第7話 密会への誘い
「凉花さん」
「……佳入さん」
仕事を終えて、凉花が病院を出ようとすると、そこに佳入が立っていた。
「こんなところでどうしたんですか。立河家の屋敷になら、ちゃんと帰りますよ」
凉花が屋敷に帰るのは一週間ぶり。
数日後に軍関係の夜会があり、その準備のために帰宅することになっていた。
しかし、佳入に迎えに来いとは言ってないし、迎えに来なくても自分で帰るつもりだった。
「近くで仕事があったから、試しに寄ったんだが」
「あ、そうですか」
「夕飯は食べたか?」
「まだですけど……」
「奇遇だな、俺もだ」
そのあたりで買い食いでもと凉花は考えていた。
目の前の佳入に買い食いを誘うのは周囲の目を考えると難しい。
かといって、佳入とここで別れると不仲の噂にされそうだ。
「佳入さんはお屋敷でお食べになるのですか?」
「いや?」
てっきり佳入の夕食は屋敷で準備されているのだと思っていた。
凉花は帰宅の時間がわからないので、最初から夕食は不要と伝えている。
「外で一緒に食事はどうだろうか」
「……私と、ですか?」
「他に誰がいる?」
いくぞ、とでも言うように、佳入は背をむけて歩き出す。
断ると後々面倒だ。
凉花は渋々ついて行くことにした。