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第32話 夫婦ごっこ


時間はかかったが凉花の傷は治り、無事病院の仕事に復帰した。

前と違うのは、毎晩を立河家屋敷で過ごすようになったこと。

そして。


「……だから、なんでいるんですか」

「迎えに来てはいけないのか?」

「ちゃんと帰りますよ」


はぁ、と見せつけるようにため息をはく凉花に、気分を害す様子もなく隣に並ぶ佳入。


「夜道は危険だ。君は裏切り者だから、いつ襲われるとも限らない」


『忍者』として持っていた武器や薬物、道具は、全て(ぼっ)(しゅう)された。

回収にきた沙羅は、何かを言いたげだったが、口をきくなと言われているのだろう。

黙って回収していった。

今の凉花には、暗殺・襲撃されても抵抗するすべが少ない。


「別に隊長直々にこなくても」

「隊長だからじゃない。君の夫だから来ている」


凉花の考えとはうらはらに、佳入は夫婦ごっこをしたいらしい。

することもなくなったし、付き合ってやってもいいか。

今まで感じていなかった肩の重み。

重くはなかったはずの肩が軽くなった気がした。


「……付き合ってあげますよ」

「?何の話だ?」

「こちらの話です」


それが普通の生活というもので、あるならば。

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