32/33
第32話 夫婦ごっこ
時間はかかったが凉花の傷は治り、無事病院の仕事に復帰した。
前と違うのは、毎晩を立河家屋敷で過ごすようになったこと。
そして。
「……だから、なんでいるんですか」
「迎えに来てはいけないのか?」
「ちゃんと帰りますよ」
はぁ、と見せつけるようにため息をはく凉花に、気分を害す様子もなく隣に並ぶ佳入。
「夜道は危険だ。君は裏切り者だから、いつ襲われるとも限らない」
『忍者』として持っていた武器や薬物、道具は、全て没収された。
回収にきた沙羅は、何かを言いたげだったが、口をきくなと言われているのだろう。
黙って回収していった。
今の凉花には、暗殺・襲撃されても抵抗するすべが少ない。
「別に隊長直々にこなくても」
「隊長だからじゃない。君の夫だから来ている」
凉花の考えとはうらはらに、佳入は夫婦ごっこをしたいらしい。
することもなくなったし、付き合ってやってもいいか。
今まで感じていなかった肩の重み。
重くはなかったはずの肩が軽くなった気がした。
「……付き合ってあげますよ」
「?何の話だ?」
「こちらの話です」
それが普通の生活というもので、あるならば。




