っていた。


 そして、自分が今さらのように、罪悪感めいたものを感じていることも。


 どんなに控えめで、心優しい女でも、ドゥラコンが皇太子だと告げればその心の中に欲が生まれる。


 妃になること、それが無理でも、金や宝飾を貢がれる自分というものを想像する。


 それはごく自然の思いなので、それについてドゥラコンは何も言うつもりはない。


 権力と名誉と金を欲しがらない方が珍しい。


 しかし、ツェリルは変わらなかった。


 どうやら自身に課せられた使命全うすることに一生懸命で、強引に抱いたドゥラコンのことを責めることも、金や宝飾を要求することも考えもしていないらしい。


(聖女というものは、あんなものか)


 純粋で無欲な人間がいるなんて、ドゥラコンは今まで考えもしなかった。


 知れば知るほど、ツェリルに惹かれていく。


 身体を合わせたからというだけではなく、その心根がとても心地好い。


 次にツェリルがどんな言動をとるのか今では楽しみにしている自分がいて、色んな表情が見たくてついからかってしまうことも多々あった。


 そのせいでツェリルに嫌われる可能性もあるが、この楽しさを手放すことはもう難しかった。

 

 一歩も引かずに意見を述べ、怒ったり、笑ったり、悩んだり、様々に変化する表情を見せてくれるツェリルが、このまま側にいてくれたら。


「ツェリル」


「……っ」


 耳元で名前を囁き、そのまま赤く染まった耳たぶを口に含む。


 ツェリルが身体を震わせた拍子に湯が波打った。


「ほら、背中を流してくれるんじゃないのか?」


 からかうように言えば、のろのろと顔をこちらに向ける。


 湯に引き込まれた驚きは去ったらしいが、今の体勢に対する羞恥が襲ってきたのか目元も頬も赤くなっていた。


「手を、離してください」


「このままじゃ駄目なのか?」


「で、できないでしょうっ」


「確かに」


 このまま膝に乗る尻の感触を味わっているのも楽しいが、もっとツェリルの表情の変化を見たい。


 ドゥラコンはツェリルの腰を掴み、湯の力を借りて軽々と向きを変えた。


「あ……」


 今度は、向き合う形になり、必然的にツェリルは両足を開いてドゥラコンの腰を跨ぐ格好になってしまった。


 濡れているとは言えツェリルは服を着ているが、当然入浴中のドゥラコンは裸だ。


 ツェリルをからかううちにドゥラコンの下肢も変化していて、今、柔らかな尻を押し上げている陰茎の感触をツェリル本人も感じているはずだ。


「ドゥラコンさま」


「ん?」


「あの……」


 さすがに言葉で指摘するのは恥ずかしいのか、ツェリルは身体を逃がすために身じろぎを始める。


 しかし、かえってそれはほどよい刺激になってしまい、ドゥラコンの陰茎はますます力を持ってきてしまった。


(……まいった)


 身体は欲情していても、まだ理性は保っている。


 むしろ、自身の即物的な反応に苦笑いが零れるほどだ。


 それでも、目の前で戸惑い、恥ずかしがっているツェリルの顔をもっと見ていたくて、ドゥラコンはわざと意地悪く腰を揺らしてみた。


「や……っ」


「どうした?」


「ど、どうしたって、あのっ、手を離してくださいっ」


 今のツェリルの頭の中には、この隙にドゥラコンの腰を見てやろうという思いはないだろう。


 それほど、性的な接触に不慣れだということだ。


 ドゥラコンは色づいていく表情を目を細めて見つめながら、後頭部を引き寄せて唇を合わせる。


「ん……」


 重なった唇は、頑固に引き結んで開いてはくれない。


 早く、あの甘い唾液を味わいたいドゥラコンは、何度も舌を這わせ、唇を食んだ。


 上気した頰に長いまつげが影を作り、驚くほど艶っぽい表情になる。


「んぁ……んふ」


 項から背中に手を這わせ、両手で尻を鷲掴むと、くぐもった声を上げながらツェリルが唇を開いた。


 どうやら、尻への刺激に我慢が利かなくなったらしい。


 それがドゥラコンの愛撫からならば良いが、ネツの影響だったとしたら……面白くない。


 ドゥラコンはそのまま手をもっと奥へとずらしていったが、動きが乱暴だったのか急にツェリルが大きく抵抗をし始めた。


「……はっ、はぁっ」


 無理には引き止めなかった。


 湯の波を立てながら湯船の中から逃げ出すツェリルの姿を黙って見ていると、逃げるかと思ったツェリルはくるりと向き直って仁王立ちになった。


 本人は睨んでいるつもりだろうが、全身ずぶ濡れで瞳が潤んでいるせいか、まるで誘っているようにしか見えない。

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