第22話 実家帰り
「失礼します」
「久しいな、凉花」
病院での仕事の後、凉花は早戸家本家に呼ばれていた。
端から見れば実家帰りだが、凉花にしてみれば暗殺の相談だと分かった。
緊張した面持ちで養父である早戸家当主と顔を合わせる。
「ご無沙汰しています」
「立河家でもうまくやっているようだな」
結婚してから早数ヶ月。
凉花はまだ立河の屋敷に帰ることを許されていたし、時々佳入と食事をした。
「暗殺も滞りない。で、今日は一つ確認があり呼んだ」
義父の瞳に怪しげな光が見え、凉花は思わず身構えた。
「立河の息子に『忍者』を見られたと報告があったが、本当か?」
「本当です」
先日の街中で暗殺したときの話だろう。
「なぜ報告しなかった?」
「対象者は佳入さんといるときに襲ってきました。二人で対応をしました。暗殺者対象であったことから、死体回収をこちらに依頼しました。その際には、姿をみないように目を塞ぎました」
「ふむ……」
対応は間違っていないはずだ。
「『忍者の奥義』をみたものは全員排除が掟だ。例外はない」
「彼も武器を構えていました。『奥義』は見えていないかと」
「それが問題だ」
義父の長い人差し指が凉花を突き刺した。
一瞬なのに肝が冷える。
もし指がよく研がれた苦無だったら、凉花はもう息をしていなかっただろう。
「見えない動き。予測不明の暗殺技。その存在が知られることが問題だと言っている。それに、曲がりなりにもあやつは隊長の地位にのし上がった男。容易に対策をとられる可能性がある」
凉花はふと、彼の身のさばき方を思い出した。
隙のない身のこなし。
一瞬だったのに、凉花の動きを分析していた。
「確かに……」
「お前は考えが甘い。立河で骨抜きにされたか?お前をそのように育てた覚えはないが?」
言い返せなかった。
言い返したときの得もない。
凉花は黙りこんでやり過ごす選択肢をとった。
「それに、最近軍の関係者が『忍者』についてこそこそ嗅ぎ回っているという情報もある。お前との婚姻を受け入れたのはその思惑かもしれんな……いずれにしろ警戒するに越したことはない」
義父は、静かに一枚の紙を凉花に差し出された。
「正式命令だ。立河 佳入を暗殺対象とする。手段は問わない」
「わかりました」




