表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/33

第23話 悪夢

赤い液体が、白い布団に広がる。

手には血が(したた)(はく)(ぎん)の刀。

目の前には(ふか)()を負った佳入が横たわっていた。


「はぁ…はぁ……」


息をしているのは凉花だけ。

荒い息が止まらない。

佳入は絶望の表情で固まっていた。

息はしていない。

なんとあっけなかっただろうか。

寝込みを襲っただけだけで、抵抗を受けずに殺せるとは。


『信じていたのに……』


呟いた佳入の消え入る声が耳の中で(はん)(きょう)している。

信じるものなんて凉花には最初からなかっただけだ。


ふらふらとおぼつかない足取りで寝室から出ると、(きょう)(がく)した立河の義母と(はち)合わせした。


「死神!」

「夫も呪い殺したか!」

「夫殺しの(あく)(よめ)!」


その声はどんどん拡大して、群衆の声に変わっていく。

立っていたのは屋敷の縁側ではなく、群衆の前。

群衆の目は凉花をにらんでいた。

そりゃそうだ。

新婚夫婦を襲った悲劇。

死神と名高い凉花のせいにされないはずがない。

凉花は罪を認めるように静かに目を閉じた。

そんな凉花の腕をつかむ冷たい手。

佳入じゃないかと期待して振り返ると、目の前には早戸家の当主。


「お前は早戸家に戻るんだ。早戸家でしか、お前は生きられない。私が有効活用してやろう。そこに幸せがある」



 * * *



「っ……‼」


勢いで目を開ける。

体中は汗がにじんでいて、夢だったのだと思い当たる。

手を見ても血はついていない。

誰も殺していない。


「…大丈夫か?」

「か、佳入……さん……」


ごろり、と寝返りをすると、夢の中で殺したはずの男がこちらを心配そうにのぞき込んでいた。

殺したはずでは、という自分の思考を、それは夢だ、と冷静な自分が押さえ込む。


「うなされていたぞ。悪い夢でもみたのか」

「ええ……まぁ……」


まさかあなたを殺していました、とはいえず、凉花は言いよどむ。

昨夜は佳入に誘われて食事を共にし、久しぶりに立河の屋敷に戻ってきた。

暗殺するためには相手のことを知り、弱みにつけ込んだほうが早い。

そう思って付き合ったのだが。


「少し……風にあたってきます」


胸元を直し、寝室から外にでた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ