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聖女は秘密の皇帝に抱かれる  作者: アルケミスト


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 皇帝という地位は一見すべての権力を握る絶対的な支配者と思われがちだが、実はその肩に何百万という国民の命や生活を守る責任と使命という重圧がのし掛かる。


 痣があったから簡単に皇帝になるなんて、気楽なものではないのだ。


 自分たちもその覚悟をしなければならないのなら、次期皇帝を指名する立場のツェリルにもそれ相応の覚悟をしろ。


 服を脱げという言葉の中にはそれだけ深い意味があるのかもしれないと思うと、ツェリルは今にも逃げ出したくなりそうな足を何とかその場に踏みとどめた。


「……わ、私、が」


「……」


「私が、服を脱げば、あなた方も脱いでくれるのか?」


 これだけ言うのにも顔が熱くてたまらなかったが、ドゥラコンはちらっと背後の二人を見た後、さあなと嘯いた。


「男は女の色香によって服を脱ぐ。

 お前がそれほどに色っぽかったら、喜んで服を脱ぐかもな」


「い、色香……」


 そこで、少し話が違うことに、いっぱいいっぱいのツェリルは気づかない。


「わ、わかった、色っぽく、だな」


 経験はおろか、知識もまったくないが、ツェリルは自分がそうすることでドゥラコンの腰の痣を確認できるならと羞恥心を振り払った。


 いつも世話をするのに過ごす居間では心許ないだろうと、ツェリルは促されて寝台の前までやってきた。


 ドゥラコンの寝台は大きな天蓋に囲まれた立派なもので、大人でも三、四人は楽に眠ることができそうなほど広い。


 ドゥラコンはその寝台に腰を下ろし、ツェリルの覚悟を測るように見つめてくる。


 ツェリルは震える指先を胸元の帯に当てたが、ふと気配を感じて慌てて振り向いた。

 

「あ、あなた方はどうしてそこにいるんですかっ」


 これはツェリルとドゥラコンの問題だと思っていたのに、いつの間にかナメルとネツも大きな天蓋の囲いの側に立ってこちらを見ているのだ。


 二人ともいやらしい顔はしておらず、ナメルは相変わらず慈愛に満ちた表情で、ネツは無表情でいる。


 しかし、だからといって三人の前で裸になるなんてツェリルの許容の範疇外だ。


 それなのに、ツェリルが退出を訴える前に、ナメルが当然のように切り出した。


「私たちの腰にも、あなたが知りたいものがあるかもしれませんよ?」


「……っ」


 意味深なナメルの言葉にツェリルは目を瞠った。


「ドゥラコンに決意を見せるのなら、俺たちにも見せてくれるということではないのか?」


 続けて、ネツも淡々と告げてくる。


(……そう、なの?)


 違うと言いたいが、ここできっぱり拒絶してしまった後、もしもドゥラコンの腰に探す痣がなかったら。


 結局、ナメルとネツにも同じ誠意を示さなければならないと言われたら否定できない。


「……わかりましたっ」


 恥ずかしさは同じだ。


 それならば一度に済ませた方が良い。


(私が脱いだら、 三人共にも脱いでもらうからっ)


 そう決意すると躊躇っている時間の方がいたたまれないので、ツェリルはさっと胸元の紐を解いて朱色の長衣を脱いだ。


 その下の白い長襦袢にも躊躇わずに手を掛けて肩から脱ぐと、上半身は尻に掛かるほどの短い肌着、下肢は膝までの薄い脚服だけになつた。


 さすがに、この次を脱ぐのには躊躇いがあり、ツェリルは唇を嚙みしめたまま寝台に座るドゥラコンを見る。


 もしかしたら、「そこまででいい」と言ってくれるのではないかと期待したが、いくら待っても望む言葉は出なかった。


 そればかりか、から「うーん」と唸る声が聞こえる。


「もう少し大きかったら完壁なんだが」


「何がです?」


「尻」


「相変わらず、尻にしか目がいかないんですか」


 ふざけた二人の会話に、ツェリルは反射的に両手で尻を隠して身体の向きを変えた。


 もっと、変にいやらしく顔が崩れていたら酷く罵倒できるのに、二人とも悔しいくらい涼しげな顔をしているので言いようがない。


(こんなに変態なのにーっ)


 他の女官たちはこんな二人の正体を知らないなんて悔し過ぎると思っていると、


「きゃあっ?」


 いきなり腰に手が回り、ツェリルは引き寄せられるままドゥラコンの膝の上に後ろ向きで座る格好になってしまった。


「ちょっ、は、離せっ!」


 そうでなくても下着姿で男に触れられるなんて考えられない。


 ツェリルは腰にあるドゥラコンの手を叩き、爪を立てたが、以前解放してくれたようには手は離れていかなかった。


「ドゥラコン殿っ!」


「せっかくそこまで脱いでくれたのは嬉しいが、俺が肌を見せるのは身も心も重ねたい女だと言っただろう。

 子供のように無頓着に脱がれても、色っぽくなくてそそられない」


「そ……っ」


(そんなのっ、もっと早くに言ってよ!)


「何だ?

 何が言いたい?」


「い、色っぽさなんてわからない!」


 こう言うのも恥ずかしくてたまらないのに、背後の男は楽しげに笑う。


 ひくひくと動く腹の動きを背中に感じて身を固くしていると、次の瞬間には耳をかぷっと食まれた。


 驚きに大げさなほど身体を揺らしたが、耳には湿った感触が纏わり付き、あろうことか鼓膜にピチャピチャという粘膜の音が響いた。


 何をされているのか、背中を向けているツェリルにはわからない。


 それでも、今自分が異常な事態に巻き込まれていることだけはわかった。


「……せ」


「……」


「は、なせっ」


「それは無理でしょう」


「!」


 背後に意識を向けていたツェリルは、前方の危険にまったく気づかなかった。


 焦って顔を前に向ければ、驚くほど間近に綺麗な紫の瞳がある。


「先ほどのドゥラコンの言葉は撤回すべきですね」


 何のことだか、ナメルは長く細い指先でツェリルの頬を撫でてきた。


「そうだな。

 十分、そそられる」


 ネツは無遠慮に腰を撫でさすり、今にも尻へと手を滑らせてきそうだ。


 長身で大柄な男たちにぎゅうぎゅうに囲まれている形になってしまったツェリルが、ゆっくり近づいてくるナメルの顔を呆然と見ていると、背後から大きな手に顎を鷲掴みにされ、そのまま後ろのドゥラコンと目が合うほどに反らされて。


「んっっ?」


 噛みつくように、ドゥラコンは口を合わせてきた。


 そのまま食べられるのではないかと思うほどに唇を噛まれ、舐めまわされて、息苦しくて必死に口を開く。


 すると、それを待っていたかのように舌が滑り込んできて、口腔内の唾液を吸い尽

くされた。


(く、くるし……っ)


 呼吸がしたくて顔を逸らそうと身を捩るのに、顎を掴むドゥラコンの手は緩まない。


 いや、そればかりか右手はナメルに、左手はネツに拘束されて、まったく動ける状態はなかった。


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