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第18話 いにしえの恋心

一人の寝室。

二つの布団。

就寝の準備を終えた佳入はむなしさを抱きながら、凉花の布団をみやる。


「……救えなかった、か」


気がつけばそう呟いていた。

初めて正面から受けた彼女の殺気。

作り笑いのときよりも冷たい瞳。

一瞬で過ぎ去ったものの、今まで彼女のことを何一つ知らなかったのだと思い知らされた。

殺されたあの男と奈須の姿が重なる。


「二人も……殺させてしまった」


立河家の人間になったはずなのに国のためという名分のもと、彼女にはまだ人殺しをさせている。

二度も、目の前で。

止めようと思えば、止められるはずだった。

自然に。誰も気付かれないように。

ちらつくのは「暗殺のほうが合っている」と言った彼女の作り笑顔。

あの言葉を凉花に言わせてしまったのは自分だ。


それに佳入が(てい)(さい)のために言ってしまった言葉。

――「俺は君の暗殺を邪魔するつもりはない」


「何をやってるんだ、俺は……」


最初は手に届くだけで十分だと思っていた。

しかし、自分の視界に入れば、自分も彼女の視界に入りたくなった。

作り笑いはやめてほしいと思った。

同じ時間を過ごしたいと思った。

汚れ仕事はせず、彼女らしく生きてほしいと思った。

凉花の希望を叶えたいと思っているのに、気がつけば、自分の理想を押しつけようとしていた。

昔抱いた恋心は隠し通すと決めたはずなのに。

明日も会いたいと、思ってしまっている。


「あの男……」


凉花が殺したあの男のことを佳入は知っている。

今日伝え損ねた本命の用件と合わせて伝えよう。

情報は多い方が良い。

そう自分を納得させるしかなかった。

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