プロローグ
厨二病時代の黒歴史の異物を書き直しながら投稿。
初投稿ゆえ、至らぬ点しかありませんが、お付き合いいただけたらうれしいです。
とりあえず、携帯で書いたからか短いです。
「俺、前世の記憶があるんだ」
それを聞いた友人は変な顔をしながら、俺が冗談を言ったのだと認識する。
それは間違ったことではないし、最初からこの話を信じてもらおうなんて思っているわけではなかった。
しかし、俺には前世の記憶があった。
前世の俺は、地球とは違う世界。いや、俺からしてみれば、地球のほうが異世界に近いのだが。
俺はその世界の、貴族の娘として生まれた。
姿も性別も違う。だが、かつての“あたし”を“俺”は“俺”だと認識できるし、むしろ、“俺”は“あたし”なのだ。
その世界でたった三十六年という短い人生だったが、“あたし”にとってしてみれば一生で、それは“俺”になった今でも変わらないわけで。
あの世界に帰りたい。そう思わないわけはない。しかし、あの世界に行く術は俺にはない。
あの世界には“魔法”があった。しかしこの世界に、魔法がないことは、当の昔にわかっていることだ。
第一、異世界に行く魔法なんてものもなかった。
だから俺は、この記憶に段々と疑問を抱くようになった。
この記憶は俺の妄想なのではないか?
そう思うと恐怖だけが身体を蝕んだ。
俺の中で“あたし”だったころの自分が生きていた証拠は記憶にしかない。
真偽を確かめられず、恐怖に駆られるだけの俺にできたことは、もし、あの世界に行く術を見つけたときのために、“あたし”の記憶を大事にすることと、身体を鍛え、どんな状況にでも対応できるようにすることだけだった。
しかし、訪れることのない、異世界へ行く日の事を夢想することも、短くなり、大事にしていたはずの“あたし”の記憶も薄れ始めていた。
そして俺は十七年の歳月を過ごしたある日。
気づいたとき、俺は…海の上にいた。
♂♀
「どこだよ、ここ…」
独り言なんて言う性格でもないが、さすがにこんな状況では、自然と口から言葉が零れた。
塩の匂いが鼻につく。服が海水を吸って重くなっていた。
果たしてここはどこか?その疑問は解決している。ここは海だ。
みゃーみゃーと海猫がなく声が聞こえる。
体勢を変えると、少し離れたところに浜辺が見えた。
他に遊泳者がいないところを見ると、海水浴場では無いらしい。
はたまた遊泳禁止区域なのかもしれないが。
近くに船は通ってはいないが、海があるということは、近くに港もあるだろう。
「俺…コンビニに行く途中だったよな? 何故海に?」
人はあまりに突拍子も無いことに出会うと、取り乱すことなく、逆に冷静になるらしい。というか、驚き過ぎて、頭が追いついていない。
とにかく、いくら夏とはいえ、服を着たまま、海水浴なんて趣味はない。
浜辺が見えているのだから、そこまで泳ぐことにする。
五分程泳ぐと浜辺についた。
さすがに、服を着たまま泳ぐとなると、相当体力を削られる。肩で息をしながら、体にくっついた服を脱いで絞る。
ある程度絞り、水気の抜けたTシャツで、べたつく髪の毛を拭いてやる。
水気の抜いた服を、不快に思いながらも、もう一度身につける。
海水を吸っているため、渇いたときの悲劇が、目の裏にありありと浮かぶが、無視。考えるだけで憂鬱だった。
ため息をついて、改めて辺りを見回した。
辺りに人はいない。助けて貰える当ては当然ない。
「でも、ここ…」
見覚えがある?
まさかと、自嘲する。
ここまで閑散とした海なんて、生まれてから来た記憶はない。
じゃあ、生まれるまえは?
「………ッ!?」
頭を殴られたような衝撃が走る。
前世の“あたし”の記憶を思い出し、この景色と合致するものを探し出す。
はっとなり振り返る。
浜辺から少し離れたところに、ある森から外れたところに、大きな樹がある。
記憶が正しければ、この樹に…
その樹に近付き、グルリと一周して手を近づけ、見付けた。
樹の皮をナイフで削り、そこに、彫られた古い傷跡。
地球で見た記憶はない。しかし、地球で覚えた言葉のどれよりも深く、慣れ親しんだ言葉。その樹に刻まれた文字は…
『新暦1975、リラ・ヘルヴァーン参上』
前世での自分の名。その痕跡。
「なんで、これが…」
そして確信する。
雲一つない快晴だった青空のはずなのに、急に影がさした。
とっさに顔をあげた。
「……グランティナ」
眼を疑った。
空に巨大な城が、飛んでいる。
空中国家、聖国グランティナ。
あの城の名前であり、ここが地球ではないという裏付け。
疑惑は確信へ。
かつて、数多の友と地を駆け、最愛の夫と子供達に看取られ、後にした、前世の世界。
「――ディアナルト」
それが名前。
主人公の名前決まってないんですよね実は。
前世の名前もどしようか悩んだくらいですものこれ。
とりあえあず、主人公の性格は明るい子なので、ちょっとこれだけみると暗く見えますが。
とりあえずプロローグだけ、次回から少しずつ進展していきたいと思います。
目標・三話くらいで本筋に乗りたいです。