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第9話 夜会と対象者


軍の夜会。

佳入は軍服。

凉花は佳入の横に立ち、立河家が準備した着物に身を包み、作り上げた笑顔を貼り付けた。

佳入もいつもの無表情のまま、凉花を妻として紹介していた。

この場では、凉花の笑顔に文句はないらしい。


「立河隊長、お世話になっています」


多くの上官に(あい)(さつ)を終えた頃、軍服を着た数人の若者が二人の前に立っていた。

軍服をみると第一部隊所属だと分かる。

凉花は背筋を正した。


「そちらが、噂の奥さんですかぁ?」

「凉花と申します、いつも主人がお世話になっています」


二人は笑顔を浮かべ、元気に頭を下げてくれる。


「確か、軍病院で有名な、『死神先生』ってよばれてる人ですよね⁈それが、こんなにきれいな人だったとは」

「おい()()!それは隊長の奥さんに失礼だろ!」


奈須と呼ばれた一人が悪気なくそう言い、もう一人がそれをたしなめる。

凉花の笑みは(くず)れないが、自分の(ほほ)がわずかに引きつるのに気付いた。


「ここは夜会の場所だ。物言いには気をつけた方がお前の身のためだぞ、奈須」


佳入も奈須にそう言う。

しかし、奈須はへらへらと笑っている。


「いやぁ、僕は正直なのが()()なもんで」

「お前に(せん)(にゅう)(そう)()は向かないな」

「俺が隊長である間、絶対させないから問題はない」


男どもはそう言って笑っている。

佳入は凉花の腰をぐっと引き寄せた。


「凉花さん、紹介しておこう。分隊長を任せている、奈須と()寿()()だ」

「久寿里と申します」

「奈須でーす」

「主人がお世話になっています」


『奈須』

佳入がひきいる第一部隊に所属。

だが、分隊長までは情報がなかった。

暗殺対象者がこんなところにいるとは。


「まだ病院でお仕事をしているんですか?」

「ええ」

「では、我々が怪我したときにはお願いしますよ。『死神』としてではなくて!」


奈須が病院に来た際には、凉花が治療と(いつわ)って殺すことになる。

ヘラヘラ笑っている奈須を、にらむ代わりに凉花は笑みを向けた。

病院は調子が悪いときに行くところであって、それ以外で行く場所ではない。


「病院に来ないことを祈っています」

「はーい!」

「大丈夫ですよ、ご主人は我々がお支えしますから!」

「よろしくお願いします」


凉花は建前の笑みと建前のお()()をした。

手元にあるのは護身用の苦無だけ。

ここで暗殺するのは目立つ。

凉花は静かに殺意を(おさ)めた。

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