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第26話 佳入の選択


木々のざわめきに耳を(かたむ)け、その合間に(はさ)まる異音に耳をすませる。

ざくざくと土を踏みしめる音が二つ。


「こんなところがあったのか」

「はい」


食事を共にしたあと、凉花は佳入を特別な場所に案内していた。


「ここは我々『忍者』が演習や訓練で使う森です」

「早戸家が持つ土地か?」

「そうなりますね」


孤児院で過ごしたときの記憶よりも、この森で過ごした記憶の方が多い。

長らく離れていても体は覚えているもので、迷うことなく進んでいける。

隣を歩く佳入は表情を変えないものの、警戒しているのを感じた。


「野生動物はいないのか?」

「訓練に利用しています」


動物たちは『忍者』の強さを本能で感じ取るため、こちらを襲ってくることはあまりない。

どちらかというと、動物に気付かれないように、殺気を消して身を(ひそ)める訓練に使っていた。


「こちらですね」


凉花が佳入を案内したのは森の中心近くにある木の生えていない広場。

一部には標的が置かれていて、弓矢や手裏剣など、飛び道具の訓練もできるようになっている。

その中心まで歩いた凉花はくるりと振り返り、佳入と向き合った。


「佳入さん」

「どうした」

「一つお伝えしないといけないことがあります」


凉花は懐から手裏剣を一枚取り出す。


「今回、正式に命がおりました」


ちらり、と凉花の視線が佳入の腰にある(わき)()しを確認する。


「佳入さん、私は、あなたを暗殺しなければならないようです」

「……」

「やはり、察していましたか」


表情が変わることなく受け止める佳入をみて、凉花は息を吐く。


「なので、ここで死んでいただきます」


凉花は目線を佳入に向けたまま、手裏剣を一方向に飛ばした。

佳入はそれを目で追った後、目を見開いて脇差しを(いきお)いよく抜いた。

抜ききる頃には、凉花があらかじめ仕掛けた手裏剣が佳入に襲いかかっていた。

用意した手裏剣は刀で全てはじき返される。

凉花は微笑んだ。


「さすが隊長」

「……警戒心なく、勝負でもなく、日常生活で殺されるとすれば、君には勝てなかっただろう。だが、面と向かってなら、俺のほうが強い」

「言ってくれますね」


一枚でも当たってくれれば、と思って仕掛けた手裏剣は全て空振りに終わったらしい。

凉花はきれいな微笑みでそれを確認する。

予想通りだ。

両手に苦無を静かに(かま)えた。


「それはどうでしょう、試してみませんか」

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