表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

第3話 当主からの命令

内心はため息であふれていた。

早戸家は凉花の実家ではあったが、それは()(せき)上の関係。

その間に親子愛はなく、実家で過ごす必要もない。

病院で働き始めてからは一日のほとんどを病院で、夜のほとんどを病院の仮眠室で過ごしていた。

しかし、突然言われた当主である(よう)()からの帰宅の命。

凉花は病院を(はな)れるしかなかった。


「失礼します」

「凉花様。お久しぶりのお帰りで」


ガラガラと実家の玄関扉を開けると、奥から使用人の一人がやってくる。


「旦那様がお待ちです」

「はい」


使用人と共に当主の部屋に向かう。


「旦那様。凉花様がいらっしゃいました」

「入れ」


屋敷の奥の部屋。

早戸当主の声が扉の向こうから返ってくる。

使用人が開けてくれた扉をくぐると、背後で扉が閉まった。


「そこに」

「はい」


示された()()(とん)に座り、姿()(せい)を正す。

成長した今でも、当主と相対するときは、暗殺の瞬間と同じぐらい緊張する。


「凉花。()(ごろ)の活躍について報告をうけている。今年の暗殺数はお前が最多だ。早戸家としても(ほこ)らしい」

「ありがとうございます」


多く暗殺しても()められはしないが、少ないと怒られる。

いつものやりとりを笑顔でやり過ごしていると、大きなため息をつかれた。


「全く、お前のその笑顔だけはきれいだな。だが、安心しろ。わしらがお前に求めているのは(あい)(きょう)じゃない。その能力なんだからな」

(しょう)()しています」

「まぁ、立河家だと、少しは使い物になるかもしれん」

「…はい?」


凉花の思考と笑みが止まった。

突然入ってきた名前は、聞き間違いかもしれない。

それを察したのか、早戸当主はにやり、といじわるな笑みを浮かべた。


「立河家だ。あそこの息子は、軍学校でも見たことがあるだろう?その立河家から、(こん)(いん)()(しん)が来ている」

「私に、ですか?」

「ああ」


立河の息子である立河 佳入は今日の病院でみた噂の美男子。

無表情だが、その美貌で多くのご婦人を(とりこ)にしている。

軍学校の頃からそうだった。

軍学校で常に首席を保持していたため、凉花は一方的に(てき)(たい)()していた。

彼のせいで凉花は首席をとれず、何度この当主に小言を言われたか。


「断る理由はない。これは早戸家と『忍者』が(そん)(ぞく)のために必要な婚姻。今週末に(ゆい)(のう)(しゅく)(げん)だ」

「…………はい?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ