表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/33

第11話 二人の分隊長


外でけが人が増えたと報告をうけて、凉花は処置室へと急いだ。

街中で(ぼう)(どう)がおきた、という噂は聞いていたが、思った以上に病院全体が(さわ)がしい。

処置室に飛び込むと、対応できていないけが人が多くいた。


「凉花先生!凉花先生はこちらの二人を……!」


近くにいる他の医者からそう言われて向かった先に、見知った姿があった。


「……久寿里さん、奈須さん……」

「ああ、奥様……」


第一部隊の分隊長二人が、息も()()えに凉花を見上げていた。



 * * *



日中の(けん)(そう)が去った夜。

病院で仕事をしていると医師室の扉が叩かれた。

現れたのは佳入。

他の誰もいないのをいいことに、凉花は眉に深い皺を(きざ)んだ。


「なんでこんなところにいるんですか。もう面会時間は終わりましたよ」


ここは病院のはずだ。


「妻に会いに来たといったら、通してもらえたぞ」

「ええ……」


なんてガバガバな(けい)()だ。

だが、こいつならその美貌や声色、地位を使ってでも目的のために人をだますと思っている。

一方、医師室に入ってきた佳入は凉花の机を見て、目を見開いた。


「…君は、いつもこんな物を食べているのか」


彼の細い指がつかんだのは、凉花が夕食代わりに食べていた携帯食料。

賞味期限が(せま)っている携帯食料は安くもらえるので、(ちょう)(ほう)していた。


「あなたにとやかく言われる(すじ)()いはありませんが?」

「俺は君の夫だろう」


だからなんだ、と凉花が怪訝な顔をするのと、佳入の眉が寄ったのはほぼ同時。


「こんなことなら、今度屋敷の食事を持ち込んでやろう。君が()()されたら、立河家の評判が下がる」

「いえ結構です。早戸家の評判は下がってなかったので」

「冗談を言うな」


確かに、凉花は早戸家の評判など気にしていなかった。

本当は評判が悪かったのかもしれないが、これはこれ、それはそれだ。


「今回はうちの分隊長二人が世話になる」

「いえ。仕方のないことです」


空いている椅子に座った佳入はふぅと息を吐いた。


「佳入さんはお怪我はなかったのですか」

「あの二人のおかげで助かった」

「そうですか」


分隊長は二人とも傷は重く、入院して治療することになった。

どちらも持ち直してはいる。

だが、命がもつかどうかは、別の問題だ。


「どうするつもりだ?」

「私は私の仕事を(しゅく)(しゅく)とします」

「そうか……」


何かを考えたあと、佳入はぐっと顔を寄せてきた。

突然の行動に、凉花は反射的に体をのけぞる。

至近距離で見ると佳入の美貌は明らかで、どきり、と心臓が鳴る。


「君は……」


佳入の()(いき)が鼻にかかる。

その声は(きょく)(げん)まで小声で、周りに聞こえないように気をつかってくれたらしい。


「君は…病院で人を救う仕事と人を殺す暗殺の仕事と、どっちが好きなんだ?」


彼の美貌のせいなのか、質問のせいなのか、その近距離のせいなのか。

凉花の心臓がまた大きく(どう)(よう)する。


「どちらが自分に合っていると思っている?」


すぐに答えられないのはなぜだろう。

仕事が自分に合っているかどうかなんて、考えたことはない。

早戸家に引き取られてから、目の前に与えられることをこなすだけで生きてきた。

今も、目の前に現れる人に定められた対応をしている。

それだけなのに。

この質問は凉花の気分を悪くした。

ならば。


「暗殺、じゃないですか?」


きれいな作り笑顔を見せると、目の前の美貌が固まった気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ